第一章 新しいメンバーの誕生
旧バージョンで四章まで書いた後に、物語を最初から書き直して、女子中学生を主人公にした学園ものに修正しました。
その理由は、旧バージョンのままでは宇宙人が恐くなく、それを抹殺しても、ぜんぜんスカっとしないという事に気が付いたからです。
それで修正版では、主人公自身が宇宙人の被害に遭うようにしました。
中学の教室で目が覚めたら、なぜか私はノーパンだった。
その日、自分の机に突っ伏して寝ていた私は、なんだかスースーするなあと思ってスカートをめくったら、陰毛が見えたのだ。
その時は驚きのあまり、自分の口から、これまで十四年間生きてきて一度も出した事のない声が出た。
それから、スカートを押さえて、あわてて周りを見回すと、運よく教室には誰もおらず、窓際にある自分の席から夕日が見えたので、今はすでに放課後だという事が分かった。
しかし、それからどうやっても、自分がいつどこでパンツを脱いだのかが全く思い出せない。
でも、学校でノーパンになるなんて、うんこをもらしたくらいしか理由が思いつかないけれど、いくらなんでも十四才にもなって、それはないだろう。
それでは、なぜ私はノーパンなのか?
ところが、それから記憶をたどった私は、昨日の夜に寮の食堂で夕食をすませてから後の出来事を、何も憶えていない事に気が付いて、ぞっとする。
まさか私は、昨日の夜から、ずっとノーパンだったのだろうか?
そう考えると、軽くめまいがした。
だけど今は、こうして考え込んでいる場合ではない。
これから、なんとかして、ノーパンなのを誰にも見られずに、寮の自分の部屋まで帰らなければいけないのだ。
その日の授業に体育があったなら、ジャージに着替えられたんだけど、残念ながら今日はない。
それで私は、覚悟を決めてゆっくりと立ち上がると、片方の手に持ったカバンでおしりを押さえ、もう片方の手でスカートの前を押さえて、静かに歩き出す。
なにしろ、この学校の生徒はみんなスカートを短くしていて、私も周りから浮かないように、そうしていたから、ただ歩くだけでも冷や汗が出る。
それから、誰もいない事を確認して廊下に出ると、階段までたどり着いた私は、下の階から誰かが上がって来る気配がないか耳をすませる。
ところで、もちろん私だって、女に生まれて十四年も生きてきた訳だから、スカートがかなり短くても、普通にしていれば、そう簡単には奥まで見えないのは分かっている。
それに、この学校は全寮制の女子校で、職員も全て女しかいないから、ノーパンでいても性的な犯罪の被害を受ける危険はほとんどない。
だけど、それでも、学校でノーパンなのを誰かに見られてしまったら、その事はあっという間に全校に広まって、みんなから変態だと思われてしまうだろう。
全寮制の女子校で、全校の生徒からそんなふうに思われてしまった者が、その後でどんなふうに扱われるのかなんて、想像しただけでも頭が爆発しそうになる。
だから私は、なんとしてでも、ノーパンなのを誰かに見られるのは避けなければいけないのだ。
それで私は、再び覚悟を決めると、走って一気に階段を下りる。
ところが、つい急ぎすぎた私は、勢い余って、誰かいないか確認しないまま一階の廊下に飛び出してしまう。
すると、その廊下の少し先に二人の生徒がいて、こちらに背中を向けて何やら話し込んでいる。
しかも、その二人がこちらを振り向きそうな気配を見せたので、私はあわてて引き返そうとするものの、階段を上がっている最中に下から見られたら大変なので、階段のすぐ横にあった教室の、少し開いていた扉のすき間に身体をすべり込ませて、目の前にあった先生の机の下に隠れる。
でも私が、そこでカバンを抱えて息をひそめていると、その二人の生徒が教室の後ろの扉を開けて中に入って来るのが、話声で分かる。
どうやら、さっき廊下にいた二人のどちらかが、この教室の生徒だったようだ。
その二人は、長い間、教室の後ろで何やら深刻そうな話をしていたけれど、声をひそめているので、その内容までは分からない。
それで私が、ずっと同じ姿勢でいて痛くなってきた足を、ちょっとずらしたら、床に落ちていた鉛筆に当たってしまい、それが転がって乾いた音を立てる。
「誰?」
その声は、二年生の私より年上のようで、ここは一年生の教室だから、その二人は一年生と三年生だろう。
そして、私が何も答えずにいると、その三年生が問題発言をする。
「そこに隠れているあなた、もしも普通の人間なら、パンツを脱いで、こっちに投げなさい」
? なんて? ? ?
? ? 今、この三年生は、なんて言った? ? ? ? ?
