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シャドウズ  作者: saji
11/55

第10夜 邂逅する運命

今回も少し長いですが、最後まで読んでいただけたら、嬉しいです!

それでは、お楽しみください。

 

 俺は自分の制服の上着を彩華にかけ、姿勢を整えて優しく横にした。


 男はいつの間にか武器をしまい、煙草を吸い始めていた。


「あんた……だれだ? それに――」


 下に横たわる二つの身体。

 状況から察するに、先ほどのシャドウをこの男が――ひとりで倒したのだろうか。

 しかも、俺が呼吸を整えている短い間で――。


(そんなのあり得るのか? 二体瞬殺とか......強過ぎだろ!?)


 状況を整理しようとして固まっていると、男が口を開いた。


「静かに考え事がしたくてな。 ちょうどいい所があったんで、ここに来てみたら、そこの嬢ちゃん乗せた怪しい雰囲気の奴らが車で来たんだ。 そんで、しばらくしてお前らもここに来るのが目に留まった」


 男は一口煙草を吸ってから、また話を再開した。


「お前、制服を着てるってことは学生だろう」


「あっ、はい」


「おれは人を探しててな。 ちょうどお前くらいの歳になっているだろうから、何か知ってるか聞こうかと、後をつけた。 そしたら」


 男は両手を広げ、今の状況を俺に見せてみた。


 俺は絶対絶命の状況から助けてくれたその男に一礼し――

「助けてくれて、ありがとうございました!」と感謝を伝えた。


「面倒事は極力起こしたくなかったんだが、お前が手がかりを少しでも知ってるかもと思って助けただけだ。 気にするな」


「あなたは命の恩人だ。 俺のできることなら、なんでも協力します!」


「そうか、そんじゃダメもとで聞くが――」


 黒コートの男がメモ帳を取り出し、ページをめくり始めた。あるページで手が止まり、咳払いを一つしてから質問した。


「たにはらあきや――ってやつのこと、何か知っているか?」

「へ?」


 急に自分の名前が男の口から出てきて困惑した。


「ん? どうした?」


 俺は困惑しながらも、自分の顔を指さし――


「それ……俺だけど?」と言った。



 少しの沈黙の後、黒コートの男は、すぐさま写真のようなものを取り出し、明希也と写真とを交互に見比べた。


「......なるほど、よく見りゃ似てる、かもな」

「ほ、ホントに俺なんですか?」

「あぁ、そのようだ」


 俺はキョトンとした顔で男を見た。

 なんという偶然だろうか。


「どうやら俺の探している人物はお前だったようだ。 谷原明希也」


「でも俺……あなたのこと全く知らないんだけど」


霧生和正(きりゅう かずまさ)だ、よろしく」


「いや、自己紹介されても分かんないんだけど」


 霧生と名乗る男――俺を探していたということだが、顔に覚えがない。

 見知らぬ人物が自分を探していることに、疑問を抱かざるを得なかった。


「霧生さーん、こちらにいたんですか」


 遠くの方で、若い男性が一人近づいてきた。


「おや、これはどういう状況ですか?」


 若い男性が周り見回しながら、そう言った。


「こいつがどうやら、俺の探していたやつみたいだ」

「えぇ!? ほんとですか!?」


 黒コートの男の仲間は信じられない――というような顔で俺を見る。

 俺もさっき、そんな顔をしていたのだろうか。



「あっ、どうも工藤智紀(くどう とものり)です」

「ど、どうも......」


 お互い小さく一瞥いちべつした。


 じゃなくて――

 やはり黒コートの男の名前は聞いたことがないし、改めてちゃんと容姿を観察しても、会った記憶はどこにもない。


「あの、本当にこの少年で、間違いないんですか?」

「まぁ、さっき確認した限りだと、人違いではなさそうだ」


 こちらが知っていなくとも、あちらは知っているということか。

 両親の知り合い――とかだろうか。


「いやー、見つかって良かった。ひとまず安心だ」

「それで、どうして俺を探してたんですか? ていうか、そもそも何者なんですか?」

「私たちはパージストです」

「俺は()だがな」


 ということは、さっきシャドウから俺を守った武器が、光兵器(グランズ)だったのか――。

 教科書の中でしか見たことが無かったので、実物が見たかった――と悔しくなった。


 シャドウに対抗できるパージストの武器――『光兵器(グランズ)

