第26夜 パージストVSパージスト
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「あんたら! こんなことしていいのかよ!!」
俺はリナと戦っていたパージストに向かって怒りを放った。
「......なにが?」
「なにが......って、一般人を容赦なく殺して、シャドウとも手を組んで! こんなことが許されるわけ――」
「うーん......まぁ、俺らはもう手遅れだから、今さら何言われても......って感じなんだよね」
「おーい、外なんか騒がしいけど、どうした?」
防犯室からぞろぞろとパージストの軍服を着たやつらが出てきた。
「ちょっと生き残りの掃除してただけ」
「手伝おうか~? タカ」
「いらん」
リナと戦っていたやつは『タカ』というやつらしい。
あいつを含めて、10人いる。
この人たちも全員、計画の共犯者なのか......。
「なになに? もしかして、まだ正義感強いパージストいるの?」
防犯室から出てきたやつらのうち、一人が俺らを珍しそうに観察してきた。
「諦めなって~。 大人しく家に帰んな~。 まっ、帰れたらの話だけど! あはは!」
「いや、ここで殺さないと、外にばらされんだろ」
「ばらされても、どうせすぐにシャドウに殺されるよ」
「あんたら......」
次々に聞こえてくる、パージストたちの信じられない会話......。
拳を強く握りしめる――。
震えるほど握りしめながら、俺はそいつらを睨みつけた。
「あんたらはパージスト失格だ!」
「......お前、この都市が今どれくらいシャドウに侵攻されてるか、知ってる?」
突然の質問――。
俺は無言の圧力でそれを返した。
「......シスト市の人口はおよそ30万人、シャドウに殺された、もしくはシャドウ化した奴らは、俺の調べによれば――」
睨んでいた俺に対し、そいつはまっすぐ見返してきた。
「約25万人以上だ」
――俺はそれを聞いて、目を見開いた。
「そ......そんな......」
「ここら辺は、市長の住んでるところってこともあって、シャドウの侵攻はまだそんなに進んでないようだけど、それも時間の問題だね」
滝川から話は聞いていたとはいえ、今のシスト市がとんでもない状態にあることが、その数字からはっきりと理解できた。
(その数字が本当なら、俺たちが今までシャドウに襲われなかったのは――)
もし、霧生たちがこの街に来なかったら――。
もし、霧生たちの到着が遅れていたら――。
何かが一歩ズレただけで、俺や結衣、美奈だってシャドウに襲われていたかもしれない......。
――今生きているのは偶然。運がよかった。
そう考えただけで、冷たい恐怖が全身に走った。
「ある日、滝川市長から話を聞かされた。 侵攻計画のことを......。 最初は動揺しまくったが、もはや従うしかなかった。 だって――」
タカと呼ばれていたパージストは、何かを言いかけた――が、途中で言葉を止めてしまった。
「いや......お前らに話しても意味ないか」
「でも一つ疑問なんだよね~」
カイトが話に入ってくる。
「市長とシャドウが手を組んでも、ある程度限界はあるでしょ。 今の今まで外に計画がばれなかったっていうのは、正直信じられないな~」
「......それもお前らが知る必要はない」
たかは再び鋭い刃を俺たちの方に構えた。
「さっさと、殺されろ」
「工藤さ~ん、この人たち殺してもいいんだよね?」
リナの口からとんでもない言葉が飛び出てきた。
表情を見ると、少し笑ってはいるが、目が冷たい気がする。
――少しリナが恐くなった。
彼女はその......「殺す」という言葉を言いなれている口ぶりだったから――。
「いいえ、できるだけ生け捕りにしてください」
「えぇ~。 私、そういうの苦手なの知ってますよね~」
「リナっち、それだったら俺らが代わろうか?」
リナは腕を組むと、眉間に少し皺を寄せながら考える素振りを見せた。
「うーん......これから強敵が出てくるかもしれないし~......準備運動はしておきたいんだよね~......」
「準備運動......だと?」
直後――タカは凄まじい速さで距離を詰め、リナに斬りかかった。
「リナぁ!」
「......っ! もう、いきなりだな~」
リナは慌ててタカの一撃を受け止めた。
「お前みたいなガキに舐められるなんてな」
タカが鋭い睨みをリナに向ける。
「だってあなた、私より弱いもん」
「へぇ、だったら......」
タカの刀が白く光り始め――
「さっきまでのが、本気だと思ったか?」
「......っ!」
激しい音と共に光が爆発し、リナの武器を弾いた。
刀を大きく上に弾かれ、リナの態勢が崩れる。
まずい――。
「死ね!!」
タカの追撃がリナを襲う――。
しかし、リナは後方にバク転し、タカの刃をすんでのところで回避した。
「っとと! なに今の~!? あっぶないな~!」
武器を構えながら、リナはタカから距離を取る。
「後ろに弾かれた遠心力を利用した......か。 ただのガキじゃないようだ」
あんな動きができるなんて......。
リナの身体能力と反応速度は自分の想像をはるかに超えている――そう感じた。
「......攻撃を直に受ければ、衝撃で弾かれる......とかそんな感じかな?」
「まぁ、正解だ。 どうする? 今すぐ降伏すれば、楽に殺してやるけど」
「いやだね! べぇ~っだ!」
舌を出し、まぶたの下を指で下げるリナ。
「それなら――」
リナは武器を構え、タカに向かって走り寄る。
「攻撃を受けなければいいんでしょ?」
「やってみろよ」
リナは体の力を抜くと、刀で攻撃を受けず、次々と回避していった。
(すごい! すごいぞ!!)
