第33夜 脅威度A
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「5分で片付けてやるよ!」
カイトは武器を取り出す。
白く光る双剣――それが両手に、瞬時に現れた。
「5分ですね、承知しました」
そのすぐ後ろで、時任も刀を構える。
「本気で......2人だけで浄化できると思ってんのか?」
カイトが真正面からヴァンプに斬りかかった――。
しかし、その攻撃は、触手のように伸びた影殻で、難なく防がれる。
「サイちゃん!」
横から時任が胴体に向けて刀を振る――。
「無駄だっつうの」
「【時限浄爆】」
時任の攻撃も影殻で受け止められてしまう。
しかし――
「......っ! なんだこれ?」
攻撃を受け止めた箇所には、時計のような印が浮かび上がった。
時任が間を置かずに連続攻撃を繰り出す。
少し戸惑いながらも、ヴァンプは攻撃を受け流していたが――そのたび、受け止めた箇所には印が浮き出てくる。
「くそが! なんなんだよ!」
時任から距離を取り、印を振りほどこうと影殻をブンブンと振った。
「外れねぇじゃん......」
「どうしたー? あっ! もしかして、おじけづいたのかー!」
「なんだと――」
ヴァンプはすんでのところで怒りを抑え、冷静に印について分析した......。
(時計のような印......時間か何かが関係してると考えるのが妥当か......効果はなんだ? いつ発生する? ......っ!)
瞬間――ヴァンプの脳内で、一つの結論が導き出された。
「なっ......!」
カイトが声をあげる。
ヴァンプが自分の影殻を切り落としたのだ。
「能力についてはよく分かんなかったけど......結局切り落としちゃえば、俺に効果は生じないんじゃない?」
印の付いた影殻が、切り口から黒い煙を出して次々と切り落とされる。
ヴァンプの影殻には、時任の付けた印はもう一つもない。
「あらら......気づくの早いね~」
「その反応、間違いなかったか」
ヴァンプは影殻を再生させ、カイトと時任に飛び掛かった――。
「次は俺の番だ」
■
「姉さん!」
「明希也!」
地面に座り込んでいた美奈と抱擁を交わす。
「もう会えないと思ってた......」
「大丈夫......もう大丈夫だから」
姉さんを助ける――ただそのためだけに、俺は今まで行動してきた。危ない目にあっても......シスト市の残酷な真実を突きつけられても......俺は諦めなかった。
(結衣......やったぞ! 姉さんを助けられる!)
それが......やっと報われて、俺の心は喜びで充ち溢れていた。
「でも、どうして明希也が?」
「パージストの人たちが救出に協力してくれたんだ。 俺も姉さんを助けたかったし、付いてきた。 まぁでも、俺は戦えないんだけどね」
そう言って、俺は美奈に苦笑いする。
「全く......無茶するんだから......でも――」
言葉が止まり、美奈の手が俺の頭の上にきて――
「来てくれてありがとう」
優しくなでてきた......。
「や、やめろって! 」
「ふふっ」
恥ずかしくて手を払いのけ――ようとしたが、今は素直になでられておこう......。
「あの~、感動の再会に水を差すようですみませ~ん。 私も混ぜてください~!」
急にリナが、頭を美奈に差し出してきた。
「うわぁ! びっくりした~。 あなたは?」
「この子も、今シャドウと戦っているあの人たちも、パージストだ」
「えぇ!? そうなの!?」
「そうで~す!」
きょとんとする姉。
だが、すぐにそれを受け入れると、リナに微笑みを向けた。
「明希也を守ってくれてありがとう」
そう言って、俺をなでた時と同じように、リナの頭もなでた。
本当になでてくれるとは思っていなかったのか、リナは一瞬驚いた表情をしたが、すぐにニッコリとした笑顔を姉にみせた。
「姉さん、もう少しの辛抱だ。 工藤さんたちがあいつを倒してくれるから」
闘っているカイトと時任の方に目をやる。
「......っ!」
そこには、劣勢を強いられている二人の姿があった......。
■
「クハハハ! さっきまでの威勢はどうしたぁ! 防戦一方じゃねぇか!」
10本の影殻を素早く動かし、2人を追い詰めていくヴァンプ。
「くそ! なかなか攻め込めない! サイちゃん! 挟み撃ちだ!」
攻撃を分散させるために、時任がなんとか背後に回ろうとするが――
「遅いんだよ!」
ヴァンプの素早い連続攻撃で、思うように立ち回れない状態だ。
二人が常に視界に入るように、移動し、攻撃を繰り出している。
さらに、影殻を切り落としたあの時から、時任の印が影殻に付かなくなっていた。
「どうやら、攻撃する意思がないようだと、印を付けられないみたいだな~!」
知能もあり、2人がかりでも圧倒する強さをほこるシャドウ......。
(あれが......A級の脅威度か......)
