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シャドウズ  作者: saji
38/55

第34夜 エゴイスト

この作品を見つけていただき、ありがとうございます。

最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

「きっかり5分! さすがサイちゃん!」


 時任とのハイタッチを求めるカイト。

 しかし、時任はそれを無視して眼鏡の位置を調整するのだった。


「あれれ......つれないなぁ~」


「隊長! 大丈夫ですか?」


「あ......あぁ、なんとかな」


安田と川村に手伝ってもらいながら、倉持は腰を持ちあげた。

よかった......。みんな無事みたいだ。


「さてと......」


 周りの状況を確認し、カイトはヴァンプに歩み寄った。


「くっ......くそが......」


 身体の自由がきかず、苦しそうに地面を這いずっている。


「さっきまで......劣勢を演じていたの......か」


「そういうこと~! おかしいと思わなかった? 本体から分離した影殻は消滅するはずなのに、ほら、まだ消えてない」


 カイトが指を指した場所には、ヴァンプが切り落とした――時任の付けた印の付いた影殻(アルム)が残っていた。


「え? なに? どういうこと?」

「あれは時任さんの技――【時限浄爆(リミット・パージ)】だね」


 疑問を表情に出していた俺に、リナが説明を始めてくれた。


「あのシャドウは、印の付いた部分を切り落として、技を防いだ気でいたんだと思う。 けどね、本体から離れていても、攻撃した時に繋がっていれば、そこから全身に効果が生じるようになってるんだ~。 いわゆる制限時間付きの爆弾――みたいなものかな?」


「へ......へぇ~」


 説明ありがとう、リナ。でも、正直よく分からん......。

 俺が理解できていないのは、置いといて......あいつを倒せたということは、この事件も解決に近い――ということだろう。


「全身にルミナを流し込まれた気分はどう? お前、この都市で茶番の戦闘ばっかしてたんだろ? 自分が強いって勘違いしてたんじゃない?」


「なん......だと!」


「A級だって聞いてたけど、俺からしてみればそりゃウソだね~。 これまでに戦ってきたA級と比べても、お前一番弱いじゃ~ん」


「お、俺は脅威度Aの......最強のシャドウだ!」


 ヴァンプの目がつり上がり、両目を血走らせていた。

 カイトたちに負けた悔しさで、怒りをさらけ出している感じだ。


「いやいや、A級でも最弱だったよお前」


「くそっ......くっ......」


 ヴァンプは無言になった......。

 とはいえ、歯ぎしりをし、身体を震わせ、カイトに向かって必死に這いずっていた。

 すさまじい怒りを感じる――が、もうどうすることもできない様子だ。


「カイト、(あお)るのもそれくらいにしておけ。 時間の無駄だ」

「えぇ~! あきやんとお姉さんの分も盛大に煽ってやろう! って思ってたんだけどな~」


 俺にとっては、あのシャドウが倒れた姿を見れただけで十分だった。


 カイトと目が合う......。

 グッと親指を立てて笑いかけてきた。


 ――ありがとう。

 その思いを込めて、俺もカイトに同じようなしぐさで返した。


「サイちゃん、こんな奴ほっといて、手早く上にいるシャドウも倒しちゃおうぜ~」


 すぐに、カイトと時任はヴァンプに背を向けて、上空のシャドウに対象を変える。


 あれ......最後まで浄化すればいいのに。


「どうして、止めを刺さないんだ?」

「『どうして?』って......私たちが、浄化派だからだよ?」

「え? じょうかは? 『派』ってなに?」


 俺の問いに、リナは首を傾げた。どうして理解できないの――というように。


「浄化派は――」


 とっさにリナは会話を止め、別な方向に顔を向けた。


「どうした? ......っ!」


 リナが向いている先には、ヴァンプがいた。

 驚いたのは、さきほどまで地面に這いつくばっていたあいつが、立ち上がっていたからだ。


「こんなところで......この俺が......」


 こちらに近づいてくる......。

 ゆらゆらと体を左右に揺らし、不気味な雰囲気を漂わせながら。


「カイト! 気を抜くな! まだ終わってないぞ!」

「あぁ!」


 工藤の慌てた声。

 カイトと時任も、ヴァンプの異変を感じ取り、追撃を加えようと詰め寄った――。


「ふざけん......な。 くそっ......がぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 その荒々しい声と同時に、胸を殴られたような衝撃が走った――。

 直後――ヴァンプの周りに巻き起こる突風。そして、禍々(まがまが)しく光を放つ黒い稲妻(いなづま)


(なっ......なんだ!?)


 強風がこっちまで押し寄せてくる――。

 俺は美奈を守るように抱き寄せた。

 近づこうとしたカイトたちも、その圧の強さに足を止める。



 嵐のような風の勢いが弱まっていく......。

 この場にいる全員がヴァンプに目を向けていた......。


「......クハハ、もう......全員死ね」

「......っ!」


 悪寒が全身にビシビシと伝わる――そんなとてつもない圧を感じた。

 カイトや工藤たちの顔つきも、さきほどより険しくなっている。


「おいおい......なに覚醒しちゃってんの......」

「カイト! 今度こそ全力でいけ!! さっきとは何か違うぞ!!」


 ぼんやりとした様子で、カイトと時任を見つめているヴァンプ。

 それから、工藤、倉持、リナ、俺......と順に見ていって、安田と川村で目がとまる。



 ドクン......。



 ――頭に流れてきた最悪の光景。


 整理するよりも先に、口が動いていた


「安田さん!! 川村さん!! あぶな――」

「【略奪者の闇穴(エゴイスト)】」

「え......っ」


 ――目に映った予知と同じ光景......。

 2つの首が胴体と離れ、切り口から血しぶきが上がった......。


「安田ぁ! 川村ぁ!」



 これも予知なのではないか――そう思いたかった......。

 しかし、目の前の映像は途切れない。現実だ......。

 2人の首が、謎の攻撃によって刈り取られる――その運命を変えることはできなかった。


読んでいただき、ありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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