第36夜 神出鬼没
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「カイトさん! 時任さん! リナ! 」
黒い空間が閉じ、完全に姿を消した3人......。
(うそだろ......。 あいつ、何をしたんだ......!?)
あの3人がいっきにいなくなってしまった絶望感......。
とてつもない恐怖が込み上がってくる。
どうなってしまったんだ......まさか、もう――
「おわぁっ!?」
最悪な状況を思い浮かべていた矢先――上から声がした。
「か、カイトさん!」
見上げると、そこには消えたはずのカイトたちの姿があった。
(よかった......でも何であんなところに――)
喜びも束の間、落下している3人にヴァンプが飛び掛かる。
地に足がつかない状態では、まともに戦えない。
(これも......あいつの能力なのか!?)
「クハハ! 隙だらけだぞ! パージスト!」
無防備なカイトに向かって、影殻を振りかざす。
しかし、カイトはくるっ、とヴァンプに向かい合い、武器を構えた。
「パージストは空中戦もできんだよ!」
身をかがめたカイト、すると機動靴が光始め――
(落下が......止まった!?)
そのまま、勢いよく両足を伸ばし宙を蹴ると――カイトが大きく跳躍し、ヴァンプとの距離をいっきに詰める。
『|乱雷乱撃!』
同時に、自身の体を回転させいく――。
手に持っている双剣が黄色い光を放ち始める――まるで雷をまとった竜巻のようだった。
「なに回ってんだ! 死ねぇ!!」
カイトに向かって二本の影殻を突き伸ばす。
スピードの付いたカイトの双剣とそれがぶつかった――。
「......っ! なにぃ!?」
カイトの双剣が影殻を切り裂き、そのままヴァンプの目の前まで接近した。
「はぁ!!」
「くっ......なんてな」
「......っ!」
カイトの双剣が宙を切る......。
攻撃される瞬間――ヴァンプが黒い空間を出現させ、その中に逃げ込んだのが見えた。
(くそ! 惜しい! ......っ!)
と思っていたら――ヴァンプが黒い空間から出現し、カイトの背後をとっていた。
「閃光ノ印――緑!」
カイトを攻撃しようとしたヴァンプに、リナが斬り込む――。
しかし、リナの目の前にいきなり黒い空間が現れ、また飲み込まれてしまった。
「へぶっ!」
「えぇっ!?」
いきなり地上から聞こえてきた声。
向いてみると、リナが地面に突っ伏している姿が映った。
「う~、いててて......」
「だ、大丈夫かリナ!」
危ないと分かってはいたが、リナのもとへ急いで駆け寄る。
けっこう強く顔をぶつけたらしく、鼻から血が出ていた。
「らいじょうぶだよ~。 ありがと~」
鼻を圧迫し、止血しているリナ。
なんでこの状況でも笑顔でいられるんだよ――とツッコミたくなる気持ちを抑え、俺は手を貸して、リナを立ち上げる。
その間も、上空で鳴る激しく――鋭い音。
時任とカイトが空中でヴァンプと戦っていた。
あの黒い空間......あれを使うと、瞬時に別な場所へ移動できるんだ。しかも、自分だけじゃなく、相手も移動させられる......。
(どうやって戦うば......)
