第五話 ド素人の戦闘
「着いた・・・のか?」
辺りをを見渡す、周りは木、木、木で埋め尽くされていた。ここは森の中ということだろうか。
取り敢えず、幼女神が送ったと思われる物を探してみる。キョロキョロと辺りを見回すと、足元にポーチのような物があった。大きさは腰にフィットするくらいだ。しかし、俺はそのポーチに疑問感じた。
「何でこんなにぺしゃんこなんだ?」
そう、まるで中身は何も入ってないと言わんばかりに潰れているのだ。まさか中身を入れ損なったなんてことはないだろうな。
恐る恐る中身を確認するために、ポーチを開け、中に手を突っ込んだ。
「ん?何だろ?冷たくて硬く、それに長いな。」
長い、というところに疑問を感じたが、取り敢えずその冷たくて硬い長い物を取り出して見た。
「なっ!?」
俺は驚きの声を上げた。それは「刀」だったのだ。こんなぺしゃんこで小さなのポーチから俺の身長の胸ほどもある、刀が出てきたのだ。
「何で刀が・・・いや、そんなことより。」
俺はその刀に疑問を持った。何故なら、この刀、銅で出来てるのである。
「普通、刀って鉄とか鋼とかでできてるもんじゃないのか?」
疑問は尽きないが、取り敢えず、近くの木に立て掛けておいた。まずは中身の確認が最優先事項である。
またポーチに手を突っ込むと、今度は干し肉と水がそこそこの数出てきた。どう考えてもこのポーチに入り切る量ではない。が、現に入っていた。これはもしや・・・
信じがたいが4次元ポケットと似たような効果がこのポーチの中で起こっているのではないだろうか?それなら、ポンポン出てくる理由に説明が付く。
取り敢えず、異世界だから、ということで落ち着いた。
「なんだこのポーチ、すごく便利だぞ。軽い上に何でも入る、しかも邪魔にならない。最高のアイテムだな。」
俺は陽気な気分で、またポーチの中身をまさぐった。すると今度は、金色のメダル、銀色のメダル、銅のメダルが出てきた。全て、5枚ずつだ。
「なんだこのメダル?何かに使うのか?まぁ、あの幼女神が入れてくれた物なら、何か大事な物なのだろう。」
さらにポーチをまさぐって見たが、これだけのようだった。太っ腹な幼女神である。
「そういえば、「スキル」も送るとか言っていたな。どう確認すればいいんだろう?」
と、そこまで考えたところで、頭の中に文字が浮かんできた。
〈スキル〉
鑑定Level 1
言語Level MAX
魔力抑制Level MAX
こんなものが頭に浮かんできた。言語はきっとこの世界の言葉のことだろう。魔力抑制は、幼女神が言っていたこの目の力はを抑えるものであろう。
では、鑑定とは何だろうか?地球では何かを調べることだと思うが・・・取り敢えず、刀に向けて鑑定!と念じて見た。すると
〈武器〉
銅の刀
とだけ出てきた。なんか鑑定の癖に情報が少なくないだろうか?これだけなら、俺でも見ただけで分かる。まだLevelが低いからなのだろうか、その辺も調べておこう。
一通り荷物を見たので、これからどうするか考える。町や村へ行こうにも方角が分からない。かと言って完で進んでもきっと迷って、飢え死にするかもしれない。
「どうしたものか・・・こんな森の中で、もし化け物に襲われたら完全に積むな。てか方角が分からない時点でもう積んでるか・・・。」
ここは剣と魔法の世界。化け物がいつ襲ってきてもおかしくないのだ。
ましてやこんな森の中、今まで会わない方が幸運かもしれない。俺は戦闘なんて今までしたことない上に、刀なんて剣道もやったことがないからドが付くほどの素人だ。どうして幼女神は刀だけ送って、スキルを添えてくれなかったのだろうか。
その時、
ーーズルズル、ズルズル
「!?」
確かに聞こえた。何かが這うような音。