「ねえ、聞こえたでしょう? 早くパンツを脱いで、こっちに投げて」
? なんだ、これは? ? ?
? ? もしかして、これは、いじめの一種だろうか? ? ? ? ?
しかし、まさかこの学校で、こんな変ないじめが行なわれていたとは……。
しかも、よりによって、こんないじめを行う三年生と出会ったのが、たまたまパンツをはいてない今だなんて…………。
……果たして、この三年生は、私がパンツなどはいていませんと言ったら信じるのだろうか?
いや、私がそんな事を言ったら、きっと、はいてないのを見せろと言うだろう。
そして、それを見せてしまったら、明日から私は変態として全校の生徒から、さげすまれる事になってしまう。
そうなるのを避けるために、私はなんとかして、この危機を突破しなければいけないのだ。
だけど、走って逃げたらスカートがめくれて、ノーパンなのが見えてしまうだろうから、それはできない。
それでは、どうすればいいのか?
そうやって私が悩んでいるうちに、その二人が窓側と廊下側の二手に分かれて、教室の後ろから前へと、ゆっくりと近付いて来るのが足音で分かる。
こうなったら、力ずくで突破するしかなさそうだ。
まず一年生の方を動けなくして、それから三年生を倒すのだ。
たぶん、その三年生に逆らえば、明日から面倒な事になるだろうが、それでも、ノーパンなのがバレて、全校の生徒から変態だと思われるよりはマシだ。
私は耳をすませて、その足音から、窓側を近付いて来るのが一年生だろうと推測する。
そして、その日三度目の覚悟を決めた私は、先生の机の下から飛び出すと、一年生がいるはずの窓側へ踏み出す。
ところが、その瞬間に、廊下側の少しだけ開いていた扉が勢いよく開いて、一人の生徒がこの教室に乱入してくる。
その乱入者は、身体が小さいのと制服を着ている事から、ここの生徒なのは分かったけれど、まるで昔の銀行強盗のようにストッキングを頭から被っていて、顔が全く分からない。
でも、それよりも問題なのは、その乱入者が金属バットを持っている事だ。
廊下側にいた三年生の方は、その乱入者に背中を向けていたので、完全に不意を突かれた形になって、その乱入者が振り下ろした金属バットをかろうじて片方の腕で受け止めたものの、鈍い音がして骨が折れた事が分かる。
でも私は、その三年生の腕が折れた事よりも、その乱入者の金属バットが、三年生の頭を狙って振り下ろされた事に衝撃を受ける。
つまり、その乱入者は、その三年生を本気で殺そうとしたのだ。
しかし、それでもその三年生は、片腕が折れた事にも、相手が本気で自分を殺そうとしている事にも全くひるまずに、振り向きざまに回し蹴りを出して、乱入者はそれを避けて廊下へ飛び退く。
すると、この時、その乱入者のスカートがめくれてパンツが見える。
それは、とても中学生がはくとは思えない、かなり布地の少ない真っ黒なビキニパンツで、私はその状況で思わずそれに見入ってしまう。
そして、その瞬間に、さっきまで窓側にいた一年生が私の横をすり抜けて、三年生の横に身体を投げ出すと、床に伏せた状態から、その乱入者の黒いビキニに向けて水鉄砲を撃つ。
? ? なんで、この状況で水鉄砲? ? ? ? ?
だが、その乱入者は、すばやく片手でスカートを押さえて、水鉄砲から発射された液体が自分の黒いビキニにかかるのを防ぐ。
それは、まるで、その黒いビキニに液体がかかったら死んでしまうかのような、真剣な動きだった。
? だけど、その黒いビキニの乱入者も、水鉄砲なんかに、どうしてそんなに真剣に反応するのか? ? ?
そういえば、今、水鉄砲を撃ったその一年生だけでなく、その横に立つ片腕を折られた三年生の方も、もう片方の手には水鉄砲を持っている。
つまり、その二人は水鉄砲を構えた状態で、先生の机の下に隠れていた私に近付いて来ていた訳だ。
? ? でも、パンツを脱ぐ事を要求しながら、水鉄砲で狙うって、いじめとしては独創的すぎるような? ? ? ? ?
