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異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する  作者: 珉珉×打破
第2章 恋のキューピッド大作戦 〜 Shape of Our Heart 〜
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状況整理

後編スタートです。

皇帝とレジスタンスと緑の一族の三つ巴で、

だいたい戦っているかと思います。

 皇子カミエルによって発表された内容は、以下のようなものだった。


 昨日未明、仕事を終え帰宅途中の皇帝ヴィルヘルミ・フォン・マルステラが何者かに殺害された。犯人及び動機は不明。護衛の帝国軍第一分隊数人の死体も併せて見つかっており、かなりの手練の仕業と思われる。現在、帝国軍警察が威信をかけて犯人を捜索中。


 それと前後して皇女ソフィア・フォン・マルステラおよび、侍女1名が行方不明になっている。皇女の部屋に侵入した形跡があったことから、何者かに誘拐されたと考えられ、皇帝殺害犯との関連濃厚と見て、前件と併せて警察が捜査中とのこと。


 また、先日(・・)帝国辺境(・・・・)にて、通信不能のために未だ惑星ガイアに居ると思われていたテラ・マーテル号を発見。自動航行で帰還したテラ・マーテル号に乗組員は居らず、代わりにひとつの記録映像が残されていた。映像には英雄オスカー映っており、彼は「ガイアの生物は危険で、こちらに敵意を抱いており、すでにフェルナンデスとセドリックはやられてしまった。自分も危ない。テラに新たな宇宙船は飛ばさず、危機に備えよ」という旨のメッセージが残されていた。


 これを受けて帝国がテラとガイアの宙域を精査したところ、こちらに向かう正体不明の宇宙船が観測。オスカーのメッセージを裏付けるような宇宙船の存在に、帝国は第二級の厳戒態勢を敷くと宣言。警戒体制でこの宇宙船を迎えると発表した。



 その後、記者会見や何やらがあって、細かい情報が増えていったが、大まかな内容はこんなところである。で、このニュースを青筋を立てながら聞いていたアスカは、一通りの発表が終わった後、盛大に暴れた。


「ふざ、けん、なーーーー!!!」


 彼女はそう叫ぶと、目の前の机をちゃぶ台返しがごとくひっくり返し、椅子をモニタに投げつけて破壊し、止めに入ったユキトを思い切り殴りつけ、最後は派手に血を吐いて倒れた。


 で、いつものようにシータちゃんやアルバートやら復活したユキトらが介護に回る。


「あー、アスカはここ連日はほぼ徹夜で作戦を詰めていましたからね……。その八つ当たりでしょう」


 クリスくんは暴れるアスカを尻目にそう言った。


(それでか……。でもクリスくんだってアスカと夜遅くまで作戦立案してたじゃない? それにしては落ち着いてるように見えるけど)

「僕は徹夜で立てた計画が無に帰すのに慣れてますから」


 そういえば彼は研究所務めのとき、立てた計画がことごとくパーになって予算が降りなかったんだっけ。それでこの余裕の表情なんだろう。


「余裕ではないですよ。ソフィアのことも心配ですし、状況が大きく変わりました。一旦整理しないと」

(そうだな。というか、心配って姫様だけ?)


 オスカーさん達のことは心配じゃないの? 


「んー、心配は依然として心配ですが、あの映像を見てどうこうはないですね。十中八九、あの映像は作り物ですから」

(え、そうなの? 宇宙船墜落の時間と場所は嘘っぽかったけど、あの映像も作り物?)

「作り物だぁ〜?」


 少しは落ち着いたのか、アスカは腕で乱暴に血を拭うと、こちらにやってきて椅子に座る。掃除は皆に任せて自分だけこちらに来たようだ。


「根拠は?」

「ユグドたちの証言が主で、残りは勘ですね。ガイアでの自分たちと、〈イヴの欠片〉迫害を経てあのメッセージを記録したのだとしたら、少なくとも『ガイアの人類がすべて敵』みたいな発言はしませんよ」


 ああ、確かに。メッセージにはレイジーちゃんたちのことが一切触れられてなかった。ユグドやセイくん曰く、オスカーさん達が囮になっているうちに彼らはガイアを脱出したらしいし、そのことが触れられてないとおかしいか。


「勘の部分は?」

「正直、納得してもらうには難しいんですけど、メッセージの弱々しさがですね、らしくないと思いまして」

(そうなの? 切羽詰まっている感じがして、いかにもピンチって様子がひしひしと伝わってきたけど)

「だからですよ。逆境大好き、反骨心に手足が生えたような人間が、父さんなんです。ピンチになればなるほど笑いこそすれ、あんな泣きそうなメッセージを残すとは思えないんですよね……」


 ふうん。俺はオスカーさんのことよく知らないけど、身近な人からすると違和感を感じるのか。

 クリスくん同様、軍所属時代にオスカーさんと知りあっていたベータさんも「同感だ」と言っていたし、ガイアで一時は一緒に居たというセイくんもこのメッセージに心当たりは無いらしい。


(だから作り物と)

「そういうことです」

「くそ、嘘ばっかりのニュースをもっともらしく報道しやがって」

「一部が事実だけに、否定するのも面倒ですね」


 アスカは椅子の袖を乱暴に叩き、一方でクリスくんはため息をつく。


(結局、何が事実で何が嘘なんだ?)


