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異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する  作者: 珉珉×打破
第1章 働かなくてもいい世界 〜 it's a small fairy world 〜
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死神さんと3人目

 どうしよう、重大な事実に気づいてしまった。


(セミルさん、あの〜、つかぬ事をお聞きしますが、今この世界には何人くらいニンゲンが住んでるんですかね?)

「どうしたの急に改まっちゃって。正確な数字は知らないけど、1000人から2000人位かな」

(……ホントの、ホントに?)

「? 何で嘘つく必要があるのよ。マダムもそれくらいって言ってたし、前に世界中を見て回ったけどそれぐらいの数だと思うけど。ほとんどのムラには行ったことあるから。それぞれ平均して4,50人くらいで、ムラの数は20箇所。あとは疎らに住んでて……。うん、やっぱりそれくらいじゃないの?」

(世界中って、世界の外側には?)

「何よ、外側って。宇宙のこと? 宇宙のことまでは知らないわよ、行ったことないし」

(海の中には……)

「濁ってて視界が悪いから分からないけど、そんな物好きは知らない」

(本当に2000人? 少なくない?)

「そりゃあ、悪霊さんの世界に比べたら少ないよ。でも、なかなか新しいニンゲンが生まれないんだもん。しょうがないじゃん」


 さいですか……。あー、マジか。やっぱりそれくらいの数しか居ないのか。


 セミルとユリカの会話から、この世界のほとんどのニンゲンが一度はコロシアムに参加したことがあると思っていた。そして、今までにコロシアムの歴代の記録が残っており、その最下位が1000位くらいということを聞いた。すなわち、この世界のニンゲンの数もせいぜいがその程度のオーダーでしかないということだ。


 そして、その人数は友達100人集めるためには、極めて少ないということ。どうしよう……、ミッション達成が何年後になるか検討もつかない。今のペースで友達を増やせても、せいぜい4,50人で頭打ちだ。それでこの世界のすべての住人に声を掛け終えてしまう。その先は、新しく生まれるヒトと意思疎通ができることを祈るしか無い。


(ちなみに、新しいニンゲンって、年間どのくらい生まれるんだ?)

「年間も何も、そこまで多くないよ。だいたい数年に1人とか、そんなレベルかな」


 なにそのレベル! 美少女の修飾語かよ! 気長すぎるわ! 寿命ないからって、よく絶滅しないなここのニンゲン達……。

 

 そのペースで人口が増えて、なおかつ俺と友達になれるのはは50人に1人だとして、およそ200年に一人友達が増えるので……。


 なんとびっくり。ミッション達成には1万年かかることが分かった。


(絶望した!)

「ひえ! 急に叫ばないでよ、びっくりしたなぁ。さっきからどうしちゃったの? 調子悪い?」

(そんなもん、この異世界に転生(仮)してからずーと悪いわ! 体も無いしな!)

「じゃあ、いつも通りじゃん」

(そうだけど、そうだけども。あのs)


 あの死神が要求したミッションの難度がクソすぎ、とセミルに言おうとして俺は気づいた。


 俺の方を見るセミルの肩越しに、なんと、あの死神さんが、ニコニコとこちらを見ていることに……!


『……バラしたらポアですよ(本当の意味で)』


 ひえ! 耳(無いけど)元で死神さんの声がする。怖い怖い、あのひとめっちゃ怖い! い、言いません!言いませんから、どうか命だけはお助けをー!


『もう死んでるじゃないですか。安心して下さい。輪廻転生するだけですから。怖くない……怖くないですよー。ちょーっとチクってするだけですよー。あっと言う間に、あなたはミジンコですよー』


 ミッション頑張りますから、頑張りますからー!


『では、よろしくおねがいしますね。くれぐれもご内密に。それではー』


 そう言って、死神さんは消えてしまった。び、びっくりしたー。こんなタイミングで死神さんが現れるとは思ってなかった。俺のこと見張ってるんじゃないだろうか。


「あのし?」

(あ、いや、そのなんだ。……あの白髪のおじさんが気になってな)

「白髪のおじさん?」


 俺はなんとか話を誤魔化す。セミルの後ろ、死神さんが居た側には白髪のおじさんが居た。白髪のおじさんは塀から身を乗り出して、喰い入るように舞台を見ている。


「ああ、バイダルさんね」

(知り合い?)

「うん。ちょうどいいや。バイダルさーん!ちょっとー!」


 セミルは白髪のバイダルさんに手を振る。彼は、好色を浮かべてこちらに来た。間近で見ると、かなり大きい。テツジンに負けないかそれ以上の大男だ。


「これは、セミル殿。お久しぶりです。何年ぶりですかね。久しぶりに参戦ですかな?」

「いや、今日は見物。最近どう? いい闘いとかあった?」

「いやあ、ここ数年、あまり面白いのはありませんなぁ。せいぜいが、30位台のランク争いでしょうか。それ以上のイベントは起きてませんな」


 二人は挨拶を交わして、世間話に興ずる。


(バイダルさんはコロシアムについて詳しいんだな)

「そうだよ。彼は実質、ここの支配人なんだ。一番コロシアムに詳しいといっても過言じゃない」

「はっはっは、それほどでも」

(しかも、けっこう強いんじゃないか?)

「そうだね。たしか、ランキング10位だったっけ?」

「ええ、そうです」

(え、それはかなりすごいんじゃないか。歴代の10位なんでしょ?)

「ふふ、照れますなぁ」


 バイダルはその巨躯に似合わず、恥ずかしそうに頭を掻きながら、あたりをキョロキョロと見回す。その物腰とバーの制服のような格好も相まって、紳士のような印象を受けた。


(じゃあもう、今は敵ナシなんじゃないですか……?)

「いやいや、まだまだご顕在の強者も何人かおりましてなぁ。せめてその方たちとまともに戦えるレベルに精進したいと考えておりますよ」

(そうかー。その闘いはぜひ観たいなー)

「あれ? ちょっと、悪霊さん。悪霊さん」

(ん? セミルどうした?)

「是非ご覧ください。……ほうほう、悪霊殿と申すのですな。……して、セミル殿。彼はいったいどこにいらっしゃるので……? 先程から声はすれども姿は見せず……。この私に気配すら悟らせないとは、よほどの達人なのでしょう……! いやぁ滾りますなぁ!」


 ビシィ、と音がした。何かとおもったらバイダルさんのシャツのボタンが、彼の溢れる筋肉によって弾け飛んでいた。


「おっと、これは失敬」

「このヒト、あなたの声が聞こえるみたい」

(え?)

「ぬ?」


 言われてみれば確かにそうだ。さっきから普通に意思疎通ができている。

 よし! これで3人目の友達だ! 絶対にゲットしてやるぜ! 

 でも、その前に一つお約束の確認をしなければ。


(えー、こほん。バイダルさん)

「ふむ、なんでしょう」

(誠に失礼ながら……。おパンツ見せていただいても、よろしいですか?)

「……」

(……)

「……宣戦布告と受け取っても?」


 ビシビシビシィ! 


 あ、ファーストコンタクト、ミスった。

ブックマークありがとうございます。

操作ミスだったとしても嬉しいです。

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