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シャドウズ  作者: saji
37/55

第33夜 脅威度A

この作品を見つけていただき、ありがとうございます。

最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

「5分で片付けてやるよ!」


 カイトは武器を取り出す。

 白く光る双剣――それが両手に、瞬時に現れた。


「5分ですね、承知しました」


 そのすぐ後ろで、時任(ときとう)も刀を構える。


「本気で......2人だけで浄化できると思ってんのか?」


 カイトが真正面からヴァンプに斬りかかった――。

 しかし、その攻撃は、触手のように伸びた影殻(アルム)で、難なく防がれる。


「サイちゃん!」


 横から時任が胴体に向けて刀を振る――。


「無駄だっつうの」

「【時限浄爆(リミット・パージ)】」


 時任の攻撃も影殻で受け止められてしまう。

 しかし――


「......っ! なんだこれ?」


 攻撃を受け止めた箇所には、時計のような印が浮かび上がった。


 時任が間を置かずに連続攻撃を繰り出す。

 少し戸惑いながらも、ヴァンプは攻撃を受け流していたが――そのたび、受け止めた箇所には印が浮き出てくる。


「くそが! なんなんだよ!」


 時任から距離を取り、印を振りほどこうと影殻をブンブンと振った。


「外れねぇじゃん......」

「どうしたー? あっ! もしかして、おじけづいたのかー!」


「なんだと――」


 ヴァンプはすんでのところで怒りを抑え、冷静に印について分析した......。


(時計のような印......時間か何かが関係してると考えるのが妥当か......効果はなんだ? いつ発生する? ......っ!)


 瞬間――ヴァンプの脳内で、一つの結論が導き出された。


「なっ......!」


 カイトが声をあげる。

 ヴァンプが自分の影殻を切り落としたのだ。


「能力についてはよく分かんなかったけど......結局切り落としちゃえば、俺に効果は生じないんじゃない?」


 印の付いた影殻が、切り口から黒い煙を出して次々と切り落とされる。

 ヴァンプの影殻には、時任の付けた印はもう一つもない。


「あらら......気づくの早いね~」

「その反応、間違いなかったか」


 ヴァンプは影殻を再生させ、カイトと時任に飛び掛かった――。


「次は俺の番だ」



 ■



「姉さん!」

「明希也!」


 地面に座り込んでいた美奈と抱擁(ほうよう)を交わす。


「もう会えないと思ってた......」

「大丈夫......もう大丈夫だから」


 姉さんを助ける――ただそのためだけに、俺は今まで行動してきた。危ない目にあっても......シスト市の残酷な真実を突きつけられても......俺は諦めなかった。


(結衣......やったぞ! 姉さんを助けられる!)