 それには「ルミナ」という太陽と同じ効果を得られる特殊なエネルギーが組み込まれている。

 シャドウと戦闘する上では、必須となるものだ。

 今では剣や刀を始め、弓や槍など、開発された多様な武器とともにルミナが組み込まれ、パージストたちが扱っているという。


「あ、あの……パージストなら俺の両親のこととか知らないですか!? もう何年も前なんですけど、急に消息不明になってしまって」


 俺は失踪した両親のことについて質問した。


「そうか......すまんが、分からん。 俺たちは最近シスト市の外から来たばっかりだからな。ただ、お前の両親とは昔一緒に仕事をしていた仲で、顔見知りだ」


「そう……ですか」


 この人たちなら、何か知っている――と思ったが、相変わらず両親が消えた手掛かりはつかめなかった。

 しかし、両親の顔見知りなら、信頼が置ける人たちなのかもしれない。


「私たちはこのシスト市の調査とあなたの捜索でここに来ました。そして、あなたの生存を確認次第、すぐにこの都市から連れ出すことが我々の大きな目的です」


「な、なんで? なんで連れ出すんですか?」


 明希也は少し怖くなった。パージストに追われるような悪いことはしてないはずだが。


 いったい......。


「このままシスト市にいれば、死ぬことになるからだ」

「......えっ?」

「私たちの調査で、この都市はかなり危険な状態だということが判明しました」

「ちょっ......ちょっと待ってください! それってどういう意味ですか!?」


 死ぬ――ってなんだよ。


 突拍子もない話が出てきて、体が身構える。


「この話は、他の仲間と合流してから話します」


 そう言うと、工藤がメモ帳の紙切れを渡してきた。

 メモには日時と場所が書かれている。


「今日の夜、ここに来てください。 この都市が抱える闇を全て明かします」

「今日中に荷物をまとめて持ってこい。 来なくても、迎えに行く。 じゃあな」

「……ちょっ、ちょっと待ってくれ――」


 話が勝手に進んでいき、二人は足早にこの場を去っていった。



 ウソ――という可能性もあるが、真剣な面持ちで話していたし、それはないのだろうか。


 2体のシャドウに遭遇する日に、両親の顔見知りに会う――。

 色々とおかしな偶然は重なるものだな。


「おーい! 明希也~!!」


 快斗の声が聞こえてくる。

 よかった――快斗も無事だったようだ。


「彩華ちゃん、見つかったか?」

「あぁ……色々あったけど、なんとか助けられたよ」


 それを聞いて、快斗は安堵の息を漏らした。


「良かった~。 そんで……彩華ちゃんさらったのって、そこで横になってるやつらか? 明希也、二人も倒すなんてすげぇな」


 快斗が横たわっている二人に睨みを利かせる。


「あっ! おい快斗!」


「おら! 気絶してんじゃねぇぞ! 彩華ちゃんの分までたっぷり痛めつけて――おわぁ!」


 急に動き出した二人に、快斗が声を上げる。

 俺の後ろに隠れる速さがなんとも速いこと速いこと。



「……ん……あれ?」

「俺たち……いったい……」


 どうやら、光武器(グランズ)でシャドウだけが浄化され、体が元に戻ったようだ。

 授業で習った通り、記憶もとんでいる様子だ。


「うわぁぁぁ! 俺の手血だらけじゃねぇか!!」

「か……体中が、いてぇ……」

「はぁ……」


 シャドウではなくとも、こいつらは彩華に悪さしようとしたクズ野郎だ。

 俺は困惑している二人に近づき、遠慮なく一発ずつ軽く殴った。


「ぐはぁ!」

「うぐぁ!」


