第34夜 エゴイスト
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「きっかり5分! さすがサイちゃん!」
時任とのハイタッチを求めるカイト。
しかし、時任はそれを無視して眼鏡の位置を調整するのだった。
「あれれ......つれないなぁ~」
「隊長! 大丈夫ですか?」
「あ......あぁ、なんとかな」
安田と川村に手伝ってもらいながら、倉持は腰を持ちあげた。
よかった......。みんな無事みたいだ。
「さてと......」
周りの状況を確認し、カイトはヴァンプに歩み寄った。
「くっ......くそが......」
身体の自由がきかず、苦しそうに地面を這いずっている。
「さっきまで......劣勢を演じていたの......か」
「そういうこと~! おかしいと思わなかった? 本体から分離した影殻は消滅するはずなのに、ほら、まだ消えてない」
カイトが指を指した場所には、ヴァンプが切り落とした――時任の付けた印の付いた影殻が残っていた。
「え? なに? どういうこと?」
「あれは時任さんの技――【時限浄爆】だね」
疑問を表情に出していた俺に、リナが説明を始めてくれた。
「あのシャドウは、印の付いた部分を切り落として、技を防いだ気でいたんだと思う。 けどね、本体から離れていても、攻撃した時に繋がっていれば、そこから全身に効果が生じるようになってるんだ~。 いわゆる制限時間付きの爆弾――みたいなものかな?」
「へ......へぇ~」
説明ありがとう、リナ。でも、正直よく分からん......。
俺が理解できていないのは、置いといて......あいつを倒せたということは、この事件も解決に近い――ということだろう。
「全身にルミナを流し込まれた気分はどう? お前、この都市で茶番の戦闘ばっかしてたんだろ? 自分が強いって勘違いしてたんじゃない?」
「なん......だと!」
「A級だって聞いてたけど、俺からしてみればそりゃウソだね~。 これまでに戦ってきたA級と比べても、お前一番弱いじゃ~ん」
「お、俺は脅威度Aの......最強のシャドウだ!」
ヴァンプの目がつり上がり、両目を血走らせていた。
カイトたちに負けた悔しさで、怒りをさらけ出している感じだ。
「いやいや、A級でも最弱だったよお前」
「くそっ......くっ......」
ヴァンプは無言になった......。
とはいえ、歯ぎしりをし、身体を震わせ、カイトに向かって必死に這いずっていた。
すさまじい怒りを感じる――が、もうどうすることもできない様子だ。
「カイト、煽るのもそれくらいにしておけ。 時間の無駄だ」
「えぇ~! あきやんとお姉さんの分も盛大に煽ってやろう! って思ってたんだけどな~」
俺にとっては、あのシャドウが倒れた姿を見れただけで十分だった。
カイトと目が合う......。
グッと親指を立てて笑いかけてきた。
――ありがとう。
その思いを込めて、俺もカイトに同じようなしぐさで返した。
「サイちゃん、こんな奴ほっといて、手早く上にいるシャドウも倒しちゃおうぜ~」
すぐに、カイトと時任はヴァンプに背を向けて、上空のシャドウに対象を変える。
あれ......最後まで浄化すればいいのに。
「どうして、止めを刺さないんだ?」
「『どうして?』って......私たちが、浄化派だからだよ?」
「え? じょうかは? 『派』ってなに?」
俺の問いに、リナは首を傾げた。どうして理解できないの――というように。
「浄化派は――」
とっさにリナは会話を止め、別な方向に顔を向けた。
「どうした? ......っ!」
リナが向いている先には、ヴァンプがいた。
驚いたのは、さきほどまで地面に這いつくばっていたあいつが、立ち上がっていたからだ。
「こんなところで......この俺が......」
こちらに近づいてくる......。
ゆらゆらと体を左右に揺らし、不気味な雰囲気を漂わせながら。
「カイト! 気を抜くな! まだ終わってないぞ!」
「あぁ!」
工藤の慌てた声。
カイトと時任も、ヴァンプの異変を感じ取り、追撃を加えようと詰め寄った――。
「ふざけん......な。 くそっ......がぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その荒々しい声と同時に、胸を殴られたような衝撃が走った――。
直後――ヴァンプの周りに巻き起こる突風。そして、禍々しく光を放つ黒い稲妻。
(なっ......なんだ!?)
強風がこっちまで押し寄せてくる――。
俺は美奈を守るように抱き寄せた。
近づこうとしたカイトたちも、その圧の強さに足を止める。
嵐のような風の勢いが弱まっていく......。
この場にいる全員がヴァンプに目を向けていた......。
「......クハハ、もう......全員死ね」
「......っ!」
悪寒が全身にビシビシと伝わる――そんなとてつもない圧を感じた。
カイトや工藤たちの顔つきも、さきほどより険しくなっている。
「おいおい......なに覚醒しちゃってんの......」
「カイト! 今度こそ全力でいけ!! さっきとは何か違うぞ!!」
ぼんやりとした様子で、カイトと時任を見つめているヴァンプ。
それから、工藤、倉持、リナ、俺......と順に見ていって、安田と川村で目がとまる。
ドクン......。
――頭に流れてきた最悪の光景。
整理するよりも先に、口が動いていた
「安田さん!! 川村さん!! あぶな――」
「【略奪者の闇穴】」
「え......っ」
――目に映った予知と同じ光景......。
2つの首が胴体と離れ、切り口から血しぶきが上がった......。
「安田ぁ! 川村ぁ!」
これも予知なのではないか――そう思いたかった......。
しかし、目の前の映像は途切れない。現実だ......。
2人の首が、謎の攻撃によって刈り取られる――その運命を変えることはできなかった。
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