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異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する  作者: 珉珉×打破
第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
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 『友達百人できるかな』という童謡がある。多くの人はご存知だとは思うが、小学一年生になって、友達百人できたら嬉しいねというのが歌詞の内容である。さて、その歌詞の内容はとても奇妙なものである。友達百人できたらいいね、と言っておきながら、何をするにも百人で行動したいなぁと主張するのだ。友達百人+主体一人の合計101人がいるはずで、残るひとりはどこへ行ったのだろうか。仲間はずれにされたのだろうか。死んでしまったのだろうか。それとも戦時中に流行ったことから察するに、極度の飢餓感からおにぎりとなって食べられてしまったのであろうか。未だに議論は尽きない。


 でもまあ多分、残されたひとりはネクラなインドア派で、ありのままの自分を受け入れてくれる素敵な百人の友だちと出会ったのだろう。認め合うって素晴らしい。無理に笑ったり、アウトドアするのも疲れるもんね。なお、決して俺のことではない。これは素敵な友情に包まれた101人の話である。



 閑話休題。


 第1のミッション。『友達100人達成』。ただし、俺と意思疎通ができなければ、友達と認められない。


 現状、俺と意思疎通が可能なニンゲンは、セミルとマダムの2名。俺がこの世界に来てから、会話を試みたニンゲンの数、百十数名。精神崩壊していたため、経過した月日は不明。おおよそ50日くらいだと考えて、このままのペースで行くと、百人達成にかかる月日は2500日。この世界の年換算で8年とちょっと。


 まあ、制限時間とかは聞いてないし、時間をかければ達成は難しくないだろう。しかし、残念なことに今の俺には難易度が高い。

 

 現状、俺は迷子であり、しばらく人と話せないと精神が崩壊する。


 うん、俺も正直、あそこまで精神が崩壊するとは思ってなかった。少しくらい人と話せなくても余裕かと思ったが、全然余裕ではなかった。視覚と聴覚以外に刺激がなく、外界からのリアクションがないことが、こんなにも精神に堪えるとは……。死神さんのビンタがなければ、恐らく俺は廃人となってただパンツを求めて彷徨う本当の悪霊となっていたことだろう。


 まあ、とりあえず、天下り的に生じたものであるが、俺のこの世界における目的は決まった。あとは、行動するだけだが、進んだ方向に俺と意思疎通できるニンゲンがいるかは分からん。できればセミルかマダムのところに行きたいが、これは本当に運次第だ。


(っていうか、さっきまでの俺の惨状みたら、放置したら駄目なことくらい気づけよ死神さんよー! 気がついたらしれっと居なくなりやがって。かわいいからって調子乗ってんじゃねえぞこらぁー!)

「えへへぇ、またかわいいって言ってくれましたぁ」

(うひょぁ! し、下から来るなぁ、下から! びっくりするだろうが)

 

 突如、地面から死神さんがスィーと姿を表した。


「そんなこと言って、また私と会えて嬉しいくせに〜」

(いや、それはとても嬉しいですけども)


 実際、かなり嬉しい。あのままミッション達成まで死神さんと会えなかったら、どうしようかと思っていたところだ。


(ところで、死神さん。セミルかマダムってニンゲンの場所、わかりませんか? 今のところ、俺が意思疎通できるニンゲンなんですけど、実は俺迷子になってしまいまして……。このままだと、また俺人と話せなくて、精神崩壊しちゃいますよ。廃人まっしぐらで、ミッションどころではありません)

「セミルさんと、マダムさん…‥。うーん、私は分かりませんが、おそらく、大丈夫でしょう。ミッションを受けていただいた悪霊さんには、ちょっとしたオプションを与えてもいいって事になってるんです。それをお伝えするのを忘れてまして、戻ってきたんですよ」

(オプション?)

「はい。さっきサービスって言って、ぎゅってしたじゃないですか。そのときに付与いたしました」

(あ、サービスってそういう意味だったね)

「はい。『友達発見器』というサービスです!」


 なんだか、俺は寂しいやつみたいだな。いや、実際、孤独だけれども。


「では使い方をお教えします。うーん、そうですね……。悪霊さんが出会ったことのある友達……、セミルさんの顔と声をよーく思い出してください」

(セミルの顔と声……?)


 言われたとおり、俺は思い出す。すると、視界の右上に「1 / 100」という文字が現れた。


「見えましたか? それが現在の友達の数です」

(ほう、まだ1人か。多分、マダムとはまだ友達になっていないんだろうな。何を以て友達と判定しているのだろう)

「そのへんは私もよく知りません。それでは、その状態でぐるっと視界を巡らせて下さい」


 ぐるっと回る。が、何の変化もない。


「え、変化ないですか? おかしいな……。も、もう一回お願いします」


 同じようにぐるっと回る。が、何の変化もない。


「あれー。……あ、もしや。では次にマダムさんの顔と声を思い出して、同じようにぐるっとしてください」

 

 俺は言われた通り、マダムのことを思い出そうとする。余計なものが見えそうになるが、懸命にそれを記憶から排除し、回転する。

 

(ん……? これは?)


 なんだろう。不思議な感覚がする。直感といえばいいのか、この方向にマダムを感じる。


「なるほど。どうやら悪霊さんはマダムと友達のようですね。その方向に進むと、マダムさんがいますよ」

(え、俺マダムと友達なの? そんでセミルとは友達じゃないの?)

「そのようですね」


 まじかよー。てっきり逆だと思ってたわ。本当に基準が分からん。過ごした時間や、会話の数からすれば、圧倒的にセミルのほうが上なんだが。友情は時間じゃないとはよく言うが、マダムとなんてたった一度だけ会話しただけなのに……。俺との関係で、マダムがセミルに勝っていたこと何かあったか……? マダムだけ特別な……、ん?


 セミル → パンツ見せるNO

 マダム → パンツ見せるOK


 基準て、もしかして……。いやいや、まさかな…。


「というわけで、これでもう大丈夫ですね。それでは頑張ってください!」

(あ、死神さんもうどっか行っちゃうんですか? もっと一緒にいましょうよ!)

「ふふ、嬉しいお誘いですが、職務中ですので、また今度誘ってくださいね。折を見て様子を見に来ますので、ミッション頑張って下さい! それではー」


 死神さんは手を降って、スーと消えていった。うーん、残念。死神さんとずっといられれば、精神崩壊はしないのに。でもまあ、マダムの居場所もわかったことだし、もう大丈夫だろう。俺もそろそろ移動するか。


 俺は友達発見器を頼りに、まっすぐ移動する。丸5日移動しただろうか、ようやく見覚えのある場所に出た。セミルとマダムがいる村への道だ。あのまま彷徨っていたら、絶対に戻ってこれなかっただろうま。

 

 マダムの屋敷に着いたが、なんとなく先にセミルと会話したかったので、素通りする。不快な記憶がフラッシュバックするが、なんとか記憶を排除する


 緑の道を進み、ようやくセミルとユリカの住む家にたどり着いた。窓を通り抜けられるが、見知った仲なので、礼儀正しく玄関の前で挨拶することにした。セミルに聞こえるように、大きな声で俺は念じる。


(すみません。おパンツ見せてもらってもよろしいですか?) 

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