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シャドウズ  作者: saji
31/55

第28夜 絶望の群れ

この作品を見つけていただき、ありがとうございます。

最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


 パージストがショッピングモールに出現したシャドウを浄化するため、そして市民を救出するため、建物に突入する――という作戦内容であった。

 その突入部隊に倉持たち3人も入っていた。


 しかし、実際は作戦を行っているフリをしていただけ。

 出入口のシャッターを下ろして、市民をこの施設に閉じ込め、防犯室や他の場所に隠れろ――そう命令されていたそうだ。

 シャドウに施設内の市民を虐殺させる――それが終われば、屋上から出て任務完了、というとても信じられない計画だった。


 結局、最初からシャドウを浄化し、市民を救出する気などなかったのだ。

 突入部隊は20人ほどで、かなり少なく編成されており、倉持たち3人以外のパージストたちは、あろうことか、この状況を愉しんでいたそうだ。


 逃げ惑う人々、泣いて助けを乞う人々の姿を監視カメラから見て、ゲラゲラと笑う彼ら。

 その横で、倉持たちは必死に、必死に我慢していた――。



「......そして、私たちがここに来た......と」


 ホントに......ここまで最悪な都市になっていたんだな。

 滝川たちもそうだが、パージストたちも堕ちるとこまで堕ちてしまっている......。


 俺ら市民はこんな奴らに日々守られていたのか......。

 そう考えると、どうしようもなく怒りがこみあげてくる。


 やはりあいつらは、死んでよかった......のかもしれない。


「しかし......さきほどのお嬢さんの戦いは見事だった。 君が倒したやつはシスト市でも有数の実力者で、副隊長レベルだったというのに」


「へぇ~、そうだったんだ。 弱すぎて一等兵くらいかと思ってた~」


「き、君は階級はどれくらいなの?」


「え? わたし? う~んと――」


「彼女にまだ階級はありません」


「えぇぇぇ!!? ってことは......訓練生!?」

「すげぇぇ!! すげぇぇよ!!」


 隊長の後ろで安田と川村が、顔を見合わせて興奮する。

 リナはそれを見て「そうでしょ、そうでしょ」と言わんばかり胸を張っていた。


「倉持隊長、一つ質問いいですか?」


「あぁ、俺が答えられるものなら」


「どうして今日、こんな事件を起こしたんでしょう。 滝川の話では、外へこの都市の情報をできるだけ――というか1ミリも流したくないはずです。 さすがに、こんな大々的な襲撃では、外に広まる可能性が高い......。 何か知ってますか?」


 倉持は腕を組んで考え込んだ。


「ううむ......すまんが分からんな」


「ひょっとしたらですけど――」


 倉持の横から顔を出し、安田が口を開く。


「計画が最終段階に移行したんじゃないですかね?」


「最終段階......ですか」


「そうです。 計画の達成――つまり、シスト市の市民を外へ逃がさず、一気に飲み込む準備ができたから、騒ぎを起こした......とか?」


「いや、それだったら、こんな騒ぎを起こすより、市民が寝ている間に一斉に動き出した方がいい」


「うわっ......恐ろし」


 カイトは両手を肩に回し、身震いした。


「騒ぎを起こすこととは別に、何か目的があったのかもしれませんね」


「例えば?」


「我々をおびき出すため......とか」


「そうなると、狙いは霧生(きりゅう)さんっぽいね。 まっ、あの人ここに来てないけど」



 ショッピングモールの襲撃のような事件は、今まで一度も起きていない――。

 都市の大半がシャドウに支配されていたのであれば、いつでも今日のような襲撃を起こせるはず......。しかし約2年もの間、大きな襲撃もなく、俺は平穏な暮らしができていた。


 それを考えると、シスト市で今夜、計画を企てた奴らが本格的に動き出した――と考えるのが自然なのかもしれない。


「ところで、君たちはどこから入ってきたんだ? もしや、施設周辺で警備していたパージストたちを突破してきたのかね?」


「いえ、少し離れた場所から跳んできたんですよ」


「そうか、機動靴(モビリティ)か......。 とにかく、これでようやく......シスト市の現状が外に出たんだな やっとこの地獄からシスト市は解放されるんだな」


