第7夜 唯一の解決策
シャドウズ7話目です!
それではどうぞ٩('ω')ﻭ
アイスを買い終えた俺たちは、彩華の待つベンチに向かっていた。
「しっかし……チョコ味が三つもあるだなんて」
「どれが彩華が好きなのか。 選んでたら時間かかっちまったな」
「俺は普通のチョコでいいじゃん――って言ったのに。 お前が『待て、他の生チョコ味とチョコミント味ってのも踏まえて考えよう』とか言い出すから~」
「普通のチョコより、他の方がレア感あったし、彩華も喜ぶかな……って」
「いや、結局普通のチョコ味買ったじゃ~ん!! あの時間意味ねぇって~」
そんな会話をしながら、ベンチに到着してみたが――
「あれ? 彩華ちゃんいない?」
「ホントだ、トイレかな?」
「電話してみようぜ」
俺は快斗と彩華、そして自分の分にのアイスを持つことになり、快斗に電話を任せた。
ドクン……。
横を通り過ぎる車――それに彩華が乗っている光景が頭の中に入ってきた。
予知後に、横を確認してみる。
ちょうど一台の車が俺たちの横を通り過ぎようとしていた。
そして、その予知は正しかったと理解する。
「あや……か?」
――誘拐。
その文字が俺の頭の中を埋め尽くした。
「おっかしいな~。 おい明希也、彩華ちゃん出ない――って!? お前なにアイス落としてんだよぉぉ!!」
「それどころじゃねぇって!! 誘拐だ! 彩華が誘拐された!!」
「はぁ!? なんだよそれ!?」
「あの車だ! 最初に予知が起こって……確認したら、ホントに彩華が乗せられてたんだよ!!」
「マジか……どうすんだよ!? やべぇじゃねぇか!!」
二人で車の方へと目をやる。もはや走って追いつける距離ではなかった。
これはめちゃくちゃまずい。
あの車がどこに向かうのかも分からない。
どうすれば――どうすれば――
思考をフル回転させる――が、全くいい案が思い浮かばない。
(くそっ! 俺は身近な友達一人も救えないのかよ!!)
今日の日ほど、自分の無力さを呪ったことはない。それぐらい、彩華をさらった奴らと、自分に怒りが込みあがっていた。
解決策もなく、途方にくれていたその時――
「明希也……電話鳴ってるぞ……」
俺のポケットに入っている携帯が鳴りだした。
(空気も読まずに、鳴りやがって)
出る気にもなれなかったが、鳴り響く耳障りな着信音を、そのままにしておくわけにもいかず、仕方なく電話を取り出した。
画面を見る――そこには知らない電話の番号が並んであった。
恐る恐る電話に出て、携帯を耳に近づけると――
『……誘拐犯を捕まえたいかい?』
何年も前からの、知り合いのような気さくな口調。
だが、電話の向こうからは、聞き覚えのない若い男の声が聞こえてきた。
「誰だ......お前は?」
『やだなぁ〜同じクラスの倉治明日斗だよ〜』
くらじあすと――そう心の中で繰り返した。
記憶を辿ってみるが、なかなか見つからない。
覚えていないという事は他のクラスなのではないかと疑い始めたが、そういえばクラスの中で一人だけ、ほとんど毎日不登校のやつがいたな、と明希也は思い出した。
そいつに違いない。
俺がその事を確認すると、案の定、倉治はサラッと「......そうそう! それそれ!」と認めた。
とはいえ話したこともなく、赤の他人と同様の関係であるのは間違いなかった。
それなのに、なぜ自分の携帯の番号を知っているのかが一番先に疑問として出てきた......が、もう一つ浮かんだ疑問を先にぶつける。
「どこかで見てるのか?」
そう質問すると、電話の向こうからは高笑いが聞こえてきた。手を叩く音もする。
俺には、その行動の意味が理解できなかったが、なんだか妙にいらいらしてくるものがあった。
笑いが収まってきたのか、倉治が咳払いを何度かした後、話を始める。
