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異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する  作者: 珉珉×打破
第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
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ネットと端末

  結論から言うと、パンツは見せてもらえなかった。そして、俺とセミルは相変わらず友達ではなかった。

 ……こう書くと大変な誤解を招くな。断じて俺は変態ではない。


「久しぶりだねー。元気だった?」

(少なくとも元気ではなかったな。あれから誰とも話せなくてな、精神が崩壊するところだった)

「え、誰とも話せなかったんだ。悪霊さん、よほどみんなと波長が合わないんだね」

(うるせぇ、ほっとけ!)

「そして、精神が崩壊? それってどんな気分なの?」

(うーんとだな。諦念と悟りと躁鬱を無限に繰り返した後に、思考の発散と収束が不定期にやってきて、最終的には自然と一体となる感じだな)

「意味がわからない」

(まあ、体感しないと分からないだろうさ)

「だろうねー」


 俺はセミル宅で彼女と談笑していた。玄関先で何度か叫んで、入れてもらったのだ。

 意思疎通のできないユリカもリビングにいるが、ちょっと離れたイスに座り、仏頂面でお茶を飲んでいる。なお、セミルが適宜通訳しているため、彼女にも俺の話した内容は伝わっている。


「ふーん、そのまま崩壊してれば良かったのに……」 

 仏頂面のまま、ユリカがぼそっと呟いた。

(……あ、あれ? 久しぶりに会ったと思ったら、俺、ユリカに嫌われてる?)

「あー、別に気にしないで、と言いたいところだけど、悪霊さんタイミングが悪かったからなぁ。わからないだろうけど、素直に謝ったほうがいいよ」


 ん? 身に覚えがないが、どうやら何か悪いことをしてしまっていたようだ。ここは素直に謝っておこう。


(えっと、すまない。よく分からないが、タイミングが悪かったようだ。次から気をつけるから許してほしい)


 ぼそぼそっと、俺の謝意をセミルがユリカに伝える。


「次やったら絶対に許さないんだからねー」


 おお、許されたようだな。それで、俺は何をしたんだ?


「ん? 私達の情事を邪魔しただけだよ」


(……)

「……」

「……」


(えーっと? ジョウジとは……?)

「え? 悪霊さん知らないの? xxxとかxxxxのこと」

(待て待て、それ以上いけない。レギュレーション違反の恐れがある。


 よし、分かった。悪霊さん超速理解した。


 二人はマッサージをしていたんだな。日頃の疲れをほぐしていたのだ。もちろん、集中力を要することだろう。大切なことだもんな。その最中にパンツ見せろと大声で叫ぶ輩が現れて、恐らくセミルの集中が乱れてしまったのだ。マッサージを受けていたユリカにとっては、わけも分からずに急な邪魔が入った状態だ。それは怒るよ。怒って当然だ。間違いなく俺が悪かった。以後、玄関先でパンツ連呼するのはやめる)

「できれば、玄関先以外でも自重して欲しいんだけどね」

(何を言う、パンツは魔法の呪文だよ?)

「いや、確かに私達が言わせてたのは認めるけど、流石にちょっと迷惑というか……」

(パンツは魔法の呪文だよ? 世界を救う奇跡の言葉)

「そんな汚い奇跡は初めて聞いたな、私。……あー、精神が崩壊するとこうなるのか。うん、分かった。でも、なるべく自重してくれると助かる」

(努力しよう)


 パンツの正当性を納得してもらえて、俺はすごく満足だ。


(というか、二人はそんな関係なんだな。ただのルームシェアだと思っていた)

「そりゃ、同じ家に住んでるんだから、することくらいするさ」

「そうだよ! 私とセミはラブラブなんだからね! 次やったら、悪霊さんのあることないこと、ネットにぶちまけてやるんだから!」


 い゛~と、ユリカは、見えない俺に向かって牽制する。


(ん? ネットがあるのか?)

「ああ、あるよ。言ってなかったか?」


 さも当たり前のようセミルは肯定する。ネットって本当にネットか? 網のほうじゃないよな?


「網? ネットと網なんて別物でしょ? 共通点なんてどこにも無いじゃない」

(……どうやらマジぽいな。ってことはコンピュータもあるのか!?)

「端末ならあるわよ。ほら」


 セミルはごく普通にポケットからそれを取り出した。


(……スマホだ)


 セミルが取り出したのは意匠が若干異なるものの、紛れもなくスマホであった。画面は発光し、セミルが画面をタッチすると画面が次々に切り替わる。


(ふぉおおお、触りてーーーー!)

 

 異世界のスマホ! しかも、異世界に普遍するスマホだ。どんな機能があるかスッゲー気になる!


「悪霊さん、手なんて無いでしょうに」

(そうなんだよなー、くそー! なあ、どんな機能があるんだ?)

「調べ物したり、必要なものを届けてくれるようにしたり、知人にコンタクトを取ったり、だね」

(おー、俺が前いた世界と似たようなことができるんだな)

「悪霊さんの前いた世界にも、似たものがあったのね」

(ああ、そうだ。みんな持ってたし、俺も持ってた! いやー、また目にできるとは思ってなかった)


 俺はしばらくセミルの端末に夢中になっていた。

 

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