「くっ......! このっ!」
一撃もリナに当たらないことに、冷静さを欠くタカ。
あいつの大振りになった攻撃をリナは見逃さなかった――。
リナはその大振りの攻撃を素早く避け、懐に入った。
(いける!!)
「......なんてな」
タカが不気味な笑みを浮かべた。
リナが攻撃しようとしたその時――タカの体が白く光り始めた。
次の瞬間――先ほどと同様、激しい音と共に白い光が放出された。
衝撃がリナを襲い、後方に一気に吹き飛ばす――。
(そんな......武器だけでなく、体からもあの衝撃を出せるのか!?)
「まだだ!」
リナが吹き飛んだ方向に、タカは武器を構える。
そして、今度は刀が白く光り始め――
「おらぁ!!」
大きく武器を振りぬいた。
すると、リナが吹き飛んだ方向に白い光がいくつも――いくつも飛んでいく。壁か何かにそれがぶつかり、大きな爆発音が鳴り響く。
(あれは......何かの攻撃なのか!?)
リナがどこに吹き飛んだのか、今どういう状況なのかは暗闇でよく見えない。
だが、吹き飛ばされ、態勢が崩れた状態で、あの速い追撃を受けてしまったら――。
「あきやん、飛ぶ斬撃見るの初めて?」
カイトが陽気に声をかけてきた。
俺は二人の激しい戦闘に声が出ない状態だったが、カイトのその余裕そうな様子を見て、思わず声を放った。
「ど、どうして助けに入らないんですかぁ!? あれじゃリナが殺される!」
動揺しながら、カイトの肩をがっしりとつかむ。
「まぁまぁ、心配ないから見てなって」
「心配ない......って」
よくそんな言葉が出てくるな......。
工藤や時任も、黙って見ているようだし......。
助けに入りたい......が、俺には何もできることがない。
(今は......リナの戦闘を見守るしかない......)
悔しいけど、俺ができることはそれしかないんだ。
そう思いながら、俺は怒りや悔しさ――様々な感情を、歯を食いしばって抑えた。
「もう終わりかな」
タカが軍服のほこりを払う。
「やっぱり......すぐ終わっただろ?」
タカの矛先が、今度は俺たちの方へと向く。
「お前らもすぐ殺してやるよ」
「くっ......!」
タカが攻め込む態勢に入った――その時、
「ちょっと~? まだ終わってないよ~」
暗闇から声と共に、ひょこっとリナが現れた。
「リナ! よかった......。 無事だったんだな」
「よゆーだよ! あんな攻撃」
俺はピースサインをするリナを見て、心底ホッとした。
「あれれ? ちょっとは本気出してたんだけどな~」
タカはリナの方へと振り向き、首を傾げた。
「まっ、いいや。 今度は確実に仕留めてやる」
再び、構えをとる二人――。
リナは――本当に勝てるのだろうか......。
「安心してね、あきやくん。 次で決めるから」
不安そうに見守る俺に、リナが笑みを向けてくれた。
(どうしてきみは......そんなに冷静なんだ)
――俺はこの状況で笑っていられるリナという人間が......よく分からなかった。
でもきっと――きっと大丈夫。不思議とそう思える。
彼女はそんな存在だった......。
「そうだな。 次で決めるか」
タカの体と武器――両方が白く発光し始める。
リナは深呼吸をし、静かに構えを取る。
二人は互いににらみ合い、そして――
一気に距離を詰め合った。
「【閃光ノ印――白】」
「おらぁ!!」
二人の刀が激しくぶつかる。
いつの間にか――リナの武器にも白い光が宿っていた。
「強化したところで、俺の技は防げねぇよ」
(まずい! あいつの攻撃を直接受けたら――)
また謎の衝撃で、武器ごと態勢を崩されてしまう。
リナ自身が一番、あの技の脅威を分かっているはずだ。
それなのに――
(どうして......)