『あぁ、ごめんごめん、一番目の質問に、なぜ自分の携帯番号を知ってるのか――ってくると思ってたけど、明希也くん、意外と話が早くて助かるよ』
上から目線の言い方がさらに明希也をいらいらさせた。
「早く答えろよ!」
『まぁ、落ち着いて。 それも踏まえて手っ取り早く説明しよう』
乱れた呼吸を整える。
誰のせいでこんなに取り乱しているのかと、文句を言いたかったが、その気持ちを抑えて、倉治の話に耳を傾けた。
『僕はこの町の全ての監視カメラを操作できるんだ。 と言っても、町の監視カメラだけじゃ、情報が少し足りないと思って自分でも設置してるんだけどね。 そういうわけで、この町で何が、どこで、いつ、なぜ起こったのかを知ることができるんだよ。 さっき、明希也くんたちが巻き込まれた件についてだって、僕には最初から丸見えなんだよね〜』
――現実味がなく、胡散臭い。
そんな天才ハッカー並のことが普通の高校生にできるのかと明希也は怪しんだ。いや、普通かどうかは知らなかったが――。
あれこれと考え込む明希也をよそに、倉治は話を進めていく。
『そこで――だ。 僕が監視カメラで得た情報を今から伝える。 そして、君が僕の情報を頼りに捕まえるっていう解決策があるんだけど、どうだい? おもしろそうだろ? あいつらに一泡吹かせてやろうよ!』
「今まで話したこともないやつの言うことを信じろと?」
『嫌なら別にいいよ〜、彩華さんが誘拐犯にあんなことやこんなことされても、僕の知ったこっちゃないし、ね?』
もし倉治の話が本当なら誘拐犯を捕まえられるかもしれない。
信じ難い話だ――疑問も多い。
だが他に解決策も思いつかず、俺と快斗だけでの解決は難しいというのが今の現状だった。
「俺の携帯番号を知っている件は?」
まだ倉治が答えていない疑問の一つを聞き直す。
「あぁ、それね」と重要な質問ではないかのような軽い対応をされる。
俺にとっては無視できないことだ。
『君が面白い人間だったから』
「......はぁあ?」
『町の監視カメラで時々君を見るんだけど、君って未来が見えてるのかな? たま~に、これから起きることが分かっていたような行動するよね。 実に興味深いよ! それで気になって、学校の名簿とかを、あれこれ調べて君の電話番号を入手したんだ〜。 はい、これが理由』
倉治明日斗という人間のことがだいたい分かってきた。少なくとも、好奇心で他人の電話番号を盗み見るやつは普通の高校生――いや、人間ではない。気味が悪かった。
ただ、それよりも問題なのが、電話番号にとどまらず、能力のことまで見抜かれているということだ。
予知のことは快斗しか知らない――。
彩華や妹の結衣、姉の美奈にも話してはいたが、冗談半分で、あまり信じてはいない感じであった。
それを今日初めて話したようなやつに見破られるとは――。
自分の軽率な行動のせいでもあるが、その洞察力の高さは認めざるを得なかった。
「わかった。 手を貸してくれ」
『賢明だね、明希也くん』
これ以上倉治と話をしていても、いらいらの感情が爆発してしまう。そして何より、事件が一向に解決しない。文字通り、時間の無駄だ。
俺は腹をくくり、協力し合うという選択肢を抜き出した。
「あっ......もう一つ、質問いいか?」
『どうぞ〜』
「なんで俺の手助けをしてくれるんだ? 別にお前には何のメリットもないと思うんだが」
『なんでって、そんなの......』
もったいぶっているのか、少し間を置いてから倉治は口を開いた。
『おぉんもしろそうだからに決まってんじゃん!!』
いかがでしたでしょうか?
この先も、おぉんもしろく話を進めていければと思います。
次回も読んで頂ければ嬉しいです٩('ω')ﻭ