 ちょっと混乱してきたぞ。


「帝国も馬鹿ではないでしょう。調べて分かる部分は事実のはずです」

「逆に言うと、調べてもすぐに分からない部分は嘘の可能性が高いな。とすると、帝国の報道で事実だったのは、皇帝の死亡と、消息不明になった皇女と、帰還したテラ・マーテル号の発見と、正体不明の宇宙船の存在の4つか」

「で、その詳細については事実虚実が入り乱れていると……」


 そう言うと、二人は「うーん」と悩ましげに首を捻る。


「ただ、間違いなくカミエル皇子――おっと、いまはカミエル陛下だったか――が、ヴェルニカ襲撃の犯人一派だな」

「そうですね。それは確定でしょう」

 

 詳細は違えど、テラ・マーテル号の帰還の発表をしてたもんね。それは俺も思った。


「ということは、少なくとも今の帝国のトップはこちらの敵っつーことだな……。元皇帝の死亡と皇女の誘拐は、カミエル陛下の仕業か?」

「あるいは第三者の手によるものか。記者会見で、『帰還したテラ・マーテル号にガイアの人間が乗っていた可能性はありますか?』とか『皇帝と皇女の件は、その人間の仕業という可能性はありますか?』という質問が出てましたね。なかなか面白い質問だと思いましたよ。それが的を得ているのか、それともカミエル陛下によるガイアの人間に敵意を向けるための仕込みかは分かりませんが」

「……そのへんはこっちでも調べる必要がありそうだな」


 ちらとアスカがベータさんに目配せする。彼は気だるげながらも了解とばかりに手を振っていた。 


(的を得ているっていうのは?)

「まだ見つかってない〈イヴの欠片〉が皇帝とソフィアの件に関わってるかもしれないと思いましてね」


 ああ、なるほどね。

 ちなみに、その記者会見中にはクリスくんの名前も挙げられていた。タカヤナギ教授とクリスくんの事件も、その人間が関わっているのかという質問である。もっとも、時系列が合わないからとすぐに否定されていたが。


「ところがどっこい、それは真実だからな……」

「時系列が違うだけですからね……」


 二人はちらとレイジーちゃんの方を見る。レイジーちゃんは話が難しくなってきたあたりで理解することを諦めたらしく、二人の視線に首を傾げていた。


「で、後は正体不明の宇宙船のことだが……。どうなんだセイ?」


 アスカはそう言って、セイくんの方を見る。この場にいる〈イヴの欠片〉はレイジーちゃんとセイくんだけで、レイジーちゃんの記憶はまだ戻らない(オスカーさんの映像にも無反応であった)ので、彼に聞くしかないのだ。


「分かりません……。僕らの星に宇宙船があるなんて知りませんでしたし」

「何だ、科学は発達してなかったのか?」

「少なくともテラ(この星)よりかは全然ですね」


 そう言ってセイくんは首を振る。


「……まあ、この際、セイたちが居たときに宇宙船があったか否かは置いておきましょう。現に、テラとガイアをつなぐ航路に観測されているんですから」

「そうだな。記録映像のメッセージとなぜか一致していたが、ガイアの王様一派の連中は、テラの人類に敵愾心を抱いているんだろ? 当然、〈イヴの欠片〉のことも狙っているだろうし……。そいつらが乗っていると仮定した場合、俺たちで無力化できるレベルの相手か?」

「え、それは誰が乗ってるとか、どれだけ乗ってるかにもよると思いますけど……」


 と、セイくんは首を捻る。


「とりあえず、有り得そうな最悪でいいよ。細かい話は後回しだ」

「公式発表の宇宙船の大きさが正しいとするなら……、乗っていても数十人規模でしょう。それだけの『先祖返り』が居るとしたら……うーん、ギリギリですかね」


 自分たちの戦力と敵方の戦力をざっくり比較したクリスがそう零すと、おずおずといった様子でセイくんが答えた。


「えっと、『最悪』を考えるんですよね」

「そうだな」

「なら、――四人です」

「四人?」

「ええ。僕らを追い詰めて来た連中に、四人、強い人達が居たんですけど、彼らのうち一人でもあの船に乗っていたら、リズとリラも含めて、僕らは誰も太刀打ちできません」


 セイくんの言葉に部屋が静まりかえる。


「少なくとも、全滅です」

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