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 「お泊まりねぇ…」


 いつも大体のものが揃えられいるので手ぶらで行っているけれど、何かしら手土産くらいは用意したい。


 いいもの何でも揃ってそうだし、買うって選択肢はすぐ外れてしまう。



 「そうなると手作り一択よねぇ…」



 ポポポとあのレシピ使っていいかメッセージを打つ。

 このバイトのいいところは多少なら私用でスマホ触っていてもバレないどころかさして怒られもしないところか。



 昨日の忙しさが嘘のように店は通常通りの平日営業だ。

 

 ようするにフロントは暇で死にそうなのである。 



 担当のキャストたちも佐保さんは金曜日だけは出勤してくれるようだけど、あとの4人は今週1日たりとも出ないと言っている。


 うん、旅行に行くのもいいし家でゆっくり休むのでもいいし、昼のお仕事を頑張ってくれてもいい。

 また来週も宜しくお願いしますとメッセージを送って、この4日間はこちらから連絡しないことにした。



 動く気配のないエレベーターを見て、インカム無線を飛ばす。



 『フロント少し空けます、どなたかフォローお願いします』


 『りょうかーい、松本入ります』


 

 松本くんが来るのを待って、キャッシャーに居るまゆちゃんの元へ。



 「ねーねーまゆちゃん、明日は佐保さん来るから入るけど土日休んでいい?」


 「あ?先週も金土日休んでなかった?」


 「え、今週も金から休んでいいって?」

 

 「言ってねぇ、つかあやんとこの他のキャスト来ないの?」

 


 あー、そうだまだそれ報告してなかったね。

 今週末全員休むことを伝え、ついでに中間テストがもうすぐ始まることと、金曜の夜からみなみちゃん家に泊まって土曜の受験対策講習を昼からフルで受けたあと、またみなみちゃん家に戻って、みなみちゃん家で雇ってるカテキョの方におこぼれで指導してもらう話をした。


 私、高校生なんで!という態度を強く押し出していく。

 


 中間テスト自体は2週間後。

 来週からは職員室もうっかり入れない、ということはアホな担任や校長に呼び出されることもない平穏な日々が約束されている。


 ただただ勉強だけしてればいいという天国。



 「じゃあ来週あやと稲葉はどこ出勤させるか…『稲葉、お前もキャッシャー来い』」


 『畏まりました』


 

 足音を消したまま稲葉くんが足早にキャッシャーへとやってくる。



 「明日は出勤確定として、来週も金土の2日だけ出てくれれば再来週も全休みでいいよ」


 「え!まゆちゃん大盤振る舞い!」


 

 稲葉くんは何の話か掴めていないようなので、テスト対策に休日をもぎ取れたことを伝える。



 「どっちかっていうと帳尻合わせだけどな。見たんだろ?3日間のビルの売上」


 「あー、儲かり過ぎちゃったねぇ…苦情はヘンな空気作ったジョーさんに言ってよ」



 ミモザですら今月の目標金額達成どころか来月分の貯金も出来たくらいだ。

 来年度組まれる目標金額が今から恐ろしい。



 「あいつが客に戻ったままでいてくれたらいいんだけどなぁ」


 「岬さんが戻る気ないなら無理でしょ」


 「諦めきれないけどな…。昨日のフリージア、ウチからもボトルかっ攫っていったぞ」

 


 でしょうね!

 今夜は早めにミモザ上がってボトルが転がりまくってるフリージアにお邪魔しないと!

 まさか長岡さんたちが自宅じゃなくフロアで潰れて寝てるとは思わなかった。


 さっき寸胴鍋に作った味噌汁は飲みきってくれただろうか…。

 ああ、散らかったボトルやグラスの片付けくらいはして帰りたい…。


 

 じゃあシフトの件よろしく~とキャッシャーから離れて仕事に戻る。



 「稲葉くんも、テスト頑張ってね!って私より順位いい人に向かって言うことじゃないか」


 「いいえ?応援されるのは嬉しいですよ、私も綾瀬マネがベストを尽くせるよう応援致しております」



 何故かどこかの騎士さまのように片膝を付いて恭しく応援されてしまった。

 うーん、スーツ姿だけじゃなく白い手袋も欲しいかもしれない。

 惜しい!けどカッコいい!ちょっとおどけた上目遣いが可愛い!



 「あはは!じゃあ私も追いつけるように頑張るね!」



 明日の金曜は少しだけ働いたら、学業に本腰入れましょう!



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