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NODUS カルドランドの冒険者  作者: 澁谷晴
クエスト1 影泥棒と異界人
9/17

9 蒸気の向こうに

 警察署前での騒動の結果、死者はなく、最大の被害はイシュメールが破壊したバスと路面だった。

 アリシアは程なくして釈放され、王都へ帰還した。被害者たちはもちろんカトレアによって影を取り戻すことができた。


 無限院のエルフと半月酒場の盗賊が何人か検挙されたが、彼らだけの犯行とは思えなかった。アリシアは影に関連する魔物の討伐という名目で、以前にも何度か外部へ派遣されていたが、それらは別に彼女でなくとも討伐可能なものだった。猟兵社内部にも犯人が潜んでいそうだったが、それは少なくとも今回表立って捜査されることはなかった。

 ともあれ事件は片付いた。


 もちろんこれはモーンブルワークを日々騒がせている事件のひとつに過ぎず、次から次へと新たなものが現れる。


 ルキノは冒険者街から離れて大学近くの学生街、大通りを歩いている。

 少し目を離せば、冒険者たちは街の蒸気に紛れ、彼らが相手取る魔物や怪異とともに、現実から隠れてしまい、存在すらしていないかのように思える。それこそ物語の中の存在のように。


 しかし、彼のそんな錯覚に異を唱えるかのように、どこからか姿の見えない冒険者たちの足音や話し声、剣を抜く音、魔物の叫び声、勝ち鬨が聞こえてくる。


「糧には剣を、勝利には美酒を!」


「その額じゃあ俺たちは動かせないぜ、フェイトを出すつもりがないのなら他所へ行きな……」


「未確認の魔獣が確認された。十人ほど連れて狩って来てくれ」


「護衛の任務だ。明朝までに準備しろ」


「ポーションをもっと用意しなくちゃ」


「あんたみたいな若造が冒険者になろうってのかい、ならまずは実力を見せてもらおうか……」


 それを聞きながら城壁の彼方、エーテルの蒸気の向こうにルキノは何かを見る。そいつはまるで伝承の中にしか出てこない存在、竜のように見えた。目をこらしても次の瞬間にはそいつは見えなくなっている。


 少しばかり立ち尽くしたのち、転生者ルキノ・レオーネは再び、冒険者街へ向かって歩き出した。



   〈クエスト1 影泥棒と異界人 終了〉

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