14
4限が終わって昼休み。
今日はお弁当も何も買ってないので学食へ。
日替わりランチが2種類あるからどっちか選べるといいんだけど。
「みなみちゃーん、今日学食行くけどどうする?」
「んー、パン買って来ちゃってるし教室で食べてちょっと寝る~」
「りょーかーい、じゃあ行って来る~」
暖かい陽射しの中、のほほんと教室を後にする。
うん、1人ならどこか席空いてるだろうしすぐ食べられるな、と思っていたら後ろから声を掛けられた。
「委員長、学食行くなら俺らもついてくよー。ラーメン食べたいラーメン」
「りっくんもカイも来るの?みなみちゃんですらついてこないのに!」
「えー女の子ってご飯もトイレも一緒なのがいいんでしょー?」
「すっごい偏見だね!」
私とみなみちゃんに至ってはそんなお約束は何もない。
冗談でもマラソン大会で「一緒に走ろうね!」なんて言った日には、手錠を用意して早い方のペースに合わせざるを得ないという限界への挑戦をする羽目になった。
この双子の陸と海もみなみちゃんとの付き合いは長いだろうし色んな体験をしているだろうに…
「一緒に食べるなら先行って席取ってきてよ、ついでにハイ、どっちでもいいから日替わりね」
カイに500円玉を渡す。
「あ、じゃあ俺も」
ちゃりんとカイの手にもう500円。
「稲葉くん」
おぉ…!稲葉くんともランチできそうな感じですか…!ラッキー!
「どっどうせ俺はパシリ体質ーーーーーー!!!!」
悲痛な叫び声を上げ、廊下を駆け抜けるカイ。
「あーあ、じゃあ俺も追っかけるね」
「ごめんね、りっくんーよろしくねー」
・・・
学食まで稲葉くんとまったりお散歩デートっ。
しなきゃいけない話は腐るほどあるんだけど、折角ならふつーの高校生っぽい感じで居たい。
でもバイトや勉強のこと省いたら共通の会話って何もないんだよねぇ…
世の中の男女はどうやって親睦を深めているのか教えてくれる先生はいませんかー!
「あ、そだ今週の金・土・日は朝も夜もバイト休むことにした」
「猫の手も借りたい週末に?」
「まぁミモザはどうにかなるから大丈夫でしょ」
水曜・木曜の谷間の売上フォローだけは抜かりなくして、今週末は翌週に備えたい。休みたい。
「でね、由宇兄ちゃんからさっきメール着てた、コレ」
『今日行く!』
「…その下の委員長の返信…『今日も明日も忙しいから明後日の木曜にして!』って…」
うん、ほんと私何様かな。
でもフル盛り作らなきゃいけないし、うらら関連もあるし、最短木曜がベストでしょう。
「と、いうことでですね、保護者向けはともかく、由宇兄ちゃん向けの企画書は木曜夜までに…お願いします…」
語尾が弱くなり目も合わせられない…けど稲葉くんなら仕上げてくれるって信じてる…!
「じゃあ委員長、急いで作るからご褒美くれない?」
「ん?私に用意できるものならいいけど?」
「おっじゃあ頑張るわ。ほんとは土曜なんだけど土曜は受験対策あるからなー、日曜のお昼ごろ俺にちょっと時間ちょーだい?」
「いいけど…」
ん?デート?ってわけではないの、かな?何だろ…
「委員長たち遅ーい!」
「ラーメン伸びたねコレ」
ただでさえ混みあっている学食で、どうやって人気のテラス席を陣取ることが出来たんだろう。
この双子もたまに不思議なことやってくれるよなぁ。
「ごめんごめん、ふたりともありがとね」
しかもちゃんと2種類の日替わり用意しているなんて気が利く。
「委員長どっちの日替わり食べる?」
さらにジェントルメンが居る。きゅん。
「和風ハンバーグのほう貰っていいかな?」
「おっけーおっけー、じゃあこっち座って」
椅子まで引いてくれますか。モテ要素どんだけ溢れ出させてるんですか。
「委員長が女王様に見える…」
カイはとりあえずチョップで制裁だっ!