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みなみちゃん視点。



 あーや、綾瀬ひかりと話すようになったのは高校1年の2学期も過ぎた頃だった。


 席替えをし、移動教室の班が一緒になったからっていう単純なもの。


 パっと見、うちのクラス委員は華があって他のクラスの子からも羨ましがられるけれど、根っこはあーやも稲葉も真面目で、堅実であることを第一にして生きてる感じ。

 

 クラスには滅多に来ない変人企業家もいるし、タレント活動しているようなクラスメイトもいるのに特進科と言えば「綾瀬と稲葉」なのだ。



 ふたりのおかげでこのクラスは余計なプレッシャーや嫉妬から守られている。 



 それに看板を背負わなくていいっていうのはありがたい。

 

 うちの父親がそこそこ名の知れた会社を経営しているせいで、無駄に目立ってきた。



 入学式後に宝みなみです、と自己紹介すれば「あっ、宝グループの…」と気づくような同級生がちらほらいる。

 きっと取引先のパーティか何かですれ違ったことでも思い出しちゃったんだろう。


 記憶にひっかからない、華のない地味な令嬢で悪かったな、と腹の奥底で悪態をつくのは日常茶飯事だ。

 

 だから班が一緒になった一番初めに、あーやから「えっと、何て呼ぼっか?」と微笑まれたときには聡い子だなと好感をもった。

 


 どや!と言わんばかりの看板名で呼ばれるのが好きではないし、あーやもどうやら下の名前は嫌らしい。



 あーやにも色々あるんだろう。


 たまにふたりの息抜きのために昼休み大暴れする。



 特進科の体育は週1しかない上に、学科が1クラスのみなので男女混合体育。

 学科の特性上、勉強は得意でも運動は苦手な子が多い。


 よってゆるーい運動のみ。


 健全な魂は健康な肉体に…とは言わないけど、健康な高校生的には不完全燃焼極まりない。


 


 だから幼馴染の双子も誘って昼休みは全力で遊ぶ。


 小学生か!っていうくらい汗をかくような本気を凝縮したプレイで、最近は体育館でバスケばっかりしてる。

 人数合わせに部活してる普通科の子も誘って3on3で走りっぱなし。


 とうとうあーやが稲葉のディフェンスをかいくぐり、フェイダウェイをモノにした瞬間の感動は忘れられない。


 ふたりとも全開の笑顔だった。



 悪気はないんだろうけど「特進にしておくには勿体無い」と、科を蔑んだような褒め言葉になってない言葉を私たち5人は笑顔で受け取りお開きとなった。

 

 折角のストレス解消に水を差された。

 …暫らくバスケすることはないかも。




 似たような言葉を私たちはそれぞれ受け取り続けている。


 私なら「女にしておくには勿体無い」とかね。


 年の離れた弟が出来るまで、後継者として期待され続け、会社のために英才教育のようなものを受け続けてきた。


 今でも何か課題をクリアしたり結果を出すたび、正面から褒められないことに苛立ちは募り、もやもやが残る。



 もう婿を取らなくても良くなって、

 会社に関らない人生を選べるようになって、


 …あれ?

 系列会社や取引先避けたら就職の幅狭くなってない!?


 って気づいてから慌てて自分のために勉強をするようになって、自分のために楽しみを探すようになって、やっと会社の利益を考えることなく自分のために好きな友人をみつけるようになった。


 

 委員長っていう肩書きで、別に避けていたわけじゃあないけど、わざわざ関らなくてもいいかと思っていた過去の自分を殴りたい。


 私もまだまだ看板に振り回されていたことに気づいた。



 本当にあーやも稲葉も味があって面白い。

 近くで見ていないとわからない面白さだ。


 

 「もっと面白くするために委員長にちょっかいかけよっか?」とか言い出す双子の弟に蹴りを出す。


 「カイ…そんなことしたら婿養子にして一生こき使ってやるからね」



 元々会社のために寄越された友人もどきが本当の友人になったのも、あーやと稲葉のおかげ。



 ふたりを見ていると、ほくほくと心があったかい。

 

 早く昼休みにならないかな。

 


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