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異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する  作者: 珉珉×打破
第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
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恋の相談

 グレンさんをふっ飛ばしたパイルさんは、羞恥心のあまり顔を両手で覆ったままどこかへ消えてしまった。「ああ、インタビューしたかったのに……」とキクカさんが残念がってた。このヒトも野次馬根性旺盛だ。吹っ飛ばされたグレンさんの二の舞になるかもしれないのに。


 三々五々にヒトが帰っていく。次の試合は明日にならないと始まらない。試合のスケジュールは自動で決まるらしく、長引きそうな対戦カードであればそれなりのマージンを確保しているとのこと。ちなみにヒメちゃんの初試合後はマージンが少なく、すぐに次の試合が始まっていた。すぐに終わると予想されていたらしい。賢いインフラである。


 折角大勢のヒトが集まっていたので、意思疎通できるヒトを探してみたが収穫なし。キクカさんも駄目であった。とはいえ、世界旅行の最初のムラでグレンさんとシズさんの2人と知り合いになれたのだから幸先がいい。今朝確認したら、グレンさんとは友達になっていた。


 シズさんとは知り合ったばかりなのでまだ友達と認められていない。そのため、友達になれるようもう少しお話をしておいた。俺の身の上話と、他にこんなヒトいませんかねー、あ、いませんかーというお決まりの情報交換だ。少しでも友達になれる確率を上げておく。友達になれるかどうかは時間の問題でもあるのだ。仮になれなかったとしても友達候補が増える分にはありがたい。


 バイダルさんは壊された観客席の修理をするそうなのでコロシアムで別れた。舞台やコロシアムの基礎は爆弾でも傷一つ付かないが、観客席は別途設置したもので今回のように壊れてしまう。管理者であるバイダルさんは、それを自発的に修理しているらしい。「なあに、すぐに済みます」と言っていたので、すぐに済むのだろう。本当に。


 バイダルさんと別れて仮宿である和風住宅に戻る。ちなみにグランは昨夜からこの和風住宅に泊まっており、今日も一緒に泊まるそうだ。帰宅するとグレンさんが居た。そして、なぜかパイルさんも居た。ただし別々の部屋だ。痴話喧嘩はもういいのだろうか。そうセミルがからかうと、パイルさんは顔を真赤にして壁ドンを披露してくれた。壁にヒビが入り、家が軋む。迂闊にからかわない方がいいと全員が悟った。家を壊されては敵わない。折角掃除したのに。

 

 女性組と男性組に別れて部屋に入り、恋バナが始まる。面白そうなので俺は黙って部屋を行き来して、情報収集に務めることにした。


<女部屋>

メンバー:セミル、ノーコちゃん、ヒメちゃん、パイルさん


ヒ「パイルちゃん、試合すごかった! どうすればあんな風になれるの?」

パ「ありがとうございます。ヒメちゃんなら200年くらい修行すれば私くらいにはなれるでしょう」

ヒ「200年かー」

ノ「長すぎですね……。私の年齢の4倍ですか」

パ「存外、励めばすぐに月日は過ぎ去りますからね。300年くらいはすぐですよ」

ヒ&ノ「ほえぇぇ」

セ「それだね。パイルちゃん」

パ「それとはセミル殿。それと、私のことはパイルと呼んで下さい」

セ「あ、私も呼び捨てでいいから。それでね、パイル。あなた、修行修行でそれ以外の経験はほとんどないでしょ」

パ「セミル。それ以外、とは……」

セ「ずばり、恋愛経験!」

パ「Σ(=ω=;)ギク!! 」

セ「もしかして、初恋もまだなんじゃないのー?」

パ「いや、流石にそれは……」

ヒ「初恋ってなーに?」

ノ「ヒメちゃんは好きなヒト居る?」

ヒ「みんな好きだよ! セミ姉にあっくん。マダムやノーコちゃん、マッドやムラのみんなも!」

ノ「ヒメちゃん可愛い! ぎゅってしちゃう。ぎゅって」

ヒ「く、苦しい……。ぷはっ。それで、初恋って?」

ノ「パイルさん、説明をお願いします」

パ「えっ! 私!? 」

セ「初恋くらいは経験したことあるんでしょー。ほらほら」

パ「ぐ……。えっと、だな。好きという感情のなかでも、本当に、特別な相手に対する好きという感情だ。え? どんな相手かって? えっとだな。好きということは前提で、さらに頼りがいがあって、いろいろなことを教えてくれて、私の話をちゃんと聞いてくれて、私のことを大切に想ってくれるヒト。だな」

