表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/46

プロローグ「追放」

「駄目じゃったな」


 力を使いはたして身動き一つとれない僕の頭上から、容赦ない言葉が浴びせかけられた。

「心苦しいが、これも里の掟だからなア」


 字面とは裏腹の、むしろ嬉しそうな声が僕の右から聞こえる。


「だっせー」


 僕より一回りは小さい、小さな子供すら僕を罵っている。

 僕の周囲を村人が取り囲んでいた。僕を心配して集まったのではなく、今日のこの日に笑い物にするためにやってきたのだ。

 村と言うのは閉鎖的な空間だ。

 村の掟を順守し、他の村人に従順な人間は暖かに、穏やかに接する。だが村の掟を守らない、守れない者には徹底して排他的だ。

 たとえ個人的に同情していても、村の空気を読んで表面上は周囲と同じように排他的に接する。

 それが続いていくとやがて排他的に接する方が自分の本心だったと錯覚させられてしまう。


「この村では十五歳になる前に」


「自らのパートナーたる精霊を召喚できなかった者は」


 こうして僕を取り囲んで、容赦ない言葉を浴びせている人たちの中にも僕に優しく接してくれた人たちはいっぱいいた。

 それが時がたつとともに一人減り、二人減って。

 今ではもう誰もいない。

 時間はよく人を裏切る。思い出は色褪せ、情報は劣化し、気持ちは曖昧になる。


「「「「「出ていけ」」」」」」

 この日、僕エルンスト・シュトイデは村を出て行かなくてはならなくなった。

 みっともなく地面に伏せ、罵声に囲まれる中で僕はこの日に備えてきた日々が思い出される。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