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シャドウズ  作者: saji
30/55

第27夜 許されぬ罪

最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

「どうだった!? 私の活躍は!」

「え......っと......」


 返答に困った......。


『すごかったよ』とか、そういう言葉を言う場面なのかもしれないが......。

 いや――もちろんすごかったのだが......俺はうまく口を動かせなかった。


 シャドウを軽く浄化していた時のリナを目にした時、俺は『めちゃくちゃ強い少女』という印象を抱いた。

 ただ......相手が人となると、俺の中で少し見方が変わった――。


 人との戦闘でも、斬るのに躊躇がない。

 今はリナに恐怖の感情を抱いてしまっている......。


「どしたの......? あきやくん?」


 ただ、俺が怯えていることに気付いてしまったら......リナはきっと悲しむ。

 悟られないように振る舞わなければ――。


「けが......とかない?」


 それが俺の口から、ようやく出てきた言葉だった。


(ちょっとぎこちなかったか......?)


「......うん! かすり傷一つないよ~! すごいでしょ!」


 さっきまで、人間離れした戦闘をしていた少女とは思えない、とても無邪気な笑顔だった。


(よかった......)


 どうやら、悟られていないようだ――と安堵する。



「リナ、全員殺したんですか?」


 工藤がリナに聞いた。


「う~ん、殺すつもりでみんな斬っちゃったし......たぶん今息してても、助からないと思うよ」


 リナに斬られ、動かなくなったパージストたちを横目で見た。

 俺の見える範囲で――4~5人いたが、動いてるパージストはいなかった。


 この人たちがしてきたことはとても許せない......。

 でも、もう少し話せる機会はあったのではないだろうか――。

 殺す必要はなかったではないか――。

 そう考えてしまう。


「明希也くん、もしかして『あいつらが可哀想』とか考えてます?」

「え?」

「一つ言っておきますけど。 彼らのしてきたことは最悪です。人々を騙し、見離し、見殺しにし、自分たちだけが安全な立場をとっていた。報いを受けるのは当然と考えましょう」

「そう......ですけど」


 やはり人の「死」を見るのは、気分がよくなかった......。


「あきやん、極悪人の死刑囚全員に同情してたら身が持たないっしょ?」

「え?」

「つまり、そういうことよ」

「......死んで当たり前......ってことですか」

「俺らも殺されたくはないしね」


 そう言われてしまうと、俺は何も言えなくなった。

 何も知らず、のうのうと生きてきた俺と、パージストのカイトたちでは、経験も力も考え方も違う......。

 そういう考え方もあるのだと、俺は黙って心に留めることにした。


「てか、リナっちは加減が下手だからな~、一人くらい残せばよかったのに」

「そうですね、敵側の情報を集められると思ったんですが――」


「え? 残ってるよ? ほら」


 リナは防犯室の近くを指さした。


 そこには三人ほど、パージストの軍服を着た男たちが立っていた。


「我々も罪を償う覚悟はできている。 煮るなり焼くなり好きにしろ」


 彼らは両手をあげ、無抵抗の意を示す。


「......リナ」

「なに?」

「彼らを斬らなかった理由は?」

「え~とね......いい人そうだったから斬らなかったよ」

「いい人......って、そんなの分かんないだろ」


 全く根拠のない理由に、俺は思わず突っこんだ。


「私には分かるんだよ~。 生まれつき人の出すオーラ? 的なやつが見えるの~! ホントだよ!?」

「いやいや、そんなわけ――」

「あきやくんのオーラはとっても優しくて、暖かくて好きだよ~」

「は、なっ!?」


 いきなり何言ってんだ。この子は――。

 不意打ちでそんなことを言われたら、めちゃくちゃ照れくさいじゃないか。


「......まぁ、ここはいつも通り、リナの目を信じましょうか」

「だね」



 ■



 三人のパージストと話をするため、全員で防犯室に入った。


 4台もの横に長いデスクと、その上にパソコンが多く設置されており、一番奥には複数のモニターが上下左右に展開している。そのいくつかは画面が壊れていたが、情報を集めるのにさほど支障はない数だった。

 ショッピングモールの大きな見取り図もあり、情報収集するにはまさに――


(うってつけの場所ってわけだ)


 雑誌やスナック類のお菓子、お酒など、ところどころに置いてあったのは、さっきのパージストたちの物なのだろう――それは気にしないようにした。


 それよりも、目に留まったのは中の状態――電灯は全て壊れており、中はパソコンやモニターの光だけで照らされている。

 特に床を見るとひどい有様で、大量の血で濡れた書類が一面に広がっていた。

 壁や大きな棚にも、破損個所が多々見受けられる。


 この場所にもシャドウの襲撃があったのか――それとも、さきほどのパージストたちがやったのか――。

 とりあえず、防犯室の機器が全部故障――とかにはなっていないようで、情報は集められることは確かだった。




 デスクの椅子を一箇所に集め、三人のパージストたちと共に円の形をとって座った。


「聞きたいことが山ほどあります......が、まずは自己紹介からですかね」


 工藤から始まり、俺たちは自己紹介を軽く済ませた。そして、俺たちが――というか、工藤たちがシスト市のパージストではないこと、滝川からこの都市の陰惨な事情を聞いていることなどを話した。


 三人は滝川から直接話を聞いたということに、心底驚いているようだった。だが、工藤たちの話を聞いて――


「今さらこんなことをしても、許されるはずがない......それでも、我々がシスト市のパージストを代表して謝罪を」


 椅子から立ち上がり、地面に頭をつけて土下座をした。


「人々を守るのが、パージストの使命だというのに......圧倒的な権力と支配力に、我々はなすすべなく、滝川の駒として使われる道を進んでしまった......本当に申し訳ない」


 表情は下を向いていて見えなかったが、その声から、悔しさと怒りの感情が強く伝わってきた。


「......最初は滝川の計画に加担するしかないなら、仲間を集めて、死を覚悟で歯向かおうとも考えた......しかし、どうせならやつらの内側から、計画の情報を得て、どうにか阻止できないか探ることにした」


「なるほどね~」


「しかし、調べていくうちに、シスト市を支配する計画には、滝川以上に権力を持つやつらが関わっていたのだ」


「我々も、この計画を進めていたのは滝川だけではないと考えていました。 外に一切情報を漏らさず、こちらの情報は隠ぺいする。 シャドウと手を組めるほどの力を持ち、上手く市民をコントロールした......こんなことができるのは――」


「工藤さん、そこから先の言葉は控えた方が。 リナがいますので」


 時任が止めに入った。

 俺には工藤が想像しているやつのことも、時任が工藤の言葉を止めた理由も、よく分からなかった。


「ふぇ? 呼んだ?」


 リナはさきほどの戦闘で疲れたのか、ちょうど眠たそうにあくびをしていたところだった。


「あぁ、君の想像している奴らが関わっていると、私たちも踏んでいる」


「そうなると、かなり厄介ですね」


「こりゃ、想像以上の任務だったかも......」


「とりあえず、あなたたちの事情は分かりました。 裏で動いていたとはいえ、計画に加担したことは許されない――それは分かっていますね」


「あぁ、理解している」


「ですが、ここはひとまず協力しましょう。 相手が奴らなら仲間は多い方がいいですから。 あなたたちの処遇はこの都市の問題をどうにかしてからにしましょうか」


「......っ! もちろん! 俺たちにできることなら何でも協力しよう」


「リナっちの言うとおり、いい人たちっぽいね~。 俺も賛成~」


 三人のパージストは――隊長の倉持、二等兵の安田、川村と名乗ると、次にショッピングモールで起こった出来事について話を進めた。


読んでいただき、ありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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