「隊長さん......それがね......俺らしか、シスト市(ここの)の現状知らないんだ~......あはは」


「なっ!? なんだとぉ!?」


 倉持隊長はそれを聞いて、声をあげた。


「本部との連絡は!? してないのか!?」


「えぇ、色々あって、この男の言うとおり、私たちだけしかシスト市の事実を知りません」


「どうして伝えなかったんだ!!」


 人が変わったように取り乱す倉持隊長。

 しばらく、しどろもどろに脈絡(みゃくらく)のない言葉を並べた後――頭を抱え込んで、深いため息を吐いた。



「......終わりだ。 君たちの様に外から計画を潰そうとする者が現れた時は、希望の光が差し込んだ――と思っていたのに......」


「安心してよおじさん! わたし強いからどんな敵でも倒せるよ!」


「......君たちも、さっき聞いただろう。 シスト市でシャドウ化した者、殺された者たちの数を......」



 俺はリナと戦ったタカの言葉を思い出した――。


 ――約25万人以上。

 その圧倒的な数字を思い出すだけで、とてつもない絶望が押し寄せる......。


「いくら強くても、圧倒的な物量の差がある......。想像できるか? この都市に潜んでいる大量のシャドウが一斉に街を襲う光景を――恐怖で夜も眠れん」


 想像できなかった――いや、したくなかった。

 その光景が頭に浮かんでくる前に、俺は思考を停止させた。


「君たちはどうしてここに来たんだ。 計画を潰すつもりであれば、普通は中央本部を始め、支部から支部へとシスト市の事実を伝えるだろうに」


「まぁ......シスト市に来たのは、滝川から計画の証言を取ること――と、この少年の保護ですね」


「証言の方は分かるが......」


 倉持隊長が俺を鑑定でもするかのように、観察してきた。


「なぜこの少年を?」


「それは言えません」


「えぇ!? なんでですか! めちゃくちゃ気になりますよ!」


「教えてくれたって――」

「すみません。 ちょっといいですか?」


 時任(ときとう)が話に割って入ってきた。

 あまり喋らない人だから――いきなり話し出すのを見ると、俺は毎回少しビクッとしていた。


「あまり無駄話をしている時間はないのでは? 一刻も早く施設内の情報を集めないと」


「そうですね......。 みなさん、切り替えましょうか」


 工藤が両手を打ち合わせた。


「倉持隊長、今の施設内の状況を分かる範囲で教えてください」


「あ、あぁ......」


 倉持は途端(とたん)に暗い顔になった。


「どうしました?」


「......残念だが、ショッピングモール内には、もうほとんど生き残りはいない。 君たちが誰かを救出するつもりだったのなら、少し......遅かったかもしれない」


「そんなっ!?」


 俺はすぐに奥の方にある――監視カメラの映像が映る、何台ものモニターの前に走り寄った。


(姉さん......姉さんは!?)


 端のモニターから順に、視点を移動させていく。


「......倉持さんたちは、映す映像の切り替えの仕方は分かりますか?」


「あ、あぁ」


「彼が探している人物が見つかるまで、映像を切り替えていってください」


「分かった。 安田、川村頼んだ」


 二人は返事をして、デスクの前に立ち、パソコンを操作していった。



 切り替わっていく映像――動いているのは目だけだ。


 ――集中する。

 正確に画面の向こうの情報を読み取っていく――すると、


「......っ!! 切り替え、止めてください!」


 モニターの動きが止まる......。

 俺の目も、一つの映像を映す一台のモニターに留まっていた。



「まじ......かよ」


 ――ぞっとした。その異様な光景に。


 目から入るその光景が、恐怖を――絶望を湧き上がらせた。



「うわ......あれってもしかして」

「あのカメラから、音声も拾ってください!」


 ――そこには、大量にうごめく人の波が見えた。


 人なら良かった......けれど、あれは――



 紫色に光る眼が不気味に揺れる......。

 もう聞きたくなかった、あのうなり声が聞こえてくる......。

 あれは――


「全部......シャドウだ......」


 画面全体を覆いつくすシャドウ......。

 いったい、何体いるのか想像もつかない。



「あそこって......1階だよな? なんでこんなにシャドウが集まってるんだよ」


「すごい数だね~、私たちのいる3階には全然シャドウいなかったのって、1階に集まってたから?」


 ただ――そのシャドウの群れは、大きな円の空間を作っていた。

 その円の中には、さらに人の群れが見える。


「人......か?」


「ここの場所を映している別な監視カメラがあるはずです! 別なモニターにも映してください!」


 俺はモニターに目を向けたまま、そう言い放った。


 また、次々にモニターが切り替わる。

 ほとんどのモニターにシャドウの群れ――中心の人の群れが映り込む。


「あれは......人だ! 生存者だ!」


 カイトの言うとおり、円の中央で身を寄せ合っている人たちは、シャドウではなかった。

 恐怖で震える大人たち......。

 泣いている女性に、子供までいる。


 いったい......何をしているんだ――。


「......っ!! あそこのカメラ! あのカメラをズームしてください!!」


 俺は再び、指示を出した。

 一台のモニターは、人質の群れの中を拡大していく......。


 俺の目は、その人だかりの中にいる――あるひとりの人物だけに向けられていた。


 近づくにつれ、早くなる鼓動......。

 まさか――あそこにいるのは――あのシャドウの群れの中で、恐怖に染まった顔をしているのは――



「......ねえ......さん」


読んでいただき、ありがとうございました。


やっと......姉の姿を確認できた明希也!!

しかし、状況は最悪なようで――果たして、どうなるのか!?


次回もよろしくお願いします!

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