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シャドウズ  作者: saji
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第42夜 決着

この作品を見つけていただき、ありがとうございます。

最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

「き......霧生さん......!」


 目の前に見えたその後ろ姿――それはあまりにも大きく、頼もしく感じた。


「悪い、遅くなっちまったな」


 周りの状況を見回した霧生は、深いため息をついた。


「ずいぶんとまぁ......やられちまったなぁ、お前ら」


「だから誰だよ、お前!」


 貴族が霧生の刃を押し返し、距離をとった――。


荒裂(こうれつ)斬風(ざんぷう)


 放たれた斬撃が渦を巻き、風を切り裂く音とともに上昇気流が生まれた。

 その規模が大きなっていき、激しさを増しながら霧生に襲い掛かる。


「ふんっ!」

「......っ!」


 貴族が技を出してからわずか2秒――霧生は自らその竜巻に向かっていき、一太刀(ひとたち)で打ち消した。


「あいつ......でかくなる前に対応しやがった......」


 一瞬で自分の技を見抜かれた貴族は、霧生に対して警戒をいっきに強める......。


「あっ!」


 2人の戦いを見ていたヴァンプが、何かを思い出したように、手を叩く。


「なんだヴァンプ? 知り合いか?」


「こいつ、前に俺に負けた奴じゃ~ん!」


 そう言って、霧生に指を指す。


「いきなり現れてさぁ~、浄化派って聞いたから、早く済ませようと思って、内側に入れてやったんだよ。 そしたら、いつの間にか尻尾まいて逃げやがったんだ! クハハハハハ!」


(ジョウカハ......ってなんだ? いや、それより――)


 霧生さんがあいつに負けた......だと。

 もしそれが本当なら、やばいんじゃ......。


「それ、ホントの話か?」


「え? ホントだって!」


「......そうか」


 貴族は少し疑問を浮かべたが、すぐにニヤッと笑った。


「ボルガ!」


 名前を呼ばれた瞬間――巨大な青い狼が貴族のもとへ跳んでいった。

 横に立ち、霧生に鋭い睨みを利かせて威嚇する。


「まだ牙は使えないが、お前なら余裕で殺せるだろ」


 獣の首元を撫でながら、貴族は横目で霧生に視線を移した。


「おい、ヤニカス! いま降伏すれば、楽に殺してやるが......どうする?」


「いいから早く来いよ」


 その態度にピクリと眉を動かす。


「いいだろう、お望み通り殺してやる」


 貴族は息を吸い――


「殺れぇええ! ボルガ! ぐちゃぐちゃにしろぉお!!」


 不快感を爆発させる勢いで、獣に命令した。


 鳴り響く咆哮(ほうこう)――殺意の眼光を向け、霧生へと襲い掛かる。


「いつぶりだろうなぁ、精霊を相手にすんのは......」


 ゆっくりと歩みを進め、武器を構える霧生。

 獣の殺意を全く居に返さない様子だ。


 縮まる距離――獣が鋭い腕の爪を振り下ろす。

 すると、縦に伸びた衝撃波が、凄まじい速さで床をえぐり進んだ。


滅裂(めつれつ)嵐獄(らんごく)


 獣の攻撃と同時に、貴族も剣を振るった。

 斬撃が霧生の左右に飛んでいくと、先ほどの竜巻よりもより大きな竜巻が発生した。


 前からは獣の衝撃波、左右からは強烈な竜巻――。


(あれじゃ、防ぎきれない!)


