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シャドウズ  作者: saji
29/55

第26夜 パージストVSパージスト

この作品を見つけていただき、ありがとうございます!

最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


「あんたら! こんなことしていいのかよ!!」


俺はリナと戦っていたパージストに向かって怒りを放った。


「......なにが?」


「なにが......って、一般人を容赦なく殺して、シャドウとも手を組んで! こんなことが許されるわけ――」


「うーん......まぁ、俺らはもう手遅れだから、今さら何言われても......って感じなんだよね」


「おーい、外なんか騒がしいけど、どうした?」


防犯室からぞろぞろとパージストの軍服を着たやつらが出てきた。


「ちょっと生き残りの掃除してただけ」


「手伝おうか~? タカ」


「いらん」


リナと戦っていたやつは『タカ』というやつらしい。

あいつを含めて、10人いる。

この人たちも全員、計画の共犯者なのか......。


「なになに? もしかして、まだ正義感強いパージストいるの?」


防犯室から出てきたやつらのうち、一人が俺らを珍しそうに観察してきた。


「諦めなって~。 大人しく家に帰んな~。 まっ、帰れたらの話だけど! あはは!」

「いや、ここで殺さないと、外にばらされんだろ」

「ばらされても、どうせすぐにシャドウに殺されるよ」


「あんたら......」


次々に聞こえてくる、パージストたちの信じられない会話......。

拳を強く握りしめる――。

震えるほど握りしめながら、俺はそいつらを睨みつけた。


「あんたらはパージスト失格だ!」


「......お前、この都市が今どれくらいシャドウに侵攻されてるか、知ってる?」


突然の質問――。

俺は無言の圧力でそれを返した。


「......シスト市の人口はおよそ30万人、シャドウに殺された、もしくはシャドウ化した奴らは、俺の調べによれば――」


(にら)んでいた俺に対し、そいつはまっすぐ見返してきた。


「約25万人以上だ」



――俺はそれを聞いて、目を見開いた。


「そ......そんな......」

「ここら辺は、()()()()()()()()()()ってこともあって、シャドウの侵攻はまだそんなに進んでないようだけど、それも時間の問題だね」


滝川から話は聞いていたとはいえ、今のシスト市がとんでもない状態にあることが、その数字からはっきりと理解できた。


(その数字が本当なら、俺たちが今までシャドウに襲われなかったのは――)


