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シャドウズ  作者: saji
6/55

第5夜 怪しい人影

シャドウズ第5話です。

最後まで読んで頂ければ嬉しいです٩('ω')ﻭ

 

「なぁ、結衣」


「なに? みなねぇならまだ寝てるから大丈夫だよ」


「あぁ、そっか、姉ちゃん今日は振替で学校休みか」


 まだ眠気が覚めない俺の目の前で、結衣は朝食を淡々と食べ進めていた。


 目をこすり、寝起きでボヤけている視界をはっきりさせる。だがそれは見せかけで、本当は結衣に気付かれないように、様子をうかがうことが目的だった。


 まだ結衣は今朝のことを根に持っているように感じる。


 正直、話しかけ辛い......。

 これ以上、気まずい雰囲気になる前に、勇気を出して話をしなければ――


「お前って怖い夢とか見たことあるよな?」


「まぁ、誰でも一度は見るかもね。 私は昔、崖から落ちる夢とか見てたし」


「目が覚めた時に血とか吐かなかった?」


 仕方なくという感じで話を聞いていた結衣だったが、最後の質問を聞き、箸の動きを止めた。


 この時、会話が始まって、やっと結衣が俺の顔を見て言葉を発した。


「何言ってんのあきにぃ? まさか夢と現実の区別がつかなくなっちゃったの?」


「いやぁ、何か痛みもリアルに感じるし、鮮明に夢の内容覚えてるのも不思議だなぁと思って」


「だいたい、夢の出来事が現実に反映してるなら私の場合、崖から落ちてる時点でもう死んでるよね?」


「んっ......まぁ、そうだな」


「てか、早くご飯食べて」


 それを最後に、俺は学校へ行くために朝食を急いで食べ進めた。




 ■




「ぶっははははは!! そんでお前、さらに結衣ちゃん怒らしたのかよ!」


 今朝の一連の出来事を快斗に話したが、さすがに夢の出来事が、現実に反映されたなど信じてはもらえず、盛大にバカにされていた。


「だって、本当に咳き込んだら手に血が付いてたんだって!」


「わかったわかった。 お前、今度病院行け。 な?」


 快斗が笑いながら、優しく肩を叩いてきた。


 朝からいいことなしの俺は、深くため息をつく。


「ところで聞いたか? 今朝のニュース」


「今朝は妹と喧嘩してテレビつけ忘れた」


 快斗はそれを聞いてまた笑いそうになったが、堪えて話を続ける。


「昨日の夜、別の町でまたシャドウの襲撃があったらしいぜ。 しかもB級だってさ」


「最近、本当に多くないか?」


「あぁ、パージストたちも大変だよなぁ。 近々、シャドウたちが何かやらかすんじゃないかって話だ。」



 おれと快斗は周りの生徒たちに聞こえないよう声を低くして話していたが、その必要はなかった。

 教室中は他の生徒たちの他愛もない会話で賑わっていた。


 快斗の話を聞きながら、何気なく窓の外を見る。


 学校の校門には、まだ登校してくる生徒が見えた。

 平和的なごく普通の登校風景――。


 たが、見えたのはそれだけではなかった。

 平和的な雰囲気にふさわしくない黒いコートを着ている男の姿。中に入らず、じっと学校の様子を見ている。


 見るからに怪しい......。

 しかも、他の登校してくる生徒たちは、その存在に全く気づいていない様子だった。


 俺は依然としてニュースについて言及している快斗に呼びかける。


「おい......おい快斗!」


  「ん? どうした明希也。 俺なりの考察が聞きたいか?」


「そうじゃなくて、ちょっとあそこ見ろ! 校門近くに怪しい男が立ってる」


 快斗はおれの言葉を冗談半分に受けとめながら、言われた通り窓から外の校門近くを見た。


「ん~......そんな怪しいやつはいないぞ?」


 その言葉を聞いて、再び外を確認する。


 快斗の言う通り、校門付近には怪しいと思われる者は、誰も立ってはいなかった。


「あれ? おかしいな。 さっきまでいたはずなのに」


「なんだなんだ? 予知しすぎて疲れてるんじゃないのか?」



 朝から――いや、夢の中から調子が悪いと自分でも感じていたが、まさかこれ程とは。

