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シャドウズ  作者: saji
10/55

第9夜 シャドウ

シャドウズ第9話目です。

今回は少し長いですが最後まで読んで頂けると嬉しいです٩('ω')ﻭ

 

 それは俺に気づかず、ゆっくりと俺の視界から消えていった......。



「......っぷは」


 静かに息を吐く。

 あまりの出来事に、呼吸するのを忘れていた。


 あれが、シャドウ......。


 目を離しても、あの姿が強烈に脳裏に焼き付いて離れない。


 あれはおそらく、寄生型に乗っ取られて、自我が無い状態だ。

 人がシャドウとなった場合の第一段階として、殺戮衝動だけが体を支配する――。

 言葉は通じず、人を見つければすぐさま襲い掛かる怪物となってしまう。


 寄生型のシャドウが、夜の間にこの倉庫の中に侵入し、ずっと潜んでいたのかもしれない。


 今までシャドウと遭遇したことなんてなかったのに......。


 あの殺意の塊みたいな存在は、人が触れてはいけないものだと、本能が言っている。


(何とかして......早く彩華を見つけて、ここから出なければ)


 入り口の光が入っているとはいえ、ここはかなり薄暗い。いつまでもここにいては危険だ。

 とはいえ、動くことでシャドウと遭遇する危険は高まるだろう。


 正直、あの存在がとてつもなく恐ろしかった。

 見つかれば、俺も殺されてーーあんな風になってーー


「うっ......っぷ」


 最悪な想像と異臭が相まって、急な吐き気に襲われる。

 何も出ないように、口を手で覆う。


 ーー考えるな。そんなこと考えるな。


 今勇気を出して、動かなければ、俺も彩華も死ぬかもしれないんだ。


 ーー落ち着け、落ち着け......。


『明希也くん』

「......っ!」


 彩華がいつもの笑顔で名前を呼んでくれた姿が頭の中で流れた。

 おそらく、学校で一緒にいる時の彩華を思い出しただけで、実際に呼ばれたわけではないだろう。


 でも今、幻覚のようなものを見て、彩華がいなくなってしまったらーーって考えたら、


 ーー俺はここで動かなかったことを一生後悔するだろう。


「俺が......助けないと」


 拳を強く握りしめて、覚悟を決める。


 今ーー恐怖以上に、彩華を救いたいという気持ちが、俺の心と体を動かした。


「おい、お前らがさらったっていう女の子はどこにいるんだ」


 俺はすぐさま、横で怯えている男に彩華の居場所を聞く。


 すると、男は泣きそうな――震えた声で答え始めた。


「こ......ここより、もっと奥の方だ。 逃げるのに必死で、お......置いてきちまった」

「......っ! くそ!」


 それを聞いて、こいつを殴りたい気持ちが芽生えたが、今はそれどころじゃない。


 俺は男を置き去りにして、体を中腰にしながら、移動しようとした――が、


「お、置いて行かないでくれ!」


 男が俺の服をつかみ、小声で訴えてきた。


 俺はそれを払いのけると――


「いいか、俺はお前がどうなろうと知ったこっちゃねぇ。 お前らがさらってきた女の子助けるためにここに来たんだ。 シャドウが恐いならさっきみたいにここで、ずっとうずくまってろ!」


 小声で――でも怒りを込めて言ってやった。


 男はそれを聞くと、少し考えた後、「俺も行く」と言い出した。


 彩華に悪さしようとした奴と一緒に行動するのは不本意だったが、場所を確認するためにも、俺は同行を許可した。



 それから、ゆっくりと音を立てないように移動し、男の言う――彩華を置いてきた場所へとたどり着いた。


「ここら辺のはずだ......」


「かなり暗くて、よく見えないな」


 足元に注意しながら周囲を見回す――。



(......っ! いた!)