「サイちゃん!!」
――焦りを含んだカイトの声。
「......っ! 時任さん!」
時任が空中で影殻に足を掴まれていた――。
迫りくるヴァンプの攻撃――
「起動!」
「うぐっ!!」
ヴァンプの動きが止まった。
「時限浄爆だ!」
しかし、止めたのは一瞬だけで、ヴァンプはすぐに体勢を立て直してしまった。
「効かねえぇよ!!」
「......っ!」
とっさにカイトが時任の前に飛び出る――。
「ぐあぁ!」
「カイトさん!!」
横腹に影殻の攻撃を受けてしまった。
「おらぁ!!」
避ける隙を与えず、三本の影殻を重ねた強烈な攻撃をくり出す。
すぐさま時任が足を掴んでいた影殻を斬る。カイトを片手で抱えこみ、武器を構えるが――
「くっ!」
重い攻撃に体を吹き飛ばされ、地面に激しく衝突してしまった。
砂埃が舞い上がり、激しく鳴っていた剣戟の音が鳴り止む......。
「なんで......俺を下敷きにすんの......」
「すみません......つい......」
「『つい』って......おれ、攻撃くらったのに......」
「ふたりとも! だいじょぶ!?」
俺も心配になり、リナと共に駆け寄る。
「カイトさん!」
苦痛の表情を浮かべ、脇腹を押さえている。
傷を負った箇所から血がどくどくと流れてきている......。
「あいつ......動きが読みづらくなってきている。 能力を使いこなしてきてるんだ......」
「なるほど~......って、カイトさんはだいじょぶなの!?」
「あぁ、こんな傷、日常茶飯事だ」
カイトは俺たちの前ですくっ、と立って見せた。
「あいつはもう、立ち回りだけなら、S級のレベルに近いかもな......しかも戦いの中で成長していってる」
「えぇー! めんどくさいタイプだ~! 早く倒したいのに~!」
頭を抱えるリナ。
「このままじゃ工藤さんが――」
「いや――」
カイトがリナの言葉をさえぎる。
「影殻の耐久性は紙みたいに低い......。付け入るスキはある」
「えぇ、私もそれは感じていました。 強烈な攻撃を一発でも与えられれば、勝てます」
「あの黒い空間を使われる前に接近できれば――ってことだよね? でも、今のままじゃ難しいかも......」
カイトは少し考え込んだ。
なんとなくリナを見たようだったが――その瞬間、「あそっか!」と手を叩いた。
「リナを『青』までもっていければ......勝てる!」
「......ですね」
「ふぇ? そなの?」
そなの――って、本人が分かってないようですが......。
「うっ......!」
「......っ! 工藤さん!」
辛そうに地面に膝をつく工藤。
もはや、立っていられないほどに、体力を消耗してしまったのか。
「クハハ!! そろそろ頃合いだなぁ! お前ら、やれぇ!!」
2体のシャドウが工藤に向かって飛んでいった。
影殻が鋭く変形し、工藤に迫る――。
(だめだ! あの状態じゃ避けられない!)
また人が死ぬ......殺される......。
「はぁあ!」
「く、倉持さん!?」
すんでのところで、工藤の前に倉持が現れ、2体からの攻撃を防いだ。
「悔しいが、わたしではヴァンプを倒せん......そいつは君たちに任せた!」
剣を強く押し出し、2体のシャドウを後ろに退かせる。
「こっちは心配いらん! 思い切り戦え!」
とはいえ、倉持さんも傷を負っている。
あの状態でシャドウ2体を相手にできるのか......。
「2人は時間を稼いでくれ! 俺が向かって速攻で倒してくる!」
「カイトさん!!」
俺はカイトを呼び止めた。
「なんだあきやん! 時間が惜しいんだ!」
あのシャドウ――ヴァンプを相手にするなら、この3人で戦わないと勝てない。
今は3人でも苦戦している状況......。
ひとりでも離脱するのは危険だ。
(カイトさんの話だと、勝てる見込みがあるようだし......それなら――)
「おれが......助けに行きます!!」
「は、はぁあ!?」
これが今、俺のすべきことだ。
いつまでも、俺だけ傍観してるわけにはいかない。
「ちょ、あきやん!」
「カイトさんたちは速攻でそいつを倒してきてください!!」
みんな必死で戦っている。
俺も......俺も戦うんだ。
「行っちゃったよ......」
「カイトさん、あきやくんは強いよ。 私たちが思っているよりも、ずっと......」
「リナ......」
「だから、もっと強い私たちがあいつを倒して、早く終わらせよう!」
そう言って、リナはヴァンプに立ち向かっていった。
「ったく......サイちゃん! 俺らはリナの援護だ! 俺らで『青』まで持っていこう!」
「承知しました」
2人も、リナの後に続く――。
「あきやくん......どうか、死なないでね」
読んでいただき、ありがとうございました。
やっと......やっと.....次回――主人公が――戦う――のか!?




