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 「まずは小玉スイカをね、今日発注しようと思うの」



 「何をまた唐突に」




 お昼も食べ終わってティータイム。

 テラスに吹き抜ける風が気持ちいい。


 陸と海はプリンとパック牛乳を買ってみなみちゃんに買って帰った。

 なんだかんだであの3人には幼馴染以上の絆を感じる。


 私もこんな弟たち欲しかったなーとか言ったらカイは拗ねるんだろう。




 「いや、明日ちっちゃいフル盛り作ろうと思ってね?」


 朝に送信予約で送った、今はもう送信済みのメール文を見せる。


 「『あやちゃんの幻のフルモリ☆水曜限定3!水曜12時までに要予約』」



 「ありがたいことにもう予約したいってお返事が入ったんだよね~」



 …担当全員から。


 おおう、全員明日出勤でお客呼ぶってことですか。

 しかも私が居る時間ってことは開店と同時くらいの来店…全員この短時間で同伴決めてきたってナニソレ誘われたお客様だって仕事中だったんじゃないの…?


 ああ色々お姉さまたちがご迷惑をお掛けした気がしてならない…



 稲葉くんもちょっと引いてる。



 「だからね、5つ作ろうと思うと明日キッチンから出られなくなっちゃうでしょ?」


 たぶん、あーん給仕も求められてるんだよこれ。

 返信の文面が担当が私でよかったー!ってハァハァしてる。



 「接客全くできないのもアレだから予定通り3つだけ作って、あとの2人にはちょっと別の特典付ける」


 「うん、でこの季節に小玉スイカ発注ってことは…中身くりぬくってことだよね?それ俺にやれって?」



 「あ、出来ればしてくれるとありがたい!出勤前に!」


 「うん?」



 「…器にカービングしたいなぁ、と思いついてしまって…」


 「うん?」


 笑顔が怖いよ稲葉くん!!!


 「学校に届くよう手配するから昼休みと出勤前の放課後、一緒に彫りません?」


 「…あやちゃんのフルモリ、じゃなかったっけ?」



 うわーん!中身は全部私が店で切って盛って飾るもん!嘘じゃないもん!それに”幻”って言ってるもん!!色んな意味で幻でいいじゃない!!



 それに折角お姉さんたちが頑張ってくれたんだから感謝を形にしたい。

 でも1個なら何とかなるけど3個となると手が足りない。


 

 ダメかな?

 ちらりと様子を窺う。



 「はー…、何で自分からどんどん忙しくなるようなことするかな…」



 ううう…

 ご迷惑をお掛けして大変申し訳ございません…

 反省は毎回しているんだけど何でかこんなことに毎回なっています…



 「まぁ委員長と俺とで1個ずつするにしても、あと1個は」



 「私を委員長に指名した諸悪の根源に1個させる」 

 



***




 「と、言うことで先生、明日の昼と放課後は一緒にカービング大会です。明日、先生の名前で宅配が職員室に届くので覚悟しやがれ?」



 教室に戻る前に、職員室で次の授業の準備をしている担任の先生へと話しかける。

 名前も呼ばず話しかけたもんだからびくっと反応され眉間にシワを作られた。


 

 「急になにが『と、言うことで』なんだ、やっかいごとなら他を当たれ」


 一番のやっかいごとを押し付けてきたお前が言うな!と私と稲葉くんが睨む。



 「じゃあうちのビル出禁「綾瀬さんに頼まれて断ることなんて何一つないですよ!」」


 

 さすが腐った教師、いい笑顔だ。

 こんな大人になりたくない、という見事な見本である。



 担任の竹田先生とは入学式前からの顔見知りだったのもあり、新学期、1番前に座ってたのが私で好都合だったんだろう。


 この先生のおかげで委員長という肩書きが増えた。


 

 先生はパっと見、どこにでもいる中肉中背のサラリーマンで、校内に居る姿はどこを切り取ってもそこそこ親身な生徒思いの先生なのに、店では、酒とタバコと女の親和性の良さというものをしっかり教えてくれた。



 そんな先生に私から言えるのは…


 校内で右も左も分からない女の子を誑かさない限り、先生は一生独身だと思う。



 ついでに言うと、校長もたまに一緒に来る。

 

 生徒を我が子のように慈しみ、教え、諭すと言うが…どこに導いてくれる気なんだと全校朝礼の時に思わないでもない。


 

 先生のパソコンでカービングのページを開いて、今夜はりんごで彫刻の練習をするよう伝える。



 「ああん?彫刻刀だぁ?美術室行ってパクれ!」


 やだ、稲葉くんご乱心っ。



 あれだよね、人間って相手の弱味握ると強く出れるよね。

 私も稲葉くんも担任への当たりが強くなった気がするよ。



 あ、稲葉くんには店にある使いやすいカービング専用ナイフ貸し出すから安心してね♪



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