パターンA
後半スタートです。
ふと視線を向けると、クリスは床に倒れる直前だった。
ぷつんと糸が切れたように、クリスの身体は崩れ落ちる。
ぱっぱ。 ぱっぱっぱ。
雨粒のように、血液が飛び散った。
血。 血が。
クリスの頭から、血が 溢れて止まらない。
「クリス……?」
自分の口から、信じられないほどか細い声が出た。
力が。 力が入らない。
転がるように、クリスの傍に駆け寄る。
赤い水が床に広がる。
そっと、彼の身体に触る。
まだ暖かい、まだ生きている。
まだ、彼は助けられる。
「ク……」
見開いたままの彼の眼は、
光を失ったクリスの眼は、
もはや私を映していなかった。
人形のように 人形のように。
命を失った、唯物のように。
一、二、三。
三秒沈黙。
動かない。不動。 動かない。
まだ、クリスは助けられる。
まだ、クリスを助けられる?
きっと、多分。 だから、 まだーー
視界が歪む。
涙が滲む。
涙が溢れて止まらない。
光がぼやけてクリスの姿が見えなくなる。
悪霊さんのように、彼の姿が見えなくなる。
幽霊、死んだ人、死ぬ。死死死。
悪霊さん、悪霊さん。
窓の外。
「悪霊さん、クリスが……」
瞬間、額に衝撃が来た。
わけもわからず振り回される。
ドッと、何かが落ちた。
そんな音がした、気がする。
目の前に、クリスの頭があった。
不動。
血。 血が。 赤い。
クリスの髪が。 黒い。
染まって。。
……。
……。
。。。
意識が遠のく、 前に バキリ と。
噛み締めた衝撃で歯が割れた。唇も裂けた。
瞬く間に修復される。
私の身体だったら、すぐに回復する。なのにーー
クリスは 不動。
クリスは 唯物。
クリスはクリスはクリスはクリスはクリスはクリスクリスクリスクリスクリスクリスクリスクリス。
「ふ」
と。
クリスの口から吐息が漏れた。
細い、細い空気だ。
生きてる? 生きてる。 生きてる!
まだ、クリスは助けられる!
守ると決めた。
守ると約束した。
守ると誓った。
何をおいても、この身に代えても
この身に変えても
この身に換えても
だから
「私が クリスを 守る」
優しく 私は彼の頭を抱きしめた。




