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異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する  作者: 珉珉×打破
第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
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決着

 撃槍。パイルの持つ隠し武器。マダムでも折ることのできない強固さを誇り、それでいて軽量。「このままだと軽くて短いため使いづらい」という理由で、槍の先端に刀身をつけ重さとリーチを調節したものが大剣『撃剣』。


 撃槍は、パイルが幼いとき、生まれた場所の近くでたまたま発見する。形が気に入ったのでそのまま持ち帰った。そのとき一緒に居たのは師匠であるバイダルではなく、友人であるグレン。彼もその槍が気になり、「取寄せ」しようとしたところできないことに気づく。ますますグレンは槍が欲しくなり、パイルと喧嘩に発展。たまたま傍を通りがかったマダムに仲裁され、マダムは喧嘩の原因である槍を半分こしようとする。しかし、槍は彼女の力でも折ることができず、結局グレンが諦めることとなった。


「ーーという武器です」


 撃槍についてグレンさんは説明する。ちなみに撃剣は取寄せが可能で、その場合、柄と芯は撃槍ではなく別の素材で見た目そっくりに作成される。こちらは簡単に破壊することができたそうだ。


「ふむ……。その武器について、バイダル(あいつ)は知っているのか?」

「存在自体は知ってたと思いますよ。幼い頃、ときどきパイルはブンブン振り回してましたから。ただ、撃剣のなかにあることは知らなかったでしょうね。その硬度についても」

「なるほどの。それであんなに驚いているのか」


 謎の武器により身体を刻まれていくバイダルさん。先程とはうってかわり、防戦一方のようだ。といっても、バイダルさんがその場で動かず攻撃を凌いでいるからそう見えるだけだ。俺の目からでは高速で動き回るパイルさんの姿は見えないので、実際はどうなのかは分からない。それに、バイダルさんがその場からあまり動かないのは何でだろう。


「……パイルらしくない戦い方ですね」

「じゃの」


 グレンさんが言い、グランさんが同意する。


「そうなの?」

「ええ。いつものパイルの戦い方は『肉を切らせて骨を断つ』。そんな戦い方です。けれど、今のパイルはヒット&アウェイで削りつつ、スキを狙っているような。この戦い方はまるで……」

「ーーお主のようじゃの。グレン。かっかっか。なんじゃ、パイルもお主に影響されているではないか」

「俺に影響された、というより、自分のスタイルを変えるほど本気で勝ちたいと思っているのでしょう。いつもの戦い方ではバイダルさんの攻撃を受けきることはできないと悟り、自然こうなっているのかと」

「真面目じゃのう。ああ、告白の返事待ちで緊張しているのか」


 はいと肯定するグレンさん。もしかすると、この戦いの結果次第では返事が変わるかもしれない。恋に悩んで逃亡したパイルさんが師匠と本気で戦っているのを見て、グレンさんはおそらくそう思っているのだろう。


「ん、ここは……?」


 あ、クリスタが目を覚ました。


「クリちゃん起きた?」

「ん? あれ、シズが復活してる! どうやって抜け出したの?」

「グランさんの新しいお弟子さんが助けてくれたの」


 ペコリと頭を下げるリューエン。


「あ、どうも」


 そう言ってクリスタは立ち上がり、激音やまない眼下の戦いに視線を向ける。


「どう、本気で戦ってる?」

「そうみたいね」

「そっか。身体張ったかいがあったぜ」

「でも、何で二人は本気で戦っているの?」

「んとねー、そのほうがいいと思ったからだね。あるいはそうしないと前に進めない思ったから。パイルだけじゃなく、多分バイダルさんも」

「うーん、よく分からないわ」

「後でくわしく説明するから」

「お願いね。もう、グレンくんの告白の顛末を知りたいだけなのに、どうしてこうなったんだろう?」


 はあーとため息をつくシズさん。罵倒されたときも身体を剣が貫通したときも、いつも元気な彼女らしくない。そんなにマダムとの戦いが堪えたのか。


(クリスタ、大丈夫だったか?)

「悪霊さん? うん、大丈夫大丈夫。何、心配してくれたの? ありがとね。お礼にオッパイ見る?」

(なんだ、頭の方は相変わらず大丈夫じゃなかったか)


 飛ばされた拍子にまともになれば良かったのに。


「酷い。でもバイダルさんも手加減してくれてたし、そこまでの衝撃はなかったよ」

(手加減? バイダルさん怒ってクリスタのことふっ飛ばしたんじゃないの?)

「いや、私のビンタ程度で怒らないでしょう。私をふっ飛ばしたのもデコピン(・・・・)だったし。単にいらっとした程度なんじゃないかな? 知らないけど」


 ああ、あれデコピンだったのか。


「それで、戦いの方はどうかなーっと。強者同士の戦いだし、すごい戦いが繰り広げてるんだろうな……。あの半裸のマッチョさんがバイダルさん?」

(ああ、バイダルさんが本気で闘うときの姿だそうだ。いつもの様子とはかけ離れてるだろ。クリスタのおかげで、本気で戦えてるみたいだぞ)

「……」

(クリスタ?)

