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異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する  作者: 珉珉×打破
第2章 恋のキューピッド大作戦 〜 Shape of Our Heart 〜
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剣神と闘神と創造神も降臨

BM登録ありがとうございます。

 死神さんの上司さんの肩書は課長らしい。


(ちなみに課長ってどれくらい偉いの)

「真ん中くらいですかね。主任の上、部長の下です」


 つまりは中間管理職か。死神さんの会社の中間管理職は時間停止ができるのか。すごいな。部長や社長なら何ができるんだろう。死神さん知ってます?


「さあ、会ったこと無いので分かりません」


 首を振る死神さん。

 残念、死神さんも知らないのか。おそらく運命操作とか世界創造とかそういうレベルなんだろうなきっと。


「さて、それでは話を聞かせてもらいましょうか。そこの……すみません、名前を伺っても?」

「コンちゃんじゃ」

「ありがとうございます。素敵な名前ですね、コンちゃんさん」


 上司さんは柔和な笑みを浮かべる。イケメンスマイルである。対するコンちゃんはそんなイケメンにメロメロ……というわけではなく、なんかすごい変顔をしていた。目を細めて、眉根を寄せて、唇を真一文字に結んでいる。なんだその表情は。


「……なんか、さっきの悪霊とは別の意味で怖気が走るの。お主は嫌じゃ。儂はお主と話したくない」


 ぷいっとそっぽを向くコンちゃん。いったいどうしちゃったのだろう。俺は彼女の元へとスススと近づく。


(どうしたの、コンちゃん。上司さんの顔がタイプじゃなかったの?)

「いや、顔はどうでもいいのじゃ。けれど、何と言ったらいいのかの。あいつ、絶対儂より頭いいじゃろ?」

(そうなの?)

「さあ、どうでしょう」


 イケメンスマイルを崩さずにかぶりを振る上司さん。


「ほら、否定しないところがナルシスト剥き出しじゃ。こういうやつは口も回る。なあ、悪霊。お主が家で留守番していて、営業スマイルを浮かべたペラペラと口の回りそうなサラリーマンが来たら家に上げるか?」

(絶対に上げない)


 そんなもん、居留守を使うに決まっているだろう。


「じゃろう。今、儂そんな気分。あいつと会話なんかしていたら、必要もない英会話セットや全32巻のブリタニカ百科事典なんぞを買わされるに決まっとるわ!」


 なるほど、それでその変顔か。それにしても随分と具体的な商品名が出てきたな。どうしてそんなことに詳しいのだろう。あと、ブリタニカ百科事典はけっこう面白いよ。暇つぶしに最適。


「おやおや、これは手厳しいですねぇ」

 

 ちょっと困ったような表情を浮かべつつも上司さんはあまり動じていないご様子。コンちゃんの態度を歯牙にもかけていない。


「というわけで、お主は帰れ。儂はこっちの死神に用があるのじゃ」


 しっしと手を振るコンちゃん。いいのかな、そんな不遜な態度を取って。上司さんの様子を見るに、死神さんと違ってポンコツっぷりは期待できないんだけど。


「ん? 死神がポンコツ……?」


 俺の心の声で死神さんのポンコツっぷりを察知したのか、上司さんはギロリと彼女を睨む。


「わー! こ、こら、悪霊さん! 何考えてるんですか! 心を無にしてください、無に!」

(ぐ、ぐぇ。そんな急に言われても……)


 死神さんはダッシュでこちらに詰め寄り俺の身体を圧迫する。心なしか息が苦しい。


「……まあ、それはこちらも把握していたのであまり驚きはしませんが……」


 ついと、上司さんは死神さんから視線を外した。そうか、新神さんのポンコツっぷりは上司公認のものだったのか。


「……セーフ」

(セーフかな?)


 ふうっと胸を撫で下ろす死神さん。それでいいのか。ばっちり上司に把握されていたが。評価とか大丈夫?