 またもや地面にうずくまった二人。自業自得だ。


 気にせず俺は「快斗、今日はもう帰ろう」と言った。


「お、おう。 反省しろよ、お前ら!」



 その後俺は、快斗に彩華を任せ、倉庫の中に残された彩華の脱がされた上着や荷物を回収した。再びあの血生臭い匂いが漂う倉庫の中に入るのは、気が引けたが、先ほどの出来事に比べれば、なんてことはなかった。


 ただ、不可解なことが二つあった。

一つは、倉庫にいた誘拐犯たちの体が消えていたこと。

そして二つ目が、壁に大きな穴が開いていたことだ。


怯えていた男の死体、彩華と間違えて確認した死体、最初に悲鳴をあげた男の体も、倉庫内には見当たらない。

あの大きな穴も、初めはなかった。もしあったら、そこから光が入ってくるので、気づいているはずだ。


いったい、どういうことなのだろうか......。



 いやよそう――今日はもう疲れた。


 今おれは生きていて、彩華も無事だった――。


 それでいい。これでいいんだ。



 そうこうしていると、倉治から「帰りの車を用意している」と電話が来た。


 どこまでも怪しい奴で、裏切るのではないかと気が気でなかったが、俺たちは眠ったままの彩華とともに、用意された車のもとへと移動することにした。


 上着は掛けたままにして、俺はまた彩華を背負う。

 すると、横で並び歩いていた快斗が聞いてきた。


「明希也、いったい何があったんだよ」

「え?」

「あいつらの様子、おかしかっただろ。 一人だけ手に大量の血が付いてたし、お前の靴にも血が付いてるぞ」


 靴を確認してみる。自分で見て驚いたが、かなり血が付いていた。


「彩華ちゃんが上着脱がされてるのは、あいつらのせい――ってなんとなく想像つくけど」

「……悪い快斗、明日事情説明するよ」


 俺はそう答えた。


 シャドウとの遭遇、俺を探していたという者たち、今日起こった出来事を整理する時間が俺には必要だった。

 申し訳ないと思うが、説明は明日に回したかったのだ。


 そんな俺の様子を見て、何か察してくれたのか、快斗は小さく返事をしてくれた。


「それはそうと明希也」

「ん?」

「彩華ちゃん、おんぶするの……変われよ」

「ふっ……」


 俺は無言で車へと走った。


「あっ! てめぇ! 待ちやがれぇ!」


 勘違いするな快斗。

 決して、背中にあたるモノの感触を感じようなんて下心はなかった。

 いや、ホントに――。



◾️



 最初に車で彩華を家へと送った。

 家族の人たちに心配されないよう、彩華に服をちゃんと着せて、「一緒に遊んでいる途中で寝ちゃったみたいで」と、それらしい理由をつけて送り届けた。


 それにしても、目を隠しながら彩華に服着せるの、めっちゃ気まずかったな。

 このことは、彩華には内緒にしておこう。そう快斗と約束をした。


 快斗のやつは......終始何か言いたそうだった。

 けれど、「明日説明する」という俺の言葉をちゃんと受けとめて、「また明日」とだけ帰り際に挨拶を交わした。

 気を遣ってくれていることがすごく分かった。


「ありがとな、快斗」


 明日ちゃんと説明しよう――。

 彩華にも、何が起こったのかちゃんと話そう――。

 もちろん、下着姿になってたことを除いて。


 帰りの車で一人座っていた俺は、そう思うのだった。


いかがでしたでしょうか?

この後もさらなる困難が明希也を襲います。

ドキドキしながら読んでほしいです。

次回もお楽しみに〜٩('ω')ﻭ

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