ゴシックとロリータとジャージ
寝間着は着てはいるが全く感じさせないモノに限る。そう、究極にして至高は裸族……と、とある巨乳が言っていた
このまま引きずられたままだと顔面がR指定になるので、2人を呼び止めて起き上がった。
「ぬいぐるみさんと間違えた」
「ぬいぐるみさんと違うんだった」
ボロボロの顔と服に申し訳なさそうに、ごめんなさいと謝られた。礼儀がしっかりしたいい子たちだな。
「大丈夫。長年着ていたジャージだから、もともとボロいんだ。ただ顔はちょっと痛かった」
就寝中にここへ飛ばされた? ため寝間着のままなのは致し方ない。
「「ジャージ? 」」
やっぱり知らないか、双子特有のシンクロ率で首を傾げている。
「動きやすい快適さ、手放しにくさ、破れにくい頑丈さが売りのこの服のことだよ」
2人はゴシックやロリータを連想させるようなフリフリな寝間着姿。黒統一の建物と違い、ターナは青、ニーナはピンクのリボンに白い布生地だ。
「それって、マジョログモの糸かな? 」
「それって、百年草の繊維かな?」
「「高級品」」
2人の言っている意味がよくわからないが、ジャージは嗜好品よりの日用品であり、決して高級品ではない。ブランド物に拘るなら話は別である。
「君達の服の方が高級品だぞ」
どう見ても機械じゃない凝った刺繍が施されている。こんなに広い屋敷に住むんだ、いいとこのお坊ちゃまとお嬢ちゃんだろう。
「「なんだか、顔がぽかぽかする」」
褒められ慣れてないのか、顔がみるみる赤くなる。初々しいが、こんなにも可愛い容姿をしているのだから、メイドや執事や両親にちやほやされていると思っていたが……どうやら違うようだ。
それに広いとはいえ、とても他に人がいる気配が全くしない。2人以外に人はいないのか? そんな馬鹿な話はないと思うが。正直この子達がいてよかった。終わりが見えない廊下の静けさに身震いする。
「はっ、ニーナ早く行こう」
「そうね、ターナ行かないと」
再び2人に引っ張られながら、廊下を小走りに刺さないんだ。
♢♢♢
ここはダンジョンか、迷宮アトラクションか。
そう思いたくなるほど、下へ降りる階段が見つからない。
「僕たちずっと寝ていたから」
「大丈夫大丈夫。そのうち階段ぐらい見つかるって。例えば、そうだな〜。この部屋の中とか」
目に付いたドアを勝手に開けてみた。
「「おじさん、すごい」」
たまたまだったが、どうやらアタリだったようだ。部屋はまさしく階段のためのようで、他にインテリアが一切ない。月明かりだけを頼りに降りる。
階段が廊下じゃなく部屋に設置するとか、どういう意図でこんな構造体にしているんだ。
現代の建築には見ない方式に、ますますファンタジー要素が濃くなった。もしかしたら、宝箱が置かれている部屋や、罠や、モンスターが潜んでいるかもしれない。……今度は慎重に部屋を選別しよう。
「ところで気になったが、この屋敷には2人しか住んでいないのか? 」
それぞれ縦と横に頭を振る。いや、正しいのはどっちだよ。
「言いたくないのか? それともわからないとかか」
今度は揃って縦に振る。
なら、あまり深く追求するのはやめるか。
外へ出るでに答えが解るだろう。人がいるなら誰一人と会わずして出れるほど、この屋敷は狭くない。今は次の階段を探そう。