セ「ん? ……ノーコちゃんちょっと集合」

ノ「はいな」

セ&ノ「(´・ω・) (・ω・`) ……」

パ「ちょっと、二人でヒソヒソ話しないでくれる? 私、変なこと言った?」

ノ「結論が出ました」

パ「へ?」

セ「パイルは恋をしたことがありません!」

パ「!? 馬鹿な!」

セ「パイルの初恋のヒトは、頼りがいがあって、いろいろなことを教えてくれて、自分の話をちゃんと聞いてくれて、自分のことを大切に想ってくれるヒト。レアリー?」

パ「そ、そうだな」

ノ「それは『初恋のヒト』ではありません。『憧れのヒト』です」

パ「な゛っ!」

セ「そして恐らく多分間違いなく、パイルが今思い浮かべているヒトはバイダルさんです」

パ「! ……ち、違うもん」

セ「パイル嘘下手すぎ」

パ「ぐっ……。なぜ分かった」

セ&ノ&悪「(分からいでか)」

パ「それに、初恋と憧れの違いは何だ! 似たようなものだろう」

ノ「はあー、これだから素人は┐(´ー`)┌ 」

セ「もう、全然違う。テツジンの料理と私の料理くらい違う」

パ「であればご教示願いたいですね(-_-#") 恋と憧れの違いとやらを」

ノ「そうだねー。」

セ「恋にあって憧れにないものは……」

ノ「胸が切なくなって」

セ「相手のことが放っておけなくて」

ノ「抱きしめたくなって」

セ「いい匂いがして」

ノ「相手との妄想で頭がいっぱいで」

セ「触られるだけで嬉しくなって」

ノ「欠点さえも魅力に思えて」

セ「キスどころかxxxしないと気が済まなくなって」

ノ「頭の中をイジってもらうだけで絶頂しそうになって」

シ「ナイフでぐりぐりされると胸がキュンキュンしちゃって」

セ「え?」

ノ「ん?」

悪(へ?)

一同「( ´・ω) (´・ω・) (。☌ᴗ☌。)(・ω・`) (ω・` ) ……」

セ「わ! シズさんがいる!」

ヒ「どっから入ってきたの!」

パ(気配がしなかった……)

シ「こんばんわ~。パイルちゃんのことが気になって、来ちゃった。ちゃんと玄関から入ってきたわよ」

ノ「えっと、ちゃんと話すのは初めてですね。ノーコと言います。マッド博士の助手をしてます」

シ「はあい。<十闘士>のシズです。……あなたも私と同類(・・)なのかしら。昼に会ったときから気になっていたけれど」

ノ「へ? あ、(これ)のことですか? これは、博士だけの特別です」

シ「あら、そうなの。素敵ねー。で、パイルちゃんはグレンちゃんのこと、どう想ってるのかしら」

パ「へ?」

シ「好きなの? 嫌いなの? あんなに面と向かって訊かれたんだから、返事はしないといけないわよねー」

パ「い、いやいやでも、私はまだ恋と憧れの区別もついてないみたいだし、別に嫌いというわけではないんですけど、そんなあやふやな状態で返事をするのは相手に失礼というかなんていうか……」

一同「 (・∀・)ニヤニヤ」

パ「えっと恋というのは、胸が切なくなって、放っておけなくて、抱きしめたくなって、いい匂いがして、妄想で頭がいっぱいで、触られるだけで嬉しくなって、欠点さえも魅力に思えて、xxxしたくなって、頭の中をイジられると絶頂して、ナイフでぐりぐりされると胸がキュンキュンする相手に抱く感情なのだな。だとすると、私には恋なんて到底ムリな気がするのだ……」

セ「なんか、途中からおかしくない?」

ノ「そうですね」

シ「最初のほうもおかしい気がするけど……」

ヒ「結局、恋ってなんなのー?」

悪(駄目だこの女子会。変態が多すぎる)


<男部屋>

メンバー:マッド、グラン、グレン


レ「師匠とマッドさんに相談があるのですが……」

ラ「なんじゃい、改まって」

マ「パイル氏のことか?」

レ「そうなんですよ。あれから一言も会話してくれなくてですね。会いに来てくれたので、嫌われてはいないとは思うんですけど……。何か俺、悪いことしましたかね」

ラ&マ「……それはひょっとしてギャグで言っているのか?」

レ「何言ってるんですか。これは真面目な相談です」

マ「師匠、ちょっと……」

ラ「うむ」

レ「どうしたんですか?」

ラ「ちょっと待っとれ」


マ「師匠、どういう育て方すればああなるんですか!?」

ラ「待て待て落ち着け。わしも非常に困惑しておる。普段は真面目じゃが、ちゃんと冗談も解すし融通も効くのじゃ……」

マ「大衆の晒し者にしておいて、『悪いことしましたかね』は流石にちょっと、俺でも引きます」

ラ「ふむぅ。何百年も一途に思いすぎて、それ以外のことに頭が回らんかったか……」

マ「その場の勢いでならともかく、今の落ち着いた状態で罪悪感がないのはマズイかと。恐らく、このままですとグレンは振られます」

ラ「うーむ。悲しむ弟子の姿は見たくないのう」

マ「とりあえず、自身に行いでパイル氏が傷ついたことは自覚してもらいましょう。そうすれば、好感度アップはしないまでも、下がることはないでしょう」

ラ「よし。その方向で説得じゃ」


ラ「待たせたの」

レ「いえ」

マ「グレン。グレンはパイルが好きなんだよな」

レ「はい。もちろんです。だから告白しました」

マ「大衆の前で告白されて、パイルはどう思ったと思う?」

レ「……嬉しい?」

ラ&マ&悪「(違う!)」


 グレンさんの返答に頭を抱える二人。二人の様子に困惑するグランさん。

 その後、二人は頑張ってグレンさんに心の理論を教え込んでいった。


 女子会も酷かったが、男子会は男子会でレベルが低すぎる。

 果たして、この恋が実ることはあるんだろうか。

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