第35夜 短期戦
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生存者たちの前にできあがった2つの死体......。
悲鳴をあげ、絶望の表情を彼らは浮かべていた。
「トモッち!! 何が起こったんだ!!?」
カイトたちは、全神経をヴァンプの警戒に集中させた。
俺とリナも、危険を察知し、美奈を連れて工藤と合流していた。
「......穴だ」
「あな?」
「黒い穴が二人の近くに突然出現した......。 そしてそこからやつの影殻が二人の首をはねたんだ」
「......簡単に終わると思ってたけど......こりゃ一筋縄じゃいかないな」
自分の手のひらを眺めるヴァンプ。
「すげぇ......いいじゃねぇか、この力」
「......っ!」
くくっ、と不敵な笑みを浮かべるヴァンプの――その表情に、俺は得体のしれない恐怖を感じた。
さっきまで追い詰めていたのに......。
カイトに受けた傷もいつの間にか回復している......。
「よくも......よくも二人をぉ!!」
「倉持さん! ひとりで行っても無駄です! 死にますよ!」
我を忘れて突撃しようとする倉持を、工藤が引き留める。
立ち止まってはくれたが、倉持は早くこの怒りをぶつけたい――という様子だ。
「トモっち! リナも加えよう! なんかヤバそうだ!」
「外のシャドウの攻撃が......想像以上に負担が大きい......それだと短期決戦になる」
外のシャドウから守る広い壁――ドーム状のそれを包み込むようにシャドウが攻撃している。それも絶え間なく、全方向から......だ。
今気づいたが、工藤の呼吸が荒い......。汗も止まらないようだ。
壁の内側にいる大勢の生存者たちにもバリアを使っているし、この壁を維持するのに相当の体力を消耗していることがうかがえる。
「おっ? そろそろ結界も限界かな~? あの様子だったらお前らに任せてもいいかな~」
ちらりっ、とヴァンプは上空にいる2体のシャドウを見る。
リナが戦闘に参加するとなると、俺たち二人は無防備状態――。
自分たちにもバリアを張ってもらうか......いや――それよりも......
「俺たちは生存者のバリアに入ります! 心配いりません!」
工藤に新しく張ってもらうよりは、その方がいいだろう。
「......でしたらなるべく、小さく固まってくれるよう......指示をお願いします。 その方が負担が減りますので......」
「......っ! はい!」
すぐさま、俺は美奈と共に移動を開始した。
「リナ、そういうことだ」
「工藤さん、その状態でだいじょぶですか? D級とはいえ、結界を維持しながら2体相手は――」
「心配なら、早く倒してこい」
リナを払いのけるように、手をしっ、しっ、と動かす。
「も~なんですか~、せっかく心配してあげてるのに~!」
ふてくされながら、リナはカイトたちと合流しに向かった。
「カイト! できるだけ早く決めてくれ! 」
「了解だ! リナがいれば3分でやれる!」
カイトと時任の周りで風が吹き荒れ、体の光が強まった――。
倉持も霊力を解放させ、全身が白く光り始める。
「姉さん、大丈夫か?」
「平気へいき! 明希也が頑張ってるんだもの。 恐がってなんかいられないわ」
「さすが姉さん! そうこなくっちゃ!」
周りの状況を観察しながら、生存者たちのもとへ走る。
到着し、早速指示を出そうとしたが――目の前には顔に恐怖の色を浮かべ、震えている人々が広がっていた。泣き出している者、祈りを捧げている者もいる。
無理もない......。
シャドウの襲撃――そして、パージストが殺された光景を目の当たりにしてしまったのだ......。
みんな怯えていて動く余裕なんてないかもしれない。
どう指示をすれば......。
「みなさん! できるだけ一箇所に集まってください!! 慌てなくていいので!」
言葉が出てこない俺の代わりに、美奈が落ち着いた様子で――はっきりと指示を出す。
しかし、なかなかみんな動いてはくれないみたいだ。
(俺も......少しでも役に立たないと!)
姉さんひとりに任せてはだめだ......。
口火を切ってくれた美奈に感化され、俺も頭を下げて――
「お願いします!! なるべくみんなで固まってください!!」
そう頼み込んだ。
すると......ゆっくりとではあるが、みな足を動かしてくれた。
「ありがとう......姉さん」
「ほら、安心してないで誘導続ける続ける!」
「あ、あぁ」
生存者たちが集まるにつれ、張られている結界のスペースも徐々に縮まっていった。
これで、少しでも工藤さんの負担を減らせるはず......。
あとは――カイトさんたち次第だ......。
「お待たせ~! やっと私の出番か~!」
リナが合流したみたいだ。
嬉しそうな顔をしながら刀を構えている。
「せっかく新しい力に目覚めたんだ......秒で死ぬなよ?」
「舐めやがって......いくぞ!」
一斉に動き出すカイトたち。
ヴァンプは一歩も動かず、ただ攻撃を待っているかに思えたが――
「......っ! 気を付けろ!」
ヴァンプの左右に、黒い円形の空間が出現する。
その小さな穴に手を入れると――手が貫通せずに、見えなくなった。
(どういうことだ......)
ドクン......。
カイトたちの足に影殻の攻撃がくる――。
「足だ! 足を狙ってるぞ!!」
とにかく俺は声を張り上げ、予知で見たことを伝えた。
(......っ! やっぱりだ!)
カイトたちの少し前に、影殻が足元から出現した。
そして、全員の足を刈り取るように迫りくる――。
「よっと!」
俺は思わずよし、と声を出した。
突発的な攻撃だったが、カイトたちは上手く避けられたみたいだ。
「すごーい! なんで分かったの!?」
「リナ! 気になるのも仕方ないが、今は戦闘に集中し――」
「ごふっ......」
全員が気付いた......。
倉持が刺されている。
倉持の後ろにある黒い空間から伸びた影殻――それが背中に突き刺さっていた。
「私にかまうなぁ!! やつを倒せぇ!!」
口から血を流しながらも、倉持がカイトたちの背中を押す。
「くそっ......!」
それを受けて、3人は立ち止まらずヴァンプとの距離を詰めていった。
(俺の予知じゃ......手助けにはならないのか......!?)
倉持が刺される予知は見えなかった......。
見える予知はひとつだけ――それもランダム。
前から思っていたが、なんて不確定要素の多い力なんだ。
俺の声で、かえって意識を逸らしてしまっては、援護どころか邪魔でしかない。
(見えたとしても......口を開かない方がよさそうだ――)
ヴァンプが黒い空間に入れていた手を取り出す。なくなった腕が再び姿を現した。
「はっ!」
カイトの双剣による素早い攻撃――ヴァンプの影殻と激しく衝突する。
続けて時任とリナも死角に回って斬り込むが――背中から伸びた影殻によって防がれてしまう。
「時限浄爆」
時任の攻撃した箇所に再び印が浮き出る。だが、ヴァンプはそれを意に介してはいない。余裕の笑みを浮かべていた。
「効果が出る前に、殺せばいいだけだろ!」
3人の攻撃を巧みに受け流していくヴァンプ。
「閃光ノ印――白!」
いっきに二本――リナがヴァンプの影殻を切り落とした。
「うっとおしいから、全部切り落としちゃうね~!」
「ガキが......調子に乗んなぁ!」
背中の影殻を翼に変形させ、すばやく上空に浮遊する。
直後――カイトたちの立っている場所に黒い空間が広がった。
「なっ、なんだ!!」
まるで底の見えない穴のようになった地面に――3人が一瞬で呑み込まれてしまった......。
「......カイト......さん?」
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