 少し離れた所に、人が横たわっているのが薄っすらと見えた。


 俺はすぐに近づき、身体を確認する。


「......違う」


 彩華ではなかった。おそらく、これは彩華をさらった奴らの身体だ。


 よく見ると、周りには血でできた水たまりが形成されており、足を動かすと、ピチャピチャと水音が鳴った。

 こいつが生きてるのか死んでいるのか、分からない。

 ただ、暗くてよく見えなかったこともあり、視界による恐怖は薄れていた。


 死体ではない――そう思おうことにした。


「くそっ! どこにいるんだ。 おいお前! お前も探せ――」


 立ち上がって男のいた方向に振り向くと、そこには紫色に光る眼があった――。



 先ほどは一人の人間を引きずっていたが、もう片方の手に、先ほどの男と思われるものが引きずられている。


 ――恐怖で指先一つ動かせなかった。



 その不気味に光る紫色の視線と目が合うと、「死」という文字が頭の中を支配した。


「グアァァァァァァァァァ!!!」


 手から死体を離し、一直線に俺の命を奪おうと襲い掛かるシャドウ。



 ――無理だ。まだ動けない。死ぬ。



 スローモーションのように時がゆっくりと流れ出す感覚を感じる。

 最後に走馬灯を見る時間なのだろうか――。何でもいいや、もう殺されるんだし。


 でもそうだな――結衣や姉ちゃん、彩華や快斗ともう少し、一緒に楽しい時間を過ごしたかった。それが心残りだ。


 そう思いながら、俺は静かに目を閉じた――。



 ドクン......。




「グガァァァァ!」


 獣のような鳴き声とともに、はっ――と我に返る。


 ――生きてる。自分の身体を確認しても、傷一つなかった。


(シャドウは......?)


 シャドウのうなり声が少し離れた所から聞こえていた。その声はどこか苦しんでいるようにも取れる。


 俺はシャドウに襲われた。そこまでは覚えいる......。

 けれど、いったい――どうして自分は無事で、シャドウとの距離が離れているのだろうか。


 状況が全くつかめない――が、これはチャンスだ。

 今のうちに、彩華を探さなければ――。


「......っ!」


 なんとなく視線を動かした場所に、さっき見つけたものとは別で、人の横たわっている輪郭が見えた。



 俺はシャドウが襲ってこないうちに、素早く移動し、横たわっている人の顔を確認する。


「......あやか!」


 やっと見つけられた。安心して涙が出そうになった。

 首元に手を当てて、生命活動を確認する。


 生きてる――。

 動いてる――。


 急いで、運び出さなければ――。


「......うぉあ!!」


 運び出そうと体に触れると、柔らかく――すべすべとした感触が手から伝わってきた。

 今気づいたが、彩華は今――下着姿だ。上の制服が脱がされている。


(このやろうぅ......!! あいつら!)


 一瞬戸惑ったが、今はそんなこと気にしている状況じゃない。

 俺は彩華を背中に背負い、外へと全速力で足を動かした。



「グァァァァァ!!」


 後ろからシャドウのうなり声が聞こえてきた。

 どうやら活動を再開したようだ。


 俺は今までの人生の中で一番足に――体に力を入れ、外へと向かった。


 ――息が切れる。後ろからうなり声が迫ってくる。追いつかれたら殺される。


 今だけだ――明日動けなくなっても、今だけ自分の持ってる力すべて使って、外へ出るんだ――。



 あともう少し――。


 あともうちょっと――。



 逃げきれる。もう追いつかれない。先に外へ出れる。

 自分の位置とシャドウとの距離を感じ取り、そう確信した。


 そして――俺は外へと出る足を、踏み出そうとした――が、


 横から後ろとは別なシャドウが、襲い掛かってくるのが目に入った。


「......二人いるなんて聞いてねぇぞ」


 シャドウの刃物の様に横に鋭くなった影が、俺の首に向かって振られた。




 その鋭い影は、すんでのところで止まった。


 いつの間にか――横にいた何者かが、剣でその影を防いでいた。


 目の前から影が消え、外へと身を乗り出すことができた。


 俺はそのまま地面に倒れこみ、今まで苦しかった分、激しく空気を吸って息をした。


 その間も、後ろではシャドウのうなり声が聞こえてきた。

 でも、俺は呼吸を整えるのに精一杯で、気にする余裕が無かった。



(だ......誰かいた。 なんか横にいた)


 シャドウとは別に、俺を守ってくれた人がいた。

 さすがに、状況が気になり、ある程度息を整えて後ろに目をやると――


「......っ!」


 地面に横たわる2つの体。立っていたのは黒コートを着た40代ぐらいの男一人だけ。


「大丈夫か」


 身長、体格、服装、どこかで見たことがある――と思ったら、その男は学校で見た怪しい奴と同じようだった。


いかがだったでしょうか?

書く時に、この話は少し描写に悩みましたね。

大変でしたけど、楽しかったです。

次回も読んで頂ければ嬉しいです٩('ω')ﻭ

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