もし、霧生(きりゅう)たちがこの街に来なかったら――。

もし、霧生たちの到着が遅れていたら――。

何かが一歩ズレただけで、俺や結衣、美奈だってシャドウに襲われていたかもしれない......。


――今生きているのは偶然。運がよかった。


そう考えただけで、冷たい恐怖が全身に走った。


「ある日、滝川市長から話を聞かされた。 侵攻計画のことを......。 最初は動揺しまくったが、もはや従うしかなかった。 だって――」


タカと呼ばれていたパージストは、何かを言いかけた――が、途中で言葉を止めてしまった。


「いや......お前らに話しても意味ないか」


「でも一つ疑問なんだよね~」


カイトが話に入ってくる。


「市長とシャドウが手を組んでも、ある程度限界はあるでしょ。 今の今まで外に計画がばれなかったっていうのは、正直信じられないな~」


「......それもお前らが知る必要はない」


たかは再び鋭い刃を俺たちの方に構えた。


「さっさと、殺されろ」


「工藤さ~ん、この人たち殺してもいいんだよね?」


リナの口からとんでもない言葉が飛び出てきた。

表情を見ると、少し笑ってはいるが、目が冷たい気がする。


――少しリナが恐くなった。

彼女はその......「殺す」という言葉を言いなれている口ぶりだったから――。


「いいえ、できるだけ生け捕りにしてください」


「えぇ~。 私、そういうの苦手なの知ってますよね~」


「リナっち、それだったら俺らが代わろうか?」


リナは腕を組むと、眉間に少し皺を寄せながら考える素振りを見せた。


「うーん......これから強敵が出てくるかもしれないし~......準備運動はしておきたいんだよね~......」


「準備運動......だと?」


直後――タカは凄まじい速さで距離を詰め、リナに斬りかかった。


「リナぁ!」


「......っ! もう、いきなりだな~」


リナは慌ててタカの一撃を受け止めた。


「お前みたいなガキに舐められるなんてな」


タカが鋭い睨みをリナに向ける。


「だってあなた、私より弱いもん」

「へぇ、だったら......」


タカの刀が白く光り始め――


「さっきまでのが、本気だと思ったか?」

「......っ!」


激しい音と共に光が爆発し、リナの武器を弾いた。

刀を大きく上に弾かれ、リナの態勢(たいせい)が崩れる。

まずい――。


「死ね!!」


タカの追撃がリナを襲う――。


しかし、リナは後方にバク転し、タカの刃をすんでのところで回避した。


「っとと! なに今の~!? あっぶないな~!」


武器を構えながら、リナはタカから距離を取る。


「後ろに弾かれた遠心力を利用した......か。 ただのガキじゃないようだ」


あんな動きができるなんて......。

リナの身体能力と反応速度は自分の想像をはるかに超えている――そう感じた。


「......攻撃を直に受ければ、衝撃で弾かれる......とかそんな感じかな?」


「まぁ、正解だ。 どうする? 今すぐ降伏すれば、楽に殺してやるけど」


「いやだね! べぇ~っだ!」


舌を出し、まぶたの下を指で下げるリナ。


「それなら――」


リナは武器を構え、タカに向かって走り寄る。


「攻撃を受けなければいいんでしょ?」

「やってみろよ」


リナは体の力を抜くと、刀で攻撃を受けず、次々と回避していった。


(すごい! すごいぞ!!)


「くっ......! このっ!」


一撃もリナに当たらないことに、冷静さを欠くタカ。

あいつの大振りになった攻撃をリナは見逃さなかった――。


リナはその大振りの攻撃を素早く避け、懐に入った。


(いける!!)


「......なんてな」


タカが不気味な笑みを浮かべた。


リナが攻撃しようとしたその時――タカの体が白く光り始めた。

次の瞬間――先ほどと同様、激しい音と共に白い光が放出された。

衝撃がリナを襲い、後方に一気に吹き飛ばす――。


(そんな......武器だけでなく、体からもあの衝撃を出せるのか!?)


「まだだ!」


リナが吹き飛んだ方向に、タカは武器を構える。

そして、今度は刀が白く光り始め――


「おらぁ!!」


大きく武器を振りぬいた。


すると、リナが吹き飛んだ方向に白い光がいくつも――いくつも飛んでいく。壁か何かにそれがぶつかり、大きな爆発音が鳴り響く。


(あれは......何かの攻撃なのか!?)


リナがどこに吹き飛んだのか、今どういう状況なのかは暗闇でよく見えない。

だが、吹き飛ばされ、態勢が崩れた状態で、あの速い追撃を受けてしまったら――。


「あきやん、飛ぶ斬撃見るの初めて?」


カイトが陽気に声をかけてきた。

俺は二人の激しい戦闘に声が出ない状態だったが、カイトのその余裕そうな様子を見て、思わず声を放った。


「ど、どうして助けに入らないんですかぁ!? あれじゃリナが殺される!」


動揺しながら、カイトの肩をがっしりとつかむ。


「まぁまぁ、心配ないから見てなって」


「心配ない......って」


よくそんな言葉が出てくるな......。

工藤(くどう)時任(ときとう)も、黙って見ているようだし......。


助けに入りたい......が、俺には何もできることがない。


(今は......リナの戦闘を見守るしかない......)


悔しいけど、俺ができることはそれしかないんだ。

そう思いながら、俺は怒りや悔しさ――様々な感情を、歯を食いしばって抑えた。



「もう終わりかな」


タカが軍服のほこりを払う。


「やっぱり......すぐ終わっただろ?」


タカの矛先が、今度は俺たちの方へと向く。


「お前らもすぐ殺してやるよ」

「くっ......!」


タカが攻め込む態勢に入った――その時、


「ちょっと~? まだ終わってないよ~」


暗闇から声と共に、ひょこっとリナが現れた。


「リナ! よかった......。 無事だったんだな」

「よゆーだよ! あんな攻撃」


俺はピースサインをするリナを見て、心底ホッとした。


「あれれ? ちょっとは本気出してたんだけどな~」


タカはリナの方へと振り向き、首を傾げた。


「まっ、いいや。 今度は確実に仕留めてやる」



再び、構えをとる二人――。

リナは――本当に勝てるのだろうか......。


「安心してね、あきやくん。 次で決めるから」


不安そうに見守る俺に、リナが笑みを向けてくれた。


(どうしてきみは......そんなに冷静なんだ)



――俺はこの状況で笑っていられるリナという人間が......よく分からなかった。


でもきっと――きっと大丈夫。不思議とそう思える。

彼女はそんな存在だった......。


「そうだな。 次で決めるか」


タカの体と武器――両方が白く発光し始める。

リナは深呼吸をし、静かに構えを取る。


二人は互いににらみ合い、そして――



一気に距離を詰め合った。


「【閃光ノ印(せんこうのいん)――(ハク)】」


「おらぁ!!」


二人の刀が激しくぶつかる。

いつの間にか――リナの武器にも白い光が宿っていた。


「強化したところで、俺の技は防げねぇよ」


(まずい! あいつの攻撃を直接受けたら――)


また謎の衝撃で、武器ごと態勢を崩されてしまう。

リナ自身が一番、あの技の脅威を分かっているはずだ。

それなのに――


(どうして......)