私がそんな事を疑問に思っている間に、黒いビキニの乱入者は金属バットを構えなおして、再び教室へ入って来ようとするので、床に伏せていた一年生は、すばやく身体を起こして、三年生と並んで身構える。
ところが、その時、廊下の向こうから、先生らしき大人たちの声が聞こえてくる。
すると、その黒いビキニの乱入者はあわてて金属バットを下ろすと、その声とは反対側へ向かって、廊下を走り去る。
そして、その三年生と一年生は廊下をのぞいて、黒いビキニの乱入者が完全に立ち去った事と、先生らしき大人たちがこちらへは来ない事を確認すると、構えていた水鉄砲を下ろす。
私は、その二人のうちの、髪を左右で三つ編みにした身体の小さい一年生の方に話しかける。
「……ツキヨちゃん、何をしているの?」
その三つ編みの一年生は、ツキヨ(月夜)という名前で、寮では私と同じ部屋の子だったのだ。
ちなみに私は、スミレ(菫)という名前で、髪をストレートのショートにしている。
だけど、いつもは明るく元気なツキヨちゃんは、私の問いかけを完全に無視して、何やら独り言をつぶやく。
「…………先生の机の下に隠れているのがスミレ先輩だと、もっと早く分かったら……」
その言葉に対して、ツキヨちゃんの横にいる、ウェーブがかかったロングヘアで、中学生とは思えないほど巨乳の三年生がなぐさめる。
「すんだ事を悔やんでも、しょうがないわ、ツキヨちゃん」
それから、その巨乳の三年生は振り返って、私を見る。
「……ところでスミレさん、今、ここであった事は忘れてちょうだい。それがあなたのためだから」
そう言われても、さっきまでの出来事の後で、それに素直に従えるはずもなく、私は頭の中にあった疑問の全てを、その三年生にぶちまける。
「え? ちょ、ちょっと待ってください! 先輩は、さっき私にパンツを脱げって言いましたよね? あれはなんですか? ここの生徒のパンツを脱がせて遊んでいるんですか? あと、あの黒いビキニの乱入者、あれは先輩を本気で殺そうとしてましたよ! それって大事件じゃないですか?」
さらに私は続ける。
「それと、なんで先輩もツキヨちゃんも水鉄砲を持っているんですか? しかも、さっき、ツキヨちゃんはあの乱入者がはいている黒いビキニを狙って、その水鉄砲を撃っていましたけど、金属バットを持った相手に何をやっているんですか? 意味が分からないです! あと、二人はその水鉄砲で、私の事も撃つつもりだったんですか? パンツを脱がせて水鉄砲で撃つって、どういうつもりなんですか!」
「……落ち着いて、スミレさん。その質問の答えを知れば、あなたが危険になるわ」
「触らないでください!」
その巨乳の三年生が伸ばした手を振り払った私は、そのままの勢いで、思わず折れた方の腕を叩いてしまう。
「あっ、すみません! ……こんな事、言っている場合じゃありませんでした……。早く医療棟へ行かないと!」
「いいえ、大丈夫よ、スミレさん。医療棟へは私たち二人だけで行くから、スミレさんは早く寮に帰りなさい。ノーパンなのを誰かに見られたら困るでしょう?…………あっ」
その言葉を聞いた瞬間に、私は目を細めて声を低くする。
「…………あら、先輩……なんで私がノーパンだって知っているんですか? ……そういえば先輩もツキヨちゃんも、先生の机の下に隠れているのが誰だか分からない時は、ずいぶん熱心に私のパンツを脱がそうとしていましたけど、それが私だと分かったとたんに、パンツの事はどうでもよくなりましたよね?」
それまでの私は、ノーパンなのを誰にも見られずに寮の部屋へ帰るのを最優先に行動していたけれど、その事を知っている者を見付けた以上、やるべき事は変わってくる。
なぜなら、私がノーパンなのを知っている者は、私のパンツがなくなった理由も知っているはずだからだ。
すると、私のその突っ込みに、ツキヨちゃんも、その巨乳の三年生も、明らかにうろたえだす。
それを見た私は、さらに声を低くして、その巨乳の三年生に聞く。
「…………先輩、私のパンツ、どこへやったんですか?」
「…………な、なんの事を言ってるの? スミレさん……。あ、あなたのパンツの事なんて、わ、私が知るはずが、な、ないでしょう?」
その先輩の、あまりのうろたえ方に、横にいたツキヨちゃんが、ため息をつく。
「……コハク先輩、もうこうなったらスミレ先輩に全てを話すしかないです。こんなふうに中途半端に見聞きしたスミレ先輩を放っておいたら、かえって危険ですから……」
コハクと呼ばれたその巨乳の三年生は、しばらく考えてから、しょうがなさそうに口を開く。