「ーーっは。そ、そうみたいだね。それは良かったぜー」


 はっはっはと大袈裟に笑うクリスタ。バイダルさんの劇的ビフォーアフターに頭が追いついていないのだろう。


「それで、どっちが勝ちそうなの?」

(それは俺にも分からん。専門家でないと)

「シズ、どう?」

「予想以上にパイルちゃんが健闘しているわね。でもーー」

(でもーー?)

「まあ、勝つのはバイダルじゃな。防戦一方のように見えるが、今は見極めておるのじゃろう。パイルの速度、攻撃パターン、撃槍の脅威度、その他諸々を」


 シズさんの言葉をグランが引き継ぐ。


「確かにあの槍は脅威じゃ。パイルも扱いが慣れとる。普段はより重い撃剣を振るってたんじゃ。いまの槍の速度はその比ではないーーが、弱点もある」

「弱点?」

「あの武器は確かに壊せん。けれど、それを使用するパイル自身が強固になったわけじゃない。今はバイダルが守勢に回っているが、攻勢に回ったらーー」


 一際大きな衝撃音が響く。バイダルさんの拳がパイルさんを捉えたのだ。大きく後方に飛ばされたパイルさんは着地に成功するも、槍から手を離し腕を振るう仕草を見せる。撃槍でガードしたようだが、衝撃は武器をつたい彼女の身体まで浸透したようだ。


「ーー受けきれん。この勝負は終いじゃ」



 眼下の大穴にて、バイダルさんがパイルさんに声をかける。


「ふむ……。確かにその武器は固いが、お前自身の速度はその程度か。まだまだ温い。グランの足元にも及ばん。かといって、シズのような耐久力も持ち合わせていない。そろそろ決めさせてもらうぞ」

「……師匠」

「何だ、小娘。いまさらそう呼ぶのか? まだ甘さが抜けきっていないのか?」

「違いますよ。そんなんじゃありません。ただ……」

「ただ?」

「私があなたより強くなれば、あなたは自分より強いものに師匠と呼ばれることになる。そう思ったら、すごく小気味いいなと思いましてね……」

「ほぅ……。まだ戦意が尽きぬか」

「当然です。あなたより強くなり、あなたに勝ち、そしてーー」


 そして、あなたを守ってあげますよ、師匠。


 パイルさんがそう呟いたその瞬間、四方八方から炸裂音が響いた。


「これは……!」

「みんなそこから動かないでね」


 俺たちの目の前で何かが弾ける。弾き飛ばしたのはシズさん。弾かれたのは一本の刀剣。


(パイルさんの刀剣投擲か!)


 闘技場でパイルさんの行った、隠し持っていた刀剣による遠距離攻撃。まだ、こんなにも持っていたなんて。しかし、この攻撃はバイダルさんに通じるのか? 闘技場でも簡単に防ぎますと言っていたぞ。ええい、刀剣投擲のせいで大穴に砂埃が舞い、視界がはっきりしないのでよく分からない。


「いや、これは攻撃ではない。単に重りを取っただけじゃ」


 なるほど、そうか。


 大穴の中で、数回、大きな衝撃音がした。

 重りを取ってさらに加速したパイルさんが、バイダルさんに攻撃を仕掛けているようだ。

 やがて、音が止み、静寂が大穴を支配する。



(決着……か?)


 闘技場と違い、勝敗が自動判別されるわけじゃないのでここからだとよく分からない。 

 

「俺、行ってきます」


 そう言い残し大穴へと向かったのはグレンさん。


「終わりましたよ」

(うわ!)


 いつの間にかすぐ傍までバイダルさんが来ていた。戦闘終了の合図を告げたバイダルさん。彼の筋肉はいつもの大きさに戻っている。もう闘うつもりはないようだ。


(ということは……)

「ええ、パイルは穴の底で気を失っています。よくやりましたが、彼女の負けです。まあ、もう少しでしたかな、はっはっは」

「……何を嬉しそうにしとるんじゃ? バイダル」


 凶悪な笑みとは違う、いつもの柔和な笑顔。そのさらに1.5倍くらい頬が緩んだ顔で、バイダルさんは笑っていた。

クリスタがおっぱいを見せたがっているのは、服を脱ぐのが目的です。

オッパイを見せるのが目的ではありません。


 服がゴワゴワする

→脱ぎたい

→でも脱いだらマダムに説教される

→悪霊さんがオッパイ見たいというのであればワンチャンあるかも

→「悪霊さん、オッパイ見る?」


という流れです。

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