「死ね」

「【閃光ノ印(せんこうのいん)――(リョク)】」



強い白色の光がタカから放たれる――。

直後――俺の方へと重い空気が、どっと押し寄せてきた。その突風に思わず目を閉じ、腕で顔を隠す。


今までで一番衝撃が強い......。

だいぶ距離があるとというのに、すさまじい圧力がここまでくる......。

それは音の大きさ、光の量などから容易に判断できるものだった。


突風が止む――。


確かめるのが恐い――恐かった。

でも......俺のことを「友達」と言ってくれたリナの――彼女の戦いを最後まで見届けなくては――。

彼女の強さを信じて目を開けなければならないんだ。


(リナ......無事でいてくれ!)


状況を確認するため、俺は目を開けた。



「......っ!」


リナは吹き飛ばされてはいなかった。

タカとつばぜり合いの状態を保っている。


「まじ......かよ」


タカは信じられないといった様に、目を見開いた。

その表情には、驚愕(きょうがく)と――少し恐怖に歪んでいるようにも感じられる。


あの技をどう防いだのかは分からない――が、俺は一つだけ、リナの変化に気が付いた。


彼女の体――そして武器が、緑色の光をまとっていたのだ。

それがタカの技を防いだことと何か関係があるのだと、俺は直感した。


「こんなガキが......霊力(シン)のタイプを変えられるわけ――」

「【閃光ノ印(せんこうのいん)――(セイ)】」

「......っ!」



――明希也には、リナの姿を捉えることができなかった。



鋭い空気の流れがタカを突き抜け――その直後、リナのいた場所から突風が押し寄せる。

突風から顔を守っていた明希也の耳を、風を斬る音が一瞬で過ぎ去った――。


さきほど、シャドウを倒した時と同じく、リナは突然姿を消したのだ。



「......くそ」


タカが地面に力なく倒れた。

倒れたところから、血が広がっていく――。



「え......?」

「あれ......?」


タカが倒れたのと同じくして、違和感を感じ、声をこぼすパージストたち......。

そして――



同時に血しぶきをあげ、声をあげることもなく彼らは倒れていった......。



(い......いったい何が......)


誰一人として、何が起こったのか理解できていないようだった。

もちろん、俺も......。


急に人がバタバタと血を流して倒れ、



「一瞬で、全員を斬ったんだ」

「え?」


呆然(ぼうぜん)と立ち尽くす俺に、カイトがそう言った。


「リナっちが戦ってた奴いたじゃん? そいつ斬るついでに、他のパージストたちのことも、斬ったんだよ」

「......そ」


――そんなことができる人間がいるのか。


とてもじゃないが、信じられない......。

現実離れした出来事に、俺は動揺を隠せないでいた。


「あきやん......リナっちは君と同じく、まだ子供だ。けどね、リナっちもシャドウと戦う兵士なんだ。普通の人間には到底太刀打(たちうち)ちできない怪物と、日々戦ってるんだよ」



俺は自分と歳の変わらない少女が、シャドウと戦い、人を斬り、武器を振るうという現実をなかなか認識できずにいた......。


「シャドウと戦うパージストは人々を守るのが仕事――強くないといけないんだ......。 まっ、リナっちの歳であの強さは異常なんだけどね!」


しかし、彼女の戦う姿を見て、カイトの言葉を聞き、その事実を――俺は徐々に認識していくしかなかった。



「......リナ」


大きく伸びをし、リラックスしているリナを、俺はただ見ていた。


彼女は、今までどんな景色を見てきたのだろう......。

どんな人生を歩んできたのだろうか......。


――何も言葉が出てこない。

彼女とは、住む世界が違う――そんな感じがした。


「......あははっ! 素人が初っ端(しょっぱな)から見る戦闘が、リナっちのだと、そういう反応するのも無理ないよね~ 」


と言って、カイトは俺の背中を優しく押した。


「おーい、終わったよ~!」


俺たちの視線に気づき、リナがこちらに手を振ってくる。


カイトの言葉が頭をよぎる――。

俺は手を振り、こちらに笑みを向ける少女に、どう反応すればいいか分からなくなっていた。


読んでいただき、ありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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