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異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する  作者: 珉珉×打破
第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
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(。☌ᴗ☌。)との再会

 次のムラは大陸の中央ではなく端側にある。マダムのムラの位置を時計の短針の6時とすると、8時半のあたりに存在するムラだ。移動に7日ほどかかったが滞在は2日で終わってしまった。観光名所も特になかったので、妖精さんスポットを巡っただけで次のムラへと出発した。


 その次のムラも同様であった。ただ、セミルが知人と話し込んでしまったので3日間滞在することになった。なんでも、セミルの元彼との共通の知人らしい。随分と長い間話していなかったので、積もりに積もった話がなかなか尽きなかったそうだ。

 

 その次のムラは音楽のムラ。ムラに入る前から楽しげな音色が聞こえて来た。コロシアムの上位ランク戦のときに楽器を演奏していたヒト達の本拠地だ。世界から音楽好きなニンゲンが集まり、毎日のように演奏会が開かれているらしい。歌声や演奏の技術が素晴らしいのもあるが、何より楽しそうに音を奏でているのが印象的だ。観客も自然と身体が弾んでいき、ダンスが始まる演奏会もある。ヒメちゃんも陽気になったセミルと一緒に踊っていた。飛び入りで演奏しているヒト達もいて、非常に自由な場であるようだった。


 みんながどれくらい楽器をできるのか気になったので訊いてみた。


 マッドは基本何でも扱えて、ノーコちゃんは打楽器が得意。ヒメちゃんは弦楽器に興味を持ち、セミルは楽器の扱いが不得意らしい。「右手と左手が同時に動く」とピアノらしき楽器を前にしてセミルは言っていた。複雑な楽器は苦手みたいで、シンバルみたいな楽器ならいけるかもと漏らしていた。何でもうまいマッドに対抗意識が出たようだ。ちなみにピアノが得意なのはユリカ。封印されたゴミ部屋に小さいピアノが埋もれているらしいが、俺が入ったときはそんなもん陰も形も無かったぞ。何が機能美だ何が。


 毎日がお祭りのような音楽のムラは退屈しなかったが、一通り見回ったあとに次のムラへと出発した。滞在期間は1週間くらい。


 次のムラは閑散としていた。いや、今までのムラも元の世界の村と比べたらかなり閑散しているのだが、このムラはもう無くなる寸前といった感じだ。数百年くらい前は普通のムラ並にヒトが居たそうだが、音楽のムラができてからはそっちに移り住んでいくヒトが多いらしい。あと数十年もすればムラとは呼ばれなくなるだろうな、と数少ない住民は言っていた。


 妖精さんスポットに行ってみたが特に何もなし。俺達はすぐに次のムラへと出発した。残すムラはあと一つである。



「もうすぐ世界旅行も終わってしまうが、旅の初めに妖精さんから伝えられた『セカイヲメグレ』とは何だったんだろうな。今のところ、科学のムラでの地下施設の発見と、塔のムラでの誘拐事件が起こったが、それが結局どういった意味を持つか全然わからんのだが」


 最後のムラへの道中、マッドが車内のみんなに尋ねる。

 そうか。俺はその理由とかラスボスの存在とか全部知っているけれど、みんなは知らないんだったな。


「そうだねー。塔のムラで私達が眠っている間、悪霊さん何か気づいたことあった? 妖精さんの声が聞こえたとか。ほら、『セカイヲマワレ』って妖精さんが言ったの、悪霊さんと何か関係ありそうなんでしょ? 実際に聞いたのはヒメだけどさ」

(いや、特に何も無かったぞ)

「そう? ヒメも本当に眠ってただけ? その間に何かされたりとかは?」

「眠ってたから分かんない。起きたとき何も変わってなかったから、そんなことはない、かなーって思うけど……」


 ヒメちゃんはだんだん自身がなくなってきたのかじょじょに声量が小さくなる。


「何かって、誰がするんですか?」

「さあ。妖精さんかな?」

「眠る直前に見たヒメ氏似の誰かの可能性もあるな」

「私も起きたときは特に違和感なかったけど、みんながみんな、あんなタイミングで眠るなんて普通ありえないよね。強制的に何者かに眠らされたんだとしたら、その何者かが私達に何もしないとは考えづらい。けど、寝て起きて何かされてたヒトはいなかったし、どうやって眠らされのかも分からない。うーん、謎だらけだ」


 運転するセミルは頭を捻る。


(俺の世界には睡眠薬っていう、飲んだ人間を眠らせるアイテムがあってな。この世界にはそんなアイテムはないのか?)