ーーズルズルズル、ズルズルズル
だんだん音が大きくなってきた。俺は冷や汗が垂れてきていた。こういう時、悪い予感は大体当たっていまうのだ。
その時・・・
「プギュイイィィ!!」
「なっ...あっ!?」
俺は驚いて目を見開いた。そこにいたのは、俺の身長の腰ほどもある大きな大きなイモムシだったのだ。
ズルズルとゆっくり近づいて来る。俺を捕食対象として見ているのだ。
俺は思わず腰からストンと地面に倒れてしまった。恐怖で腰が抜けてしまったのだ。
そんな俺をイモムシはニタッと気持ち悪く嗤っているように見えた。
「く、来るな...!」
そんなこと言っても、イモムシは止まらない。徐々に近づいてくる。俺は冷や汗を流し、イモムシから目を離さないように地面を這って後ろに下がる。そして、木にぶつかる。これ以上後ろには下がれないのだ。
「プギュイイィィ!」
ついにイモムシが襲いかかってきた。その巨体が俺にのしかかるように飛び込んでくる。
「うわあぁぁぁ!」
俺は必死に何かないか、探す。すると、「カチャ」と何かが、手に当たった。銅の刀だった。俺はなりふり構わずその刀を取り、鞘に入ったままの刀を力一杯に横に振りかぶった。
ゴスっといやな音がして、少しだけ、軌道がズレて間一髪当たらなかった。
俺は震える足を叩いてすぐにそこから離れた。
「プギュイイィィ!」
イモムシは怒っているようだ。俺は鞘から刀を抜いた。ド素人の構えをする。手も足も震え、逃げ出したい。しかし、ここで逃げてしまってはきっと、この世界では生き残れないだろうと、言い聞かせて、俺は対峙する。
「プギュイイィィプギュイイ!」
イモムシが突進をしてきた。俺は横に大袈裟によける。これでも運動神経はいいほうなのだが、やはり怖くて無駄な動きをしてしまう。
「うおぉぉぉ!」
俺は通ったあとのイモムシの背中に向けて刀を真っ直ぐ縦に振りかざした。
ザシュッと肉の切れる気持ち悪い音を立てて、縦にスッパリと切れた。
「プギュイイィィ!?」
イモムシは苦痛の声を上げる。俺はその隙を逃さないように、震える手を膝で何度か叩いてから、イモムシに向かって、突きを繰り出した。
柔らかいイモムシの身体をやすやすと銅の刀が突き進む。グシャグシャと変な音を立てて、刀がイモムシの身体の中に入っていく。
「プギュイイィィ!?プギュイイィィ!?」
苦痛の声をずっと上げているが、俺は気にせず、突き刺さった刀を抜き、今度は横に薙ぎ払うように思いっきり斬りつけた。
すると、糸が切れたようにイモムシはゆっくりと倒れた。
「はぁ...!はぁ...!」
俺は刀をその場に落とし、膝からへたり込んだ。まだ身体が震えている。恐怖と混乱から来ているものだ。人ではないが、確かに肉を切った。その感触が気持ち悪くて、思わずその場で吐いてしまった。
「うえぇ...くそッ・・・くそッくそッ!」
俺はどうやらガラスメンタルだったようだ。俺はこの先かなり心配になった。この世界ではいまのようなことをたくさんしなければならないのだ。耐えられるか分からない。
「はぁはぁ。これに慣れないと何も始まらないんだよな...」
自分にそう言い聞かせる、しかし、覚えた恐怖というのは中々消えない物だった。
「はは...こんな姿、愛美に見せられないな・・・。」
妹にこんな姿は見られたくない。それに、愛美だって病気と戦っていたのだ。
今はきっと幼女神が治してくれたと思うが。でもこのくらい辛いことだったと思う。治るか分からないガンで、必死に戦っていたんだ。今の俺はまさしくそれだ。イモムシがガンで俺が患者。全く同じである。
「愛美も頑張ったんだ。今度は俺が頑張る番、だよな!」
自分にそう言い聞かせ、まずはメンタルを強くすることを目標にした。