「死ねぇええええええええ!!」



覇斬(はざん)弧光(ここう)


 霧生の刃から放たれた銀色の弧。


 それは迫りくる衝撃波をいとも簡単に打ち消し、そのまま――



「なっ......」


 防ごうとした腕ごと、獣の首を貫通した......。


「何者だ......おま――」


 困惑している貴族へ、すかさず霧生が斬り込む。

 その間合いを詰める速さに、貴族は慌てて剣を構える――。


「し、死裂(しれつ)・神かぜ――」


 貴族の攻撃は完全に出遅れる。

 霧生は渾身の力で貴族の両足を――


「終わりだ」


 斬り落とした。


「うがぁっ......!」


 地に付いていた足が一瞬にしてなくなり、貴族の体は床に強く衝突する。


「い......いてぇな――あ......あれ?」


 起き上がろうとする貴族が首をかしげる。


「あれあれ? なんで立てないの?」


 何が起こったのか――全く理解できていない様子だった。


 周りをきょろきょろと見回す......。

 自分の靴を履いている2つの足、首のない獣の体や、自分を見下ろす霧生――それらが彼の目に映った。


「なんで床に倒れてんのなんでボルガがの首がないのなんでおれ見下ろされてんのなんでこんなに痛ぇの? なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで――」


 貴族の口が止まった......と思ったその刹那(せつな)――


「なんでだぁあああああああああああああああああああああ!!!」


 貴族が血相を変えて怒号(どごう)を放った。


「俺の高貴な血がぁあああ! お、おい! 誰か早くなおせぇえええ! アラン! リカール! 今は奴隷でもなんでもいい! 早く俺の足をなおせぇええええええええ!!」



 ――あっという間だった。


 あんなにも巨大で、凶暴で......人間が勝てる存在ではないと思っていた獣が、まさか一瞬で倒されるなんて......。

 そして......それを従えていた貴族をあんな簡単に......。


 消滅していく獣の体と首。床に這いつくばる貴族。


 圧倒的な力で、霧生はこの戦場を瞬く間に無力化してしまった......。



 霧生が床に横たわる貴族に近づく。


「ひ、ひぃいい! 殺さないでくれぇえ!」


 もはや、先ほどまでの威厳も尊厳も、あいつに感じていた恐怖もない。

 怒号を止めた貴族は怯え、顔を手で覆った。


 しかし、霧生は貴族には手を出さず、斬り落とした2つの足を持ち、俺の方に歩み寄ってきた。


「明希也......よく戦ったな」


「霧生さん......」


「立てるか?」


「いや......俺はもう立て――」


 足元へ振り向いたその時――俺の目に信じられないものが映り込んだ。


「どうした? 立てないなら――」


「な......何が起こってるんだ......」



 ――斬り落とされたはずの両足が治っている。



 すぐさま身体を動かし、立ち上がってみた。

 痛みも感じない。裸足だったが、ちゃんと立てている......。


 今度は、直接触って確かめる......付いてる。しっかりと付いている。


「なんだ。 ひとりで立てるじゃないか」


「どういうことなんだよ......」


 あの時、俺は確かに両足を斬られた......のに。


(なんで、付いてんだ......?)


「まぁ、無事で何よりだ。 それより――」


 霧生は、持ってきた足から靴を抜き取り、こっちに差し出してきた。


「これを履け」


「えぇぇえ!?」


「貴族の機動靴(モビリティ)だ。 いいから履いておけ」


 靴を受け取る......。

 あいつの履いてた靴なんて、履きたくないんだが......。


「そんで、肝心の救出対象はどこだ?」

「......っ!!」


 俺はその言葉ではっとする。


「た、大変なんだ霧生さん! 姉さんの影が――」


「お、お前ら! あいつを殺せ!」


 突如、ヴァンプの叫び声が鳴り、周りのシャドウが一斉に動き出し始めた。


 うなり声と殺気を帯びた視線が全方向から押し寄せてくる。


(まずい! 周りにはまだ大量のシャドウがいたんだった!!)