「ふうん? 悪霊氏の世界にはそんなアイテムがあるんだな。こっちでは聞いたことがないな」

「私も知らない。随分と悪用されそうだね、そのアイテム」


 この世界には病気がないので薬という概念もない。無さそうだと思いつつ尋ねてみたが、やっぱり存在してなかったか。


「あ、思いついた。悪霊さんの世界の住人が、魂だけじゃなくて身体がごとこっちに来て、たまたま持っていたその睡眠薬で私達を眠らせた」

「可能だが可能性は低いな。それに私達は何も飲んでいないだろう?」

(あ、嗅がされるだけで眠るタイプもあったな)

「それを使ったとしても目的が分からない。眠らせることが目的ではないだろうし、眠っている間にこっそり何かをされたわけでもないだろ?」

「そうだね。パッと思いつくところではxxxxとかされそうだけど、ヒメも私もされてないことは確認済み」

「私もノーコもだ」


 セミルさんさらっと言ったけど、それ割とアウトだからね。あと、どうやって確かめたんだろう。ちょっと気になる。


「えー、じゃあこういうのはどう……?」


 とセミルが引き続き思いついたことを皆に話す。いつの間にか話題が妖精さんからそれてしまっていたが、みんな特に気にしていない。妖精さん自体が「よく分からない囁くだけの存在」と認識されているので、何か変なことがあってもそうなんだーというふうにしか感じないのだろう。


 あと世界旅行の目的が、セミルとヒメと俺は観光だし、マッドは妖精さんの声を聞くことで達成済みで、ノーコちゃんはマッドのお供であるため、謎の解明にはあまり興味がないんだろうな。そういったことに興味がある科学のムラ連中だ。彼らにはライゼを介して伝わっているだろうし、詳しいことは彼らが捜索してくれるだろう。真実は多分、よっぽどのことがないと分からないだろうけど。数百年続く引きこもりが外に出るとか、そんなよっぽどのことが無い限り。



 最後のムラに到着した。このムラからマダムのムラへは1日もかからずに到着する。もう旅行の終わりは目前だ。いつも通り、しばらく泊まる家を俺達は探す。良さそうな家を見つけて、俺達は車を降りた。


 道からムラを眺めて、俺は気がついた。


(ここ。見覚えあるな……)

「え、本当? このムラに悪霊さん、来たことあったの?」

(ああ。この世界に来た最初の頃にな……)


 この世界に初めて来たときのことを俺は思い出す。なぜか草原に放置されていた俺は三日三晩彷徨い歩いてセミルとユリカに出会った。彼らにマダムを紹介され自身のルーツを探るべく世界を見て回ることを決意したが、マダムのムラでは誰とも話せず、次のムラでも誰とも話せなかった。ここはその次のムラのようだ。


「そっか。じゃあ、悪霊さんと話せるヒトは増えないかもね。うーん。結局、世界を周ったけど悪霊さんのこともよく分からなかったね」

(まあ、俺のことは気にしなくてもいいよ。自由に話せる異世界から来た妖精さん、で良いんじゃないかな)

「……本当に?」


 ボソリとセミルが呟いた。


(セミル?)

「本当に、悪霊さんは気にしてないの?」

(んー。……気にしてないと言えば嘘になる。けど、どうしようもないときはどうしようもないし。のんびりと待つことにするよ)

「……そう」

 

 セミルはそう呟いて俺から離れていった。気のせいか表情が暗い。なんだろう。このムラに会いたくないヒトでも居るのかな。


 いや、そんなことよりもだ。最後のムラがこのムラで俺は非常に落胆していた。塔のムラ以降、友達が全然増えなかったので最後のムラでなんとか20人達成したかったのだ。けれどセミルの言う通り、このムラの住人のほとんどとは以前に意思疎通を試みてダメであることが分かっている。そのため、20人達成の望みは非常に薄い。


 うーん。そうすると、意思疎通できていたが未だ友達になってないヒトと仲良くなるしかないかな。今の所、該当するのはコロシアムで会った<十闘士>のシズさんだけか。もうひとりはムラに定住しないニンゲンを探して何とかするとして、シズさんか……。あの人、独特の性癖を持っているからあまり会いたくないんだよね。特に、ヒメちゃんと居るときは。居場所も分からないから探さないといけないし、バイダルさんなら同じ<十闘士>だし、場所を知ってたりしないかなー。

 

「あら、皆さん久しぶりですね。こんなところで会うとは奇遇ですね」


 隣の家屋の影から呼びかけられる。そちらを見ると、とんでもない光景が目に飛び込んできた。

 あまりの光景に目を疑ったおれは、二、三回ほど視線を外すが、何度見ても絵面は変わらない。


 シズさんが笑顔でこちらを見ている。


 たった今、場所を知ろうとした人物が目の前に居る。それはまあいい。

 笑顔でこちらを見ている。それもまあいい。

 シズさんだけでなく、彼女の知人らしきヒトが傍にいる。それもまあいい。

 だが、それ以外の部分が駄目過ぎる。


 なんでシズさんは、

 素っ裸で、

 首輪を付けて、

 四つん這いになって、

 隣のこちらもまた素っ裸のお姉さんに引き回しにされている状況で、

 笑顔のまま普通に挨拶できるんだろう。


 このヒトの性癖、やばさに磨きがかかってないだろうか。

ユリカ部屋の作業机の下にピアノがあります。ユリカが床を一段低く改造してそこにピアノを入れました。椅子の高さを下げると鍵盤が叩けます。時々、演奏してました。あと、幾つかの鍵盤は弦ではなく別のギミックに連動させているため、その鍵盤を叩くとお菓子が降ってきたりしました。ただ、遺品漁りと部屋整理のせいで、もうその機能は使えません。


BM登録ありがとうございます。登録数2桁です。感謝です。

次の目標は3桁ですが、このペースですと物語が完結するまでには無理そうですね……。

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