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いっけなーい! 遅刻遅刻!

 だがそんなことよりも今はネーム作りに集中だ。絶対に売れっ子漫画家になり、一発当ててやる。

 漫画家に必要なのは「うむぼれ」、「努力」そして「運」だったか。一番俺にたりていないのは間違いなく努力だろう。今までの人生、いや天使だから天生か。俺は自堕落な生活を送ってきた。だから、面白い話を作るために努力をする必要がある。

 運はおそらく持っているだろう。あんな素晴らしい画力の持ち主と出会うことができたのだから。親父にギャルゲしてるのがバレたのはまぁあれだが。

 まずは冒頭部分、ここをどうするかが問題である。世界観の説明をナレーションを使って説明する? いや、ここはいっそのこときなり人工知能が人間に襲いかかってくるところから始めた方が迫力がでるだろうか。クライマックスは? 大ゴマはどう使うか? 主人公が人工知能に挑むところに大きくバンと大ゴマを活用すべきか。

 考えれば考えるほど難しさを感じた。世のクリエイターはこうやって試行錯誤しながら物語を作り上げているのだなぁとしみじみと思った。

 それと同時に面白さも感じた。ゼロから何かを生み出そうとする行為。こんなこと今まで感じたことがなかった。

 一消費者として、ゲームをプレイしたり、漫画を読んだりするのはもちろん面白かった。あの時間は、嫌なことを忘れることができた。だが、クリエイター側に立って何かを作ろうとするのは、それ以上に面白いのかもしれない。

 俺は再び漫画を読んだ。やはり、新キャラ登場シーンに大ゴマを使い、戦闘シーンには疾走感のあるコマ割りができるように心がけよう。

 それと、冒頭はナレーションを活用しつつ、リリスの絵を活かせるような描写も取り入れてと。

 そうこうしているうちに時間が過ぎていった。少しづつ、少しづつだがネームが出来上がっていった。

 俺はいつの間にか机に突っ伏して寝ていた。どうやら寝落ちしていたようである。気がつくと俺の方には毛布がかかっていた。リリスがかけておいてくれたのか。

 リリスが机でコーヒーをすすりながら作業をしていた。

「あーリリス?」

 話しかけるとリリスは俺の方を振り向いた。

「カギエル起きたんだおはよう」

「おはよう」

 俺は椅子から立ち上がった。腰からは鈍い痛みがした。

「トイレ借りてもいいか?」

「あいよー。ここ出てすぐ右だから」

 俺はリビングから出て、トイレへと向かった。頭がクラクラとする。

 リビングに戻り、俺は自分のスマホを確認した。時刻は七時半だった。

「やべぇ! もうこんな時間か!」

「あー。そういえば学校なんだっけ」

 学校は八時から始まる。一度、自宅に戻り荷物を取りに行かなければならない。

「リリス。今日も作業したいんだが、何時ころお前の家にこればいい?」

「今日のバイト夕方の五時には終わると思うからそれ以降ならいいよ」

「分かった! 学校でも休み時間にネーム描いておくから。それじゃ!」

 俺はリリスの家を飛び出し、急いで自分の家に戻った。急いで制服に着替え、学校に向かった。

「遅刻する!」

 全速力で道を走り抜ける。しかし、時間は無慈悲にもどんどん進んで行く。うちの担任の先生は遅刻には厳しい。遅れれば反省文を書かせれる羽目になるだろう。

 先週も遅刻し、びっしりと反省文を書かされたので、なんとか避けたい。

 俺はスマホを取り出し、時刻を確認した。

 七時五十三分。ギリギリ間に合うかどうかの際どい時間である。よし、ここは天使の力を使うか。

 天使の力は下界では。必要な時以外は使ってはいけないと定められている。困っている人を助けるときなど、しかし俺はすでに神ことあのクソ親父に捨てられた身である。使っても大丈夫だろう。

 あたりに人がいないことを確認し、俺は呪文を唱えた。

「ワープ!」

 ワープとは文字通り瞬間移動の魔法。この魔法であっという間に学校に到着し……

「へ?」

 なんと目の前に着替えをしているリリスが俺の視界に映った。リリスは今まさに白いブラジャーを外そうとしていた。ギャルゲに出てくるような巨乳キャラのような豊満な胸が今にも露になりそうであった。

 いやー、どうやらワープ失敗のようだ。いやぁ、失敗。おっぱい。まぁ、成功率は七割とポ◯モンなら結構失敗するしな!

「うわぁぁぁぁ!」

 リリスが叫びそして、

『バチーン』

 と鈍い音が部屋に鳴り響いた。

そんなわけで俺はしっかりと遅刻し、お昼休み職員室に呼び出された。

「お疲れ様です。先生」

 先生の机に赴き、挨拶すると先生はこちらの方をみた。

「お疲れ。鍵村」

 裏がありそうな笑顔で微笑みながら俺の方を先生は見つめた。ちなみに俺は下界では鍵村絵留かぎむらえるという名前で生活をしている。

「今日も遅刻と思ったんだけど、お前の顔の手の跡が気になってな。何かあったのか?」

 先生は俺に顔を近づけてきた。女性らしい甘い香りが俺の鼻腔をくすぐった。

 この先生の名前は小岩井亜紀こいわいあきという。今年から俺が通っている都立布都雨高校にやってきた。長い黒髪で中々、美しい女性で大人の魅力に溢れているが独身という噂である。

 年は分からないが俺の見立てでは恐らくアラサーだと思う。

「鍵村。今お前、失礼なこと考えなかったか?」

 俺はドキッとした。

「そ、そんなことありません!」

 すげえな。エスパーかよ。人間の分際で読心術が?

「そうか。なら良い。とりあえず、お前に何かあったか聞いておこうと思ってな」

 うーん、なんて言っておけばいいのだろうか。

「じ、実は今日、朝から妹と喧嘩しまして……妹にぶたれてんです」

 適当に顔に手の跡が付いている理由をでっち上げた。ちなみに妹がいることは本当である。妹は俺とは一緒に暮らしていないのだが。

「そうか。妹さんと喧嘩したのか。何をやらかしたんだ?」

「妹めっちゃ性格悪くてですね! プリンを食べただけで激怒したんですよ!」

 これは以前、実際にあった体験談である。あの野郎は本当に手が早い。まるで悪魔のような妹である。いや、本当に悪魔だけども。

「なるほど。それはお前が悪いな。食べ物の恨みは恐ろしいからな。ちゃんと妹さんに謝罪しておけよ」

 先生は妹の味方らしい。やれやれだ。たかがプリン一個で……

「まぁ、今日は不幸に免じて、反省文は前回の半分の文字数にしてやろう」

「やっぱり反省文は書かないといけないんですね……」

「当然だろ。なるべく早くでかしておけよ」

 俺は先生から反省文を書くための用紙を渡された。

 気が重いせいか用紙は鉛のように重く感じた。

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