「死ね」
「【閃光ノ印――緑】」
強い白色の光がタカから放たれる――。
直後――俺の方へと重い空気が、どっと押し寄せてきた。その突風に思わず目を閉じ、腕で顔を隠す。
今までで一番衝撃が強い......。
だいぶ距離があるとというのに、すさまじい圧力がここまでくる......。
それは音の大きさ、光の量などから容易に判断できるものだった。
突風が止む――。
確かめるのが恐い――恐かった。
でも......俺のことを「友達」と言ってくれたリナの――彼女の戦いを最後まで見届けなくては――。
彼女の強さを信じて目を開けなければならないんだ。
(リナ......無事でいてくれ!)
状況を確認するため、俺は目を開けた。
「......っ!」
リナは吹き飛ばされてはいなかった。
タカとつばぜり合いの状態を保っている。
「まじ......かよ」
タカは信じられないといった様に、目を見開いた。
その表情には、驚愕と――少し恐怖に歪んでいるようにも感じられる。
あの技をどう防いだのかは分からない――が、俺は一つだけ、リナの変化に気が付いた。
彼女の体――そして武器が、緑色の光をまとっていたのだ。
それがタカの技を防いだことと何か関係があるのだと、俺は直感した。
「こんなガキが......霊力のタイプを変えられるわけ――」
「【閃光ノ印――青】」
「......っ!」
――明希也には、リナの姿を捉えることができなかった。
鋭い空気の流れがタカを突き抜け――その直後、リナのいた場所から突風が押し寄せる。
突風から顔を守っていた明希也の耳を、風を斬る音が一瞬で過ぎ去った――。
さきほど、シャドウを倒した時と同じく、リナは突然姿を消したのだ。
「......くそ」
タカが地面に力なく倒れた。
倒れたところから、血が広がっていく――。
「え......?」
「あれ......?」
タカが倒れたのと同じくして、違和感を感じ、声をこぼすパージストたち......。
そして――
同時に血しぶきをあげ、声をあげることもなく彼らは倒れていった......。
(い......いったい何が......)
誰一人として、何が起こったのか理解できていないようだった。
もちろん、俺も......。
急に人がバタバタと血を流して倒れ、
「一瞬で、全員を斬ったんだ」
「え?」
呆然と立ち尽くす俺に、カイトがそう言った。
「リナっちが戦ってた奴いたじゃん? そいつ斬るついでに、他のパージストたちのことも、斬ったんだよ」
「......そ」
――そんなことができる人間がいるのか。
とてもじゃないが、信じられない......。
現実離れした出来事に、俺は動揺を隠せないでいた。
「あきやん......リナっちは君と同じく、まだ子供だ。けどね、リナっちもシャドウと戦う兵士なんだ。普通の人間には到底太刀打ちできない怪物と、日々戦ってるんだよ」
俺は自分と歳の変わらない少女が、シャドウと戦い、人を斬り、武器を振るうという現実をなかなか認識できずにいた......。
「シャドウと戦うパージストは人々を守るのが仕事――強くないといけないんだ......。 まっ、リナっちの歳であの強さは異常なんだけどね!」
しかし、彼女の戦う姿を見て、カイトの言葉を聞き、その事実を――俺は徐々に認識していくしかなかった。
「......リナ」
大きく伸びをし、リラックスしているリナを、俺はただ見ていた。
彼女は、今までどんな景色を見てきたのだろう......。
どんな人生を歩んできたのだろうか......。
――何も言葉が出てこない。
彼女とは、住む世界が違う――そんな感じがした。
「......あははっ! 素人が初っ端から見る戦闘が、リナっちのだと、そういう反応するのも無理ないよね~ 」
と言って、カイトは俺の背中を優しく押した。
「おーい、終わったよ~!」
俺たちの視線に気づき、リナがこちらに手を振ってくる。
カイトの言葉が頭をよぎる――。
俺は手を振り、こちらに笑みを向ける少女に、どう反応すればいいか分からなくなっていた。
読んでいただき、ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。