 それが......やっと報われて、俺の心は喜びで充ち溢れていた。


「でも、どうして明希也が?」


「パージストの人たちが救出に協力してくれたんだ。 俺も姉さんを助けたかったし、付いてきた。 まぁでも、俺は戦えないんだけどね」


 そう言って、俺は美奈に苦笑いする。


「全く......無茶するんだから......でも――」


 言葉が止まり、美奈の手が俺の頭の上にきて――


「来てくれてありがとう」


 優しくなでてきた......。


「や、やめろって! 」

「ふふっ」


 恥ずかしくて手を払いのけ――ようとしたが、今は素直になでられておこう......。


「あの~、感動の再会に水を差すようですみませ~ん。 私も混ぜてください~!」


 急にリナが、頭を美奈に差し出してきた。


「うわぁ! びっくりした~。 あなたは?」

「この子も、今シャドウと戦っているあの人たちも、パージストだ」

「えぇ!? そうなの!?」

「そうで~す!」


 きょとんとする姉。

 だが、すぐにそれを受け入れると、リナに微笑みを向けた。


「明希也を守ってくれてありがとう」


 そう言って、俺をなでた時と同じように、リナの頭もなでた。

 本当になでてくれるとは思っていなかったのか、リナは一瞬驚いた表情をしたが、すぐにニッコリとした笑顔を姉にみせた。


「姉さん、もう少しの辛抱だ。 工藤さんたちがあいつを倒してくれるから」


 闘っているカイトと時任の方に目をやる。


「......っ!」


 そこには、劣勢を強いられている二人の姿があった......。



 ■



「クハハハ! さっきまでの威勢はどうしたぁ! 防戦一方じゃねぇか!」


 10本の影殻を素早く動かし、2人を追い詰めていくヴァンプ。


「くそ! なかなか攻め込めない! サイちゃん! 挟み撃ちだ!」


 攻撃を分散させるために、時任がなんとか背後に回ろうとするが――


「遅いんだよ!」


 ヴァンプの素早い連続攻撃で、思うように立ち回れない状態だ。


 二人が常に視界に入るように、移動し、攻撃を繰り出している。

 さらに、影殻を切り落としたあの時から、時任の印が影殻に付かなくなっていた。


「どうやら、攻撃する意思がないようだと、印を付けられないみたいだな~!」


 知能もあり、2人がかりでも圧倒する強さをほこるシャドウ......。


(あれが......A級の脅威度か......)


 リナも向かわせたいが......上空に待機している2体のシャドウが襲ってくるかもしれない......。そうだ――


「工藤さん! 俺にもバリアみたいなの張れないですか! そうすればリナも戦闘に参加できる!」


「そうしたいのは山々ですが、結界も無敵というわけではないんです」


 はっと気づく――。

 美奈と生存者の周りに張られていた光の壁がいつの間にか、消えている。

 彼らに使っていた分のエネルギーを、外のシャドウから守る外壁に回している――ということだろうか。


(カイトさんたち2人で倒すしかないのか)


 そう思っていた矢先――


「私も手伝うぞ!」


 倉持がヴァンプに斬りかかっていった。


「おや? 誰かと思えば、倉持隊長ではないですか~?」


 軽くそれを受け止め、ヴァンプがしゃべりかける。


「もう茶番はおしまいだ。 全力でお前を倒す!」

「つれないですね~。 一緒に人々を騙してきたなかじゃないですか~」

「私も見て見ぬフリをしたのは事実――相応の報いを受けよう。 だが――」


 重い一撃をくり出し、ヴァンプを後ろに後退させた。


「お前だけは私が浄化する!」


「誰のおかげで隊長になれたと思ってんですかぁ?」


「こんな称号はいらん! 貴様らが偽装しやすいように、弱い者を上の階級に上げ、指揮権を持たせていたのだろう!」


「そうそう! あんたも扱いやすそうだったし、ほどほどの強さだったし、『隊長にしとけばいいや』みたいな?」


「きさまぁぁぁ!!」

「倉持さん! 一人じゃだめだ!」


 一気に距離を詰め、斬りかかろうとする倉持。


「行動が単調になってんぞ!」

「くっ!!」


 倉持が足を影殻に捕まれ――


「うぉあぁぁ!」


 遠くに吹っ飛ばされてしまった。


「倉持さん!」

「次はお前だ!」


 吹っ飛ばされた倉持に意識が向いた時任――その一瞬の隙を見逃さず、ヴァンプは攻撃を加えた。


 時任の体勢が崩れる――。


 すかさず、3本の影殻が重なった強力な攻撃――それを崩れた態勢のまま、なんとか受け止める。


 しかし――時任の手からは武器が離れてしまった。


(あのままじゃ攻撃を防げない! まずい!)


「まずひとり~!」


 畳みかけるように、ヴァンプが時任の体に狙いを定め――影殻を突き伸ばした。


「5分経過です」

「あぁ? あがぁっ......!?」


 ヴァンプが苦しみだし、動きが止まる。


「カイトさん」

「任せろ! 【断罪する雷電(エクス・ボルト)】!」


 その隙をつき、カイトはヴァンプに強烈な一撃を与えた。


「ぐぅああああああぁぁぁぁぁぁぁ......」


 絶叫をあげた後――ヴァンプが地面に倒れ込んだ......。



 見届けた。しっかりと......。

あいつが倒れる瞬間をーー。

姉さんを酷い目に合わせたムカつくシャドウが倒される瞬間をーー。


拳を握り、俺は小さくガッツポーズをした。


「カイトさんたちの......勝ちだ!」

読んでいただき、ありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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