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 04:05

 スマホがテーブルの上で鳴り、キッチンで朝ごはんのスープをひと煮立ちさせていた火を止める。



 昨日ミモザは定休日だったから今朝は出勤しないと佐久間さんにもお迎えはいらないって伝えてあるし、もちろん稲葉くんにも伝えてあったんだけど表示されている文字はいつもの名前。



 「心配性だなぁ…さすがにタクシー呼んでまで出勤しないよっと…送信っ」



 まぁ何だかんだでいつもの時間に起きちゃうぶん、たっぷり自分の時間がある朝は贅沢だ。

 冷蔵庫の中に何か作りおきするのもいいし、軽く掃除しながらBGMにリスニング教材を流すこともできる。



 早起きは3文の徳とか言うらしいけれど、今の物価だと1ドルくらいらしい。

 その程度の徳じゃあ起きる気がしないので最低10ドルの価値がある朝を過ごさないと清々しくない。



 学校に行くまでの3時間、目標額30ドルの価値を生み出す。

 それは別に自分の力だけじゃなくてもいい。


 カッ!と目を見開いてスマホでささっと追加メッセージを送る。



 『稲葉少年の短パン美脚時代が見たいです』



 早朝から煩悩フルスロットルだけど、記憶のどこに保存されていたのか昨日見た夢は堰を切ったかのように映像が流れてきた。

 派手な羽織の中は短パンだったような気がするので是非記憶とすり合わせしたいし画像は永久保存したい。


 

 正直、覚えてなくて当たり前じゃない?というくらいあの頃の稲葉くんとは接触していないし言葉を交わしたのも数回程度だった。

 だって座敷わらしさまと何話せばいいの?今でもそんなのと遭遇したら困る。お好みの間取りとか聞けばいいの?


 スマホが返信を知らせてくれる。



 「おぉぉぉぉ…!コレジャナイけど!!コレなら300ドル出す…!」


 

 卒業アルバムと思しき写真が添付されていて、運動会でバトンを持って走っている姿。


 手が震える…!!!


 これはほんとに少年…ただの美少年!!性別を超越してるんじゃなくてただただ犯罪に巻き込まれそうな美少年…! 

 小学校の高学年だろうか、これはもうセキュリティの甘い公立に通ってたらアウトなやつだ!

 


 『いやもうこれもありがたく貰うっていうかアルバムを是非コピーさせてほしいけどこれじゃなくてボブだった頃の見せて~』



 メッセージを送ってすぐ折り返しの電話が掛かってきた。



 「おはよー、そのアルバムには無さそう?」


 『おはよ、俺からの写真リクエストもシカトしないでぐれる?――ッてか』



 ぷつ。



 あ、通話終了ボタン押しちゃった。



 さすがにあの美少年のあとに数段レベルの落ちる画像を添付する勇気はない。


 即時撤退、タッチアンドゴー。

 一瞬の判断の遅れが大怪我のもとになる。

 危機管理能力を育て伸ばすのも大切だけれど、研ぎ澄ました野生の勘に勝るものもない。



 ブーブーとクレームのように鳴る着信音を無視して各部屋のゴミ箱からゴミを集めてまとめていく。

 燃えるゴミの日だと部屋が一番スッキリするからこれはこれで1ドルくらいの価値はあると思うのよねー。



 指定の場所に捨てて家に戻ればクレーム音からポコポコという可愛らしい音に変わっていた。


 この数分でメッセージ数は軽く30超え。

 これはこれで見るのが怖い。

 早起きは30ドルの損になりそう。



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