Prince's wish Part 1
愛しいヒト。
どうすれば私は貴女を手に入れられるのでしょうか。
□■□ Prince's wish Part 1 □■□
愛しいヒトとの出会いは私がまだ自分のことを『僕』と呼んでいた頃でした。
あの頃の私は、外交官でもあった叔父上に「リス王国国王となるなら世界を知れ!」と半ば無理矢理周辺諸国を連れ回される日々を送っていて。
その一つにグラナダ帝国が―――愛しいヒトとの出会いの地があったのです。
下級貴族だと思っていた彼女は、調べてみると現皇帝の末娘にあたりましたが母親の身分の関係から継承権を破棄する為養女に出された、とても可哀相なヒトでした。
あのヒトと愛し合いたい、あのヒトと共に在りたい、あのヒトと共に生を分かち合いたい。
しかし―――。
「どうすればいいんだよーーー!!!」
「あーあーー五月蠅い。実に煩いぞ、リュカ。」
そう言って行儀悪くソファの淵に足を上げている男は、叔父上に連れられ赴いた国の一つであり、海を隔てた隣国・ジュファ皇国の魔導士です。
何故他国の者が第一王子の執務室にいられるのかと言うと、まず第一に男がジュファ皇国の出身ではありますが周辺諸国に請われる魔導士であるということ、そして第二に私の幼馴染だということが最大の理由でしょう。
…まあ、幼馴染と言ってもそれ程長い時間を過ごした訳ではありませんが。
あくまで幼少期からの付き合いというだけですが。
ただその立場故に政務以外の相談がしやすくて、ついつい第一王子の執務室に来ることを許してしまうのです。
まあ、流石にノックも無しで入ってくるのはやめて欲しいですが。
「ああ、何故神は私と愛しいヒトを引き裂こうとなさるのか…!」
「元々繋がってもいないだろ、接点があるだけで。」
「ぐっ……!」
幼馴染の容赦無い一言が私の心を深く削ります。
流石我が幼馴染殿、伊達に鬼畜魔導士の名を欲しいままにしているだけはありませんね―――!
「…で?」
「ふぇ?」
「…俺がここに来ている時にそんなこと言うんだ、何か相談があって、のことなんだろう?」
「……敵わないなぁ、幼馴染殿には。」
机に突っ伏していた身体を起こし魔導士に向き合う。
「陛下に進言した所、側妃の選定は全権を譲って頂くことはできた。」
グラナダ帝国との同盟は、確かに両国に益を齎すでしょう。
だからこそ、陛下も彼の愛しいヒトを迎え入れること自体に反対はなさらなかった。
「しかし王妃については得られなかった、と。」
「ああ、陛下は側妃に彼女迎え入れること自体は賛成して下さった。
しかし王妃にはマルタン侯爵家のレア嬢を推している。確かに私から見ても、彼女は王妃の器だとは思う。
けど如何せんレア嬢は女性としての自尊心が高すぎる。彼女を王妃になんてしたら―――。」
「お前の愛しいヒトなんて、あっという間に棺桶行きだな。」
仰々しく頷く。
レア嬢なら国交に影響を出させない方法で愛しいヒトを亡き者にするでしょう、そう確信出来る程彼女は『王妃』という立場に固執していました。
勿論、固執するからにはその役目を担わされるに相応しい実力も身に着けていましたが。
「だからこそ、魔導士殿のお力を拝借したい。何か、いい知恵かアイディアはありませんか?」
殊更下手に出て幼馴染に向き合う。
幼馴染は動かない、私も…そんな幼馴染に倣って動けない。
「…ふっ、いいだろう。」
どれ位時間が経ったかわかりません。
暫くして幼馴染は鬼畜な…いや、腹黒…違う違う、とてもいい笑顔で懐から一組のタロットカードを取り出しました。
「ドラメーディア タロトーリヤ うーらないーの…パッ!」
って作者!それ作品違う!それ某アラビアンな某猫型の呪文だから!
いくらコレ書いてる時呪文に困ってたからって、丁度観てたからって輸入しちゃ駄目だから!!
もう少し捻って!!
「…リュカ、お前妃選出の為に舞踏会を開け。」
「は!?」
私が秘かに作者に物申していたにも関わらず、幼馴染はタロットカードを見ながらそういいました。
「…幼馴染殿、私は彼女を手に入れる為の知恵が欲しい訳で…。」
「俺の占いによると、お前はその舞踏会で『お前の理想の』王妃と出会えるらしい。」
「私の…理想の王妃…?」
「ああ。」
幼馴染が言う『私の理想の王妃』…それは政治的パートナーであり、愛しいヒトを害さない、正に絵に描いたような王妃です。
そんな者が本当に居るというのでしょうか…しかし、今までだって幼馴染殿の占いが外れたことはありません。
私は幼馴染の言葉を信じリス王国中に勅命を出しました。
そして幼馴染が言う通り、『理想の王妃』だと直感できるご令嬢と出会ったのです!
彼女はまるでリスの花のように清楚で、慈愛に満ちているようで、とても堂々とした方でした。
第一王子という立場故、初見の印象で為人を見ないよう教育されてきた私でも、彼女こそ王妃に相応しいと感じたのです!
…しかし、彼女は十二時の鐘が鳴るや否や私の元を離れて行ってしまった……。
舞踏会に戻った私は、参加してくれた臣下の者達には申し訳無かったが、折角出会えた可愛いヒトの喪失に茫然自失となってしまったのです。
「おーおーー、見事に沈んでるなぁ…。」
舞踏会を終えて日が昇り。
執務室で未だ秘かに落ち込んでいた私の元に現れた幼馴染は、彼のご令嬢が残した硝子の靴を片手に相も変わらず不敵に笑っていました。
「幼馴染殿…からかうなら、また今度にしてくれないか……?」
声にも悲壮感を漂わせた私に幼馴染は意外そうな顔をします。
…そんなに酷い顔をしているのでしょうか、今の私は。
「お前さぁ…俺が何の為に舞踏会を開けって言ったか覚えてるのかー?」
「『私の理想の王妃と出会えるから』、だろう?だか彼女は消えてしまった。
あの夜の招待状からも、貴族からの話を聞いても彼女の行方はわからなかった。もう、打つ手無しさ…。」
「…まだ、一手残ってるだろ?」
「……一手?」
幼馴染は大げさに溜息を吐くと、手の内で遊んでいた硝子の靴を放り投げました。
慌てた私は椅子が倒れるのも承知で投げられた靴を確保する為立ち上がります。
可愛いヒトとの唯一の繋がりをこんな形で失うなど…。
「あ…。」
「気付いたか、この大馬鹿野郎。」
幼馴染がまたもや不敵に笑います。
そうだ、まだ、彼女への繋がりが完全に断たれた訳じゃない。
私は幼馴染の助言というか助動?によって再びリス王国中に勅命を出しました。
全ては可愛いヒトを手に入れる為、そして愛しいヒトと共に在る為に。