「…………さっきの乱入者は、ビキニ型宇宙人のテロリストに下半身を寄生されて、意識を乗っ取られてしまった生徒よ……。この学校には、地球の侵略をもくろむその宇宙人が何体も侵入していて、何人もの生徒が寄生されてしまったようなの。……そして、スミレさん、あなたも昨日の夜に、その宇宙人に寄生されたのよ」
私は、突然、宇宙人とか言われて、きょとんとしてしまう。
「はい? コハク先輩、何を言っているんですか?」
「……ビキニ型宇宙人に寄生された人間は、その間にあった出来事を記憶できないんだけど……スミレさん、あなた、昨日の夜から、さっきまでの記憶がないでしょう?」
「え? ……な……なんで、そんな事が分かるんですか?」
「私たちは、ビキニ型宇宙人のテロリストを抹殺するための秘密組織、ビキニハンターのメンバーなの。それで、私とツキヨちゃんが持っているこの水鉄砲の中には、その宇宙人を抹殺するための特別な液体が入っているのよ。ただ、この液体は服の上からかけても効果がなくて、宇宙人であるビキニ本体に直接かけないといけないんだけどね……」
それから、その話の続きを、ツキヨちゃんが引き継ぐ。
「だから、昨日、夕食の時間の後で、寮の部屋に帰ってきたスミレ先輩の様子がおかしい事に気が付いた私は、今日の放課後まで待って、周りに人がいなくなってから、コハク先輩といっしょに、スミレ先輩の教室に乗り込んで、寄生していたビキニ型宇宙人を抹殺したんです」
さらに、コハク先輩が、その後を続ける。
「あと、その宇宙人の死体は、放っておくと他の宇宙人に蘇生されてしまうから、必ず回収する必要があるのよ。それで、あなたに寄生していた宇宙人の死体を私が回収したので、あなたは、今、ノーパンなの……。その死体がこれよ」
そう言って、コハク先輩は、制服のポケットから、派手な紫のビキニパンツを取り出す。
「ええ? 私、そんな派手なパンツ、持っていません!」
「もちろん、そうよ。これはあなたのパンツじゃなくて、あなたに無理やり寄生していた宇宙人なんだから。たぶん、あなたがはいていた本物のパンツは、あなたの身体を乗っ取った宇宙人が、ゴミとして捨ててしまったはずよ」
そして、どうやら、それで全ての説明が終わったらしく、ツキヨちゃんが、私に確認する。
「……スミレ先輩、分かってもらえました? さっき、先生の机の下に隠れているのが誰だか分からなかった時に、コハク先輩がパンツを脱ぐ事を要求したのは、それがビキニ型宇宙人に寄生された生徒でない事を確認したかったからなんです。そして、万が一、それが宇宙人に寄生された生徒だった時のために、私もコハク先輩も特別な液体が入ったこの水鉄砲を構えた状態で、そこに近付いた訳です」
その話は、確かにさっきまでの出来事の全てを、ちゃんと論理的に説明できていた。
だけど、そんな突拍子もない話を、すぐに信じるなんて無理だ。
コハク先輩は、そんな私の様子に気が付く。
「スミレさん、今の話、信じてないでしょう?」
「え? いや、信じてないというか、信じられないというか……」
すると、コハク先輩は、持っていた紫のビキニを私に差し出す。
「スミレさん、その宇宙人の死体の匂いを嗅いでみて」
「は?」
「それは普通のパンツとは違う匂いがするから」
「ええ? 私、脱いだ後のパンツの匂いなんて嗅いだ事ありませんから、違いなんて分からないです!」
「いいから嗅いでみて! 地球にない匂いだから、比べなくても、何かが違うって分かるから!」
私は、からかわれているんではと警戒しながら、恐る恐るその紫のビキニの匂いを嗅いでみて驚く。
! なにこれ! ! ! !
! ! こんな匂いは、今まで嗅いだ事がない! ! ! ! !
「どう? 分ったでしょう? そんな匂い、地球にはないわよね?」
「…………はい……確かにこれは、今までに嗅いだ、どんな匂いとも違います……」
「じゃあ、次は自分の陰毛を、手でこすって」
「…………はい?」
「あなたは、さっきまで、その宇宙人に寄生されていたんだから、あなたの陰毛には、その匂いが残っているわ。だから、それをこすった手の匂いを嗅いで確認すれば、自分が寄生されていた事が納得できるはずよ」
「…………いえ、分かりました、コハク先輩……。ちゃんと信じます。……だから、これ以上の確認をする必要はありません……」
「うそ! 本当はまだ百%は信じてないでしょう? ちゃんと確認すれば、納得できるわ! だから、陰毛をこすってみなさい!」
「いえ、もう信じました! 百%、宇宙人はいます! だから、勘弁してください、先輩!」
こうして、ビキニ型宇宙人のテロリストが、地球を侵略しようとしている事を知ってしまった私は、その瞬間から、地球を守る秘密組織であるビキニハンターの、新しいメンバーになってしまったのだ。