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藤宮くん視点。



  『来月じゃなくて来週やるよ!うらら再生計画!返事はハイかイエスのみ!人格矯正3日間!』




 名刺に載せてた仕事用のスマホに届いたメッセージ。



 …名刺は貰ってないから番号は登録してない…けれど、多分ミモザの綾瀬さんだ。



 たまにうちの店舗…雪柳にも顔を出して田中副店長とものすごく下らない話をしている。

 

 『どうでもいいけど…なんで最近の深夜アニメは露天風呂とかやたら逆光なの?』


 

 本当に心の底からどうでもいい話だ。



 それをきゃっきゃと話しながら内装工事の手配をして、そのテンションのまま、うちの店にポールが3本も出来たのはあの2人のせいだ。


 …うちのキャストも何人かポールダンスが出来るようになって話題になったけど。

 ついでに言えばショーはライトがまぶし過ぎてお客様から苦情が出た。



 あの2人が何か考えるとロクなことを思いつかない、と思っていた、が。

 綾瀬さん1人でも手に余るなこれは。



 まわりの苦労が忍ばれる、が彼女はファーストペンギンなんだろう。

 

 『誰もやりたがらないなら、じゃあ私が滅茶苦茶にヤってもいいよね?』…と言わんばかりだ。


 僕らよりも年下で、女の子で、誰よりも努力していて、先に飛び込まれたら後を追うしかないじゃないか。



 そしてその追いかけてくる仲間に対して彼女はキラキラとした目で喜ぶ。


 着いてきてるのか、毎回振り返っている。

 暴走しているようでちゃんと周りが見えていて、ダメなやつは見捨てて置いて行くなんてことはしないように思う。



 これまで特に話したこともなかったけれど、綾瀬さんの仲間として内側に入れてもらっていたのが昨日分かった。


 バイトのランクとしては同じマネージャーだし、売上日報なんか見てると負けたくないなと思うライバルではあるが、このビルでは大先輩だ。

 きっちりバイトとして仕事して給料明細化されたのは最近だけど、うちの副店長よりも社歴は長い。


 綾瀬さんが姉で副店長が弟みたいなもんだ。

 綾瀬さんが、ではなく副店長が、綾瀬さんに懐いている。



 多分あの女の子がもっと小さい頃から、あの子の心に守られてここまで来た大人の男たちは少なくない。

 そして彼女の優しさを糧に、様々なトラブルを乗り越え結束してきたのだろう。


 

 情けないなと思いつつ羨ましいなと、ずっと、ずっと見ていた。


 戦友みたいな友達や同僚、この時代のどこで獲得できるんだと。



 それが知らない間に(多分観察されてて)信用されて、気づいたらもう一緒に強制イベントで仲間扱い。

 ちょっと涙が滲みそうになるくらい嬉しかった。


 ついでに手をとって笑った綾瀬さんはすごくまぶしかった。これは苦情じゃない。



 事情を話せば副店長も仕方ないと笑ってくれるだろうし、3日間雪柳を抜けてもお釣りが来るだろう。

 折角だからもう1人、このイベントに誘ってみるか。


 きっとうちの店にもいい風が吹き込むだろう。


 

 『この連絡先は綾瀬さんでしょうか?再生計画受け賜りました。雪柳からもう1人、推薦したいスタッフが居るので打ち合わせに連れていきます。早めに出勤しますがご都合のよいお時間をお知らせいただければ幸いです。 藤宮』



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