体育でバスケ
ちくしょう。踏んだり蹴ったりだな。ラッキースケべには出くわしたが。
ちなみにリリスの着替えを目撃した後は事情を説明したことでなんとか許してもらうことができた。一時は、「覗き野郎と一緒に組めない!」とまで言われた。
俺は教室に戻り、昨日ネームを描いたノートを取り出した。少しは続きを書いておこう。ちなみに昼食は食べていない。というか仕送りを止められたので食べれない。そのうち何かバイトでもしないとやばい。
お腹の虫はなるものの、ひたすらに耐えてネームを考えた。
すると、突然一人の女子生徒が近づいてきた。
「鍵村くん、今日何か顔腫らしていたけど何かあったの?」
この女子生徒は今泉遼子。クラス委員長をしている。青く透き通った髪と整った顔立ちをしており、男子生徒から人気がある。
また、俺のようなスクールカーストの下の生徒にも話しかけてくれる俺よりも天使らしい人間である。
「あー、ちょっと妹と喧嘩してな……」
「鍵村くん。妹さんがいるんだ。何したの?」
「ちょっと、妹のプリンを勝手に食べちゃったんだ」
「なるほどねぇ。確かに食べ物の恨みは恐ろしいって言うからね」
やっぱりそうなのか。下界では人の食べ物を勝手に食べようとものなら暴力に訴えかけるのだろうか。恐ろしき人間。やはり滅ぼすべきではなかろうか。
「けどまぁ、ぶつのはちょっとやりすぎかもね。まだ腫れ引いてないね」
今泉はリリスがぶった俺の頰を優しく撫でてきた。あかん……女性に顔を撫でられるとか初めての経験なんだが。俺は思わずドキドキした。
「だ、だよなー! 本当ひどいんだ。妹のやつ」
「まぁ、でもちゃんと謝って仲直りしたほうがいいよ?」
仲直りか。リリスは一応は俺の謝罪を受け入れてはくれたものの、もう一回謝ったほうがいいかもな。
「ああそうするよ!」
「うん! 頑張ってね。それじゃ」
今泉は自分の席に戻っていった。大してネームは進まないまま昼休みが終了した。
午後の授業は、数学と古文というくそつまらない科目なためばれない程度に居眠りをして体力の回復に努めることにした。
今日の最後の授業は体育でバスケットボールをやることになった。バスケかぁ。去年、去年の授業でやったきりだな。うまくできるだろうか。まぁ、適当に突っ立っていたら何とかなるだろう。
「よーし、それじゃチーム分けするぞ!」
熱血系体育教師がそういった。チーム分けはよくある一人づつ順番に番号を言っていき、番号ごとにチームを分けるという古典的なものである。
俺はチーム三になった。まぁ、なんでもいいか。俺はチーム三のところに集まった。
「鍵村くん、同じチームなんだ! よろしくね!」
チーム三には今泉も一緒にいた。
「あ、ああ。よろしく頼む」
バスケでは男女混合で試合を行う。時間は五分ずつ第四クォーターまで行われる。今泉は半袖を着ているのだが、結構胸のラインが浮き出ている。中々大きい。さすがにリリスほどではなさそうだが。俺は今朝のラッキースケベを思い出していた。
「よーし、試合運びは任せな。お前ら! 足引っ張るなよ」
同じチームの小柄な色黒のバスケ部員がイキリだした。
いるよな。体育でマウントを取るやつ。こういうやつに限って部内では浮いていることが多いんだ。
ちなみに同じチームの残りの二人はぽっちゃりした体型の女子生徒とひょろひょろした痩せ型の文化部に所属している男子生徒である。
このバスケ部野郎以外で戦力になりそうなのは今泉くらいか。
「よーし! 早速、試合を始めるぞ! チーム一と二はこっちのコートで! チーム三とチーム四は向こうのコートで試合を始めるように!」
俺たちはセンターライン付近に集まった。いやぁ、面倒くせぇな。体育。
ジャンプボールはうちのチームはひょろひょろした痩せ型の文化部の男(面倒くさいのでこれからは略してヒョロ男と呼ぶことにする)が担当した。
ヒョロ男は身長は自信が圧倒的に勝っているにも関わらず驚異的なジャンプ力のなさにより、ジャンプボールはあっさりと負けた。
最初の攻撃は相手チームからになった。
「ディフェンス! お前ら腰を落とせ!」
バスケ部野郎は俺たちに偉そうに指示出しをした。何やら「ハンズアップ! ハンズアップ!」と叫んでいる。
ハンズアップ? とりあえず手をあげればいいのだろうか。
「ああ!」
あっさりとぽっちゃり体型の女子生徒(ここからはポチャ美と呼ぶことにする)があっさりと抜かれてしまった。
「馬鹿野郎! 何をしてるんだ!」
バスケ部野郎はヘルプで抜いてきた選手をケアしようとしたが、絶妙なパスが出された。バスケ部野郎が元々マークしていた選手がナイスパスを受け取り、華麗にシュートを決めた。
早速、先取点を決められてしまった。
「何あっさり抜かれてやがるんだ! ちゃんとマークしろ!」
「ご、ごめんなさい……」
ポチャ美はシュンとした。おいおい、ちょっと言い過ぎじゃねぇか。