「うーん、困りましたね。正直、死神にあなたの相手は荷が勝ちすぎていると思うんですよ。なんとか私と話をしてもらえませんかね」

「い・や・じゃ」


 下手に出る上司さんにベーと舌を突き出すコンちゃん。うーん、あんまり怒らせないほうがいいんじゃないかな。


「そうですか、では仕方ない。あまり乱暴な手は使いたくなかったんですが……」


 そう言って上司さんは片手を上げる。


「力づくても交渉のテーブルに着いてもらいましょうか」


 柔和な笑みを崩さず、上司さんは不穏当な言葉を口にする。

 次の瞬間、時間停止されたはずのこの世界の空より、新たに三つの影ーーいや、三人の人物が降ってきた。ゆるりと降下してきた上司さんとは違い、気づいたらそこに居たと思うほどの落下を越えた速度で彼ら集結する。そんな猛スピードでやって来たにも関わらず、時間停止の影響かいっさい音がしなかった。


「おーい、課長、来てやったぜ」

「……」

「ふわ、なんで私まで……」


 三人の第一印象は、それぞれやんちゃな好青年、無骨な大男、眠そうなメガネ女性であった。彼らは上司さんと同様、その背に一翼の翼が生えている。腕輪にマント、鎧にブーツ、ヘアバンドにピアスなど、不可思議な文様に彩られたゴテゴテの装飾品を全員が身につけている。大男に至っては顔すら鎧に覆われて見えない。体格で男と判断したのだが、もしかすると大女かもしれない。


「剣神さん! 闘神さん! それに創造神さん! どうしてここに!? それに、みんな、全装備(フルカスタム)どころか神器まで……」


 死神さんが彼らの名を呼ぶ。どうやら顔見知りらしいのだが、剣神に闘神に、創造神!? おいおいおい、上司さん、なんかすごい神様ばっかし応援に呼んでるぞ。大丈夫なのか、これ!?


「まあ、大丈夫では無いでしょうが、それもまた交渉のためなら仕方のないことです。悪霊さん、すべての理性ある暴力は話し合い(テーブルマナー)を行う手段に過ぎないのですよ」


 相変わらずニコニコしながら上司さんは言う。そんな危なっかしいテーブルマナー俺は知らない。


「おう、死神か。課長がボーナスくれるっていうからな、来たぞ」


 剣神さんは快活に笑いながら死神さんの質問に答える。

 ボーナスって……。見た目すごい神様っぽいけど、それでも死神さんと同じく社会人なんだね。行動原理は金なんだ。


「……」

「私はようやく眠りにつけそうなところを起こされた……。■■■■。後で奢りな」


 眠そうな創造神さんは上司さんにタメ口をきいている。彼より高い地位にいるのだろうか。あと闘神さんには是非とも喋ってもらいたい。性別が気になる。


「それはもちろん。さて、コンちゃんさん。これでも大人しく話をしてくださいませんかね」


 上司さんだけでなく、新たに加わった三柱の神格がコンちゃんを見据える。直接対峙していない俺でさえ、かなりのプレッシャーを感じていた。コンちゃんの感じる圧力は俺の比ではないはずだ。


「ふーん、嫌じゃと言うとるじゃろ。まったく話が通じんのぉ」


 それでもコンちゃんは態度を変えない。そんな彼女の様子を見て、上司さんはため息をつく。


「やれやれ、仕方ありませんね。死神、悪霊さんを連れて安全なところーーそうですね、ここが見えなくなるまで離れなさい」

「は、はい。分かりました! 課長や皆さんは……」

「心配は無用です。少々、社会常識をティーチングするだけですよ。たとえどれだけ嫌いな相手でも、話し合いの場にはつかなければならないと!」


 あ、ようやく上司さんの表情から笑みが消えた。と思う間もなく、死神さんに引っ張られた影響で俺の視界は定かではなくなる。


「悪霊さん! この場から離れますよ! 巻き込まれます!」

(あ、ちょ、死神さん加速しすぎ! Gがやばい!)


 身体がすごい引っ張られている気がする。その状態は数秒で終わったが、ブレーキの際には逆方向に加速度が働く。バネみたいな気分を味わったあと、俺の身体はようやく止まった。


「ここまで来れば……」


 死神さんは上司の指示通り元の場所が見えなくなるまで離れたらしい。俺達はバラクラードの街を離れ、荒野の丘の上に移動していた。慌てて俺は移動してきた方を振り返る。


(嘘だろ……)


 いびつな画像処理を施したかのごとく、バラクラードの街が、空と大地ごと綺麗に斜めに切断されていた。

悪(剣神と闘神と創造神……。死神さん、上司はどんな神様なんですか?)

死「え? 課長は課長ですよ」

悪(え? 神様じゃないの)

死「ですから、課長です。あるいは■■■■さん」

悪(……知らないんですか?)

死「あ、怒ると怖い神様です」

悪(知らないんですね)

死「知らないというか、聞いても『課長と呼べ』としか言わないんですよ」

悪(なんですか、それ。本当に神様なんですか?)

死「それは間違いないです。うーん、課長、神様……。課長、神様……。課長神(かちょうしん)?」

悪(すごいのかすごくないのかよく分からない神様が生まれましたね)

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