リナも向かわせたいが......上空に待機している2体のシャドウが襲ってくるかもしれない......。そうだ――
「工藤さん! 俺にもバリアみたいなの張れないですか! そうすればリナも戦闘に参加できる!」
「そうしたいのは山々ですが、結界も無敵というわけではないんです」
はっと気づく――。
美奈と生存者の周りに張られていた光の壁がいつの間にか、消えている。
彼らに使っていた分のエネルギーを、外のシャドウから守る外壁に回している――ということだろうか。
(カイトさんたち2人で倒すしかないのか)
そう思っていた矢先――
「私も手伝うぞ!」
倉持がヴァンプに斬りかかっていった。
「おや? 誰かと思えば、倉持隊長ではないですか~?」
軽くそれを受け止め、ヴァンプがしゃべりかける。
「もう茶番はおしまいだ。 全力でお前を倒す!」
「つれないですね~。 一緒に人々を騙してきたなかじゃないですか~」
「私も見て見ぬフリをしたのは事実――相応の報いを受けよう。 だが――」
重い一撃をくり出し、ヴァンプを後ろに後退させた。
「お前だけは私が浄化する!」
「誰のおかげで隊長になれたと思ってんですかぁ?」
「こんな称号はいらん! 貴様らが偽装しやすいように、弱い者を上の階級に上げ、指揮権を持たせていたのだろう!」
「そうそう! あんたも扱いやすそうだったし、ほどほどの強さだったし、『隊長にしとけばいいや』みたいな?」
「きさまぁぁぁ!!」
「倉持さん! 一人じゃだめだ!」
一気に距離を詰め、斬りかかろうとする倉持。
「行動が単調になってんぞ!」
「くっ!!」
倉持が足を影殻に捕まれ――
「うぉあぁぁ!」
遠くに吹っ飛ばされてしまった。
「倉持さん!」
「次はお前だ!」
吹っ飛ばされた倉持に意識が向いた時任――その一瞬の隙を見逃さず、ヴァンプは攻撃を加えた。
時任の体勢が崩れる――。
すかさず、3本の影殻が重なった強力な攻撃――それを崩れた態勢のまま、なんとか受け止める。
しかし――時任の手からは武器が離れてしまった。
(あのままじゃ攻撃を防げない! まずい!)
「まずひとり~!」
畳みかけるように、ヴァンプが時任の体に狙いを定め――影殻を突き伸ばした。
「5分経過です」
「あぁ? あがぁっ......!?」
ヴァンプが苦しみだし、動きが止まる。
「カイトさん」
「任せろ! 【断罪する雷電】!」
その隙をつき、カイトはヴァンプに強烈な一撃を与えた。
「ぐぅああああああぁぁぁぁぁぁぁ......」
絶叫をあげた後――ヴァンプが地面に倒れ込んだ......。
見届けた。しっかりと......。
あいつが倒れる瞬間をーー。
姉さんを酷い目に合わせたムカつくシャドウが倒される瞬間をーー。
拳を握り、俺は小さくガッツポーズをした。
「カイトさんたちの......勝ちだ!」
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