 霧生さんはともかく、俺やリナたちはあの数に襲われたらひとたまりもない。


「き、霧生さん! どうすれば――」


「それ履いて待ってろ......」


 そう言って、吸っていた煙草を床に捨て、足ですりつぶす。


「ったく......ゆっくり味合わせてほしいもんだ」


 刀を床に突き刺した瞬間、刀身が銀色の光をまとい始めた――。


神聖(ディバインズ・)(ウォール)


 ――瞬時に広がる光の輪。


 床に刺さった刀を中心に展開されたそれが、形を変形させていく。


「これは......」


 ドーム状の壁――工藤さんの設置していたものと似ていた。

 似ていた......というより、全く同じだ。壁は全方向から襲ってくるシャドウを食い止め、内側に一切の侵入を許さなかった。




「これは......想定外だ」


 霧生の戦闘、技を見たヴァンプは焦っていた。


「まさか、あいつがあんなに強かったとは......」


 焦ってはいたが、すぐにヴァンプは余裕の笑みを浮かべた。


――『略奪者の闇穴(エゴイスト)


 それを使えば、結界の外に逃げ道を作れることに、気づいていたのだ。


「ひとまずここは逃げ――っ!」


 技を発動しようとした瞬間――光の網が目の前に展開され、体中に絡み付いた。


「なっ! なんだ!」


 アルムで切り裂こうとするが、なかなか脱出できい。


「捕獲用の光兵器(グランズ)か! くそ、力が!」


「お前だけは......絶対に逃がさん!」


 深い傷を負いながらも、気配を消して近づいていた倉持が、ヴァンプの動きを封じた。


「し、しにぞこないがぁああ!」


 倉持に襲い掛かるヴァンプ――だったが、


「久しぶりだな」

「なっ!? はや――」


 霧生が一気に距離を詰め、


「うっ......がぁああああああああああ!!」


 鋭い刃で渾身(こんしん)の一撃を与えた。


「くそがくそがくそがくそがくそがくそがぁああああ!! あの時、殺しとけば!! 殺すべきだったぁあああ!」


 床でもがき苦しむヴァンプの首を掴み、刀を突き向けた。


「俺がシスト市に侵入してきた時点で、数十人の尾行がいた。 シスト市で情報を集めるには尾行が邪魔でな。 かなり警戒されていたが、お前に負けたことで、お前らの上のやつらが『大したことない。 ただの外部からのパージスト』って認識してくれた。 それが、演技とも知らずにな」


「死ね! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」


「おかげで、尾行が片手で数えるぐらいになった。 それぐらいなら、1人も逃がさず対処できるからな。 助かったよ」


 霧生は鋭い切っ先をヴァンプに近づけていった。


「お、おい! いいのか! 俺を殺せば、今まで喰ってきた人間も死ぬぞ!」


「俺はパージストじゃねぇ。 それに、今まで何体もシャドウを殺してきた。 今さら躊躇(ちゅうちょ)しねぇよ」


 そう言うと、霧生は刀を振り上げ、ヴァンプの顔に切っ先を振り下ろした――。


「あ、あいつの肉親を喰った!!」

「......っ!」


 すんでのところで刃が止まる......。

 それを見て、ニヤリと笑うヴァンプ。


「き......霧生さん? 何してんだよ......」


「クハハハ......クハハハハハハハァァアアア!! やっぱりそうか! 仲間の家族は殺せねぇだろ!」


 一刻も早く、ヴァンプを浄化してほしいのに。

 霧生が動きを止めた理由が分からず、俺は焦りを含んで声を上げた。


「早くそいつを殺してくれ!! そうすれば、姉さんの影を取り返せる! 助けられるんだ!」


「クハハハハハ!! バカだ! バカがいるぞ!」


「今、こいつの言っていた話は本当か? 明希也」


「え? ......ほ、本当だ! そいつに姉さんの影を奪われたんだ! だから早く――」


「明希也......もしそれが本当なら......今こいつを殺せば、お前の――姉の魂は永遠に戻らない」


「......え? それってどういう――」


「死ぬってことだ」




 ――分からなかった。


 俺には、霧生の言葉が全く理解できなかった。


読んでいただき、ありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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