 今日ほど自分の目を疑ったことはない、明希也はそう思った。


 それと同時に、イラついてきたのか、朝からの不満を快斗にぶつける勢いで言葉を発する。


「疲れてないわ! 今日なんて、まだ予知が起こってな......」


 ドクン......。


 心臓が強く脈打った。


 快斗との会話を中断し、少しの間、予知を読み取ることに集中する。



「今日最初の予知が起きたぞ」


「おお! そんで、最初の予知で明希也くんは何を見たんでしょーか?」


 快斗の反応は明らかに、俺の予知する出来事が何なのか、早く知りたくて楽しみな様子だった。


 俺は間を置き、言うのをもったいぶってから顔をニヤリとさせて答える。


「彩華が教室に入ってくる」

「普通じゃねぇかよ!」


 快斗が声を発した直後に教室のドアが開き、ひとりの女性が入ってきた。


 見るからに清潔で、ほっそりとした身体つき。

 綺麗な黒髪がより際立つ肩まで垂れるロングの髪型で、かけている赤色の眼鏡が、顔の可愛らしさをより表している。


 その女性は俺たちの所へまっすぐ近づいていき、ある程度の距離で足を止めた。


「あきくん、はやとくん、おはよう。」


 爽やかなその挨拶におれたち二人も挨拶を返した。


「昨日は家の用事で休んだって聞いたけど大丈夫だったか?」


「うん......。 実はまた学校には内緒でバイト増やしてたの。 今月の授業料とか食費が危なくって」


 少し間を置いて、彩華は質問に答えた。その顔は何となく俯き気味にも見える。


 彩華の家が極めて貧乏であることを俺たちは知っている。こうした会話をするのも1回や2回程度ではなかったが、何度聞いても暗い表情をしてしまう。


「彩華ちゃんの家はいつもいつも大変だよな、今度何か食べ物おごるよ」


「ホントに!!?」


 快斗は慌てて口を手で塞いだが、もう快斗の言葉は彩華の耳に入った後だった。


「はやとくん、聞いたからね! 言質とったよ! 昨日の夜から何も食べてなくて死にそうだったんだけど、その言葉で放課後まではどうにか生きていけそうだよ〜 あっ! 弟の分とおばあちゃんの分も買ってあげたいんだけど、できれば――」


 彩華は自分の要望を次々と快斗に投げつけた。流れの止まらぬ滝のような勢いだ。

 嬉しそうに顔を輝かせ、息を弾ませているその表情は、普段の落ち着いた様子からは想像できないもの――と初めて見た人は思うだろうが、友人として長い付き合いである明希也たちには彩華のそんな表情も、日常のものとして受け入れるようになっていた。


「やっちまったな、快斗」


 快斗の肩を優しく2回叩く。


 彩華に攻め寄られた快斗は顔を引きつらせて困り果てているようだったが、そんな快斗の様子を見たからか、明希也は朝から感じていたイライラの感情が、ほんの少しだけ、和らいでいくのを感じていた。







『もう危ないじゃない! 学校の生徒に姿を見られてたらどうするのよ! あなたの服装、完璧に誘拐犯か何かに間違えられるわよ!』


「心配ないさ、別に悪いことをしようってわけでもないんだし」


 男は人が多く行き交う町の大通りで通話をしながら歩いていた。自分のポケットからタバコの箱を出し、一本取り出す。

 もう片方のポケットからはライターを取り出し、タバコの先に火をつけた。


『それに調査とはいえ、あんまり自由に動かないでよ。 一応、あなたのことは、いないことになってるんだから。 あと計画したことを最優先ですること』


「りょう〜かい。 そんじゃあ、おじさん長話疲れちゃったから電話切るね〜」


『ちょっと待ちなさい! そんなに長話してないで――』


 男の電話相手は少し怒っている様子だったが、男は相手の言葉を無視して通話を切る。




「俺にとっちゃ、こっちの方が優先度高いんだよ」


 たばこを一口吸ってから、独り言のようにそうつぶやいた。


この話を投稿してる頃には、もう3月に入ってると思います。だんだん暖かくてなってきてきましたね。ダラダラしたいという気持ちを抑えつつ、次回も投稿頑張ります٩('ω')ﻭ

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