第21夜 千里眼?の相談者
「ねーねー、開かないよ~?」
屋上にあった階段室の扉をリナが確認する――が、どうやら開かないらしい。
けっこう頑丈そうな扉の上部には点灯が赤く光っており、電子錠がかかっているようだった。
「どーする? 壊して中入っちゃう?」
「その場合、できるだけ音は立てないようにしてくださいね。 中の敵がどこにいるかは分かりませんが、気づかれると厄介なので」
「ある程度は音出しても大丈夫じゃない? 聞こえないって~」
「カイトさんじゃ、そんな器用な壊し方できないもんね」
「リナっちうるさいよ~」
「さて、どうしましょうかね」
扉の前で少しばかり行き詰っていると、突然ポケットに入れていた携帯が鳴る。
工藤たちにちょっと詫びを入れてから、携帯を取り出してみると、『倉治』の文字が画面に出ていた。
待ってましたと言わんばかりのタイミング――
半分呆れながら、俺は電話に出た。
「もしもし?」
「どうやらお困りのようだね?」
ホント......毎回毎回、お前はどっから見てるんだよ。
「まさか、この状況、何とかできるなんて言わないよな?」
「そのま・さ・か! 出来ちゃうんだな~。 ちょっと待ってて」
そう言うと、なにやらカタカタと、パソコンを操作しているような音を鳴らし始めた。
「なになに? 誰からなの?」
「ええと......僕のとも......だち? が何かしてくれるそうです」
携帯越しでしかほとんど話したことがないやつのことを、友達と言っていいのか一瞬迷った。
「ドユコト? 何かってなんだ?」
「なんだか怪しいですね。 やはりここは私たちで――」
突如として鳴る、ピッという電子音――
扉の方に目をやると、上部にあった赤い点灯が緑色に変化していた。
「開い......た?」
カイトが恐る恐る、取っ手をつかんで扉を開けてみる。
すると扉は奥へのすき間を作った。
中へ入れるようになった......ようだが、みな互いに顔を合わせ、怪訝な表情を浮かべていた。
リナを除いて。
「おぉー、 あきやくんの友達すごいね!」
「怪しい......怪しすぎますね。 その友達は何者なんですか?」
「......すみません。 僕もあんまり分かってないんです。」
「もしかしたら、罠なのかも――」
「あっ、ちょっと待ってください......あの、工藤さんに代りたいそうです」
「私にですか?」
「はい、なんか話したいそうです」
「......まぁ、いいでしょう。 私が見定めますよ」
携帯を渡して工藤に代わる。
工藤が俺たちと少し離れた場所まで移動し、電話を耳にあてた。
――しばらくして、工藤が携帯を切り、俺たちのもとへ戻ってきた。
「まだ疑惑はありますが......私たち――というか、明希也くんを助けたいだけだと言っているので、彼はただ、友達想いの強い人なのかもしれませんね」
(倉治......)
「遠隔でドアのロック解除するなんてすごいね! わたしも話してみたーい!」
手を出して携帯をおねだりするリナ。
工藤はそれを相手にせず、話を続けた。
「それと......彼からここの構内図を送ってもらいました。 この構内図を頼りに、まずは監視制御室を目指し、監視カメラを使って情報を集めようと思います」
「おけー」
「異論ありません」
「ちょっと! 無視しないでください~!」
不貞腐れるリナをカイトがなだめて、扉の奥へと背中を押して運んでいった。
時任もそれに続いて入っていく。
「工藤さん」
「はい?」
「その......あいつ怪しいですけど、悪い奴じゃないんで大丈夫だと......思います」
倉治について、俺もほとんど知らないので、ちゃんと答えられないことは申し訳ないと思った。
でも、霧生同様、なぜか俺の手助けをしてくれるあいつのことを、信用してしまっている自分がいる。根拠はないが、悪い奴ではないと感じるのだ。
「......真剣な口調で言ってましたよ『友達の助けになりたいだけだ』って」
「そうですか......」
「完全に信じるわけではないですが、今は彼の助けを素直に受け止めましょう 」
――いつか倉治には、直接礼を言ってやりたい。そう思った。
先に入った三人の後を追いかけるように、工藤と俺も暗闇の扉の中へと足を踏み入れた。
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