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龍の瞳  作者: しろーと
第一章 俺の生活
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第二話 愛美のお見舞い

「ふわぁー、朝かー。」


 そんな一言から俺の朝は始まる。別に言う必要はないんだが。今日のバイトは11時からだ、時計を見てみると・・・。


「ゲッ!まだ朝の5時じゃないか・・・。」


 流石に早起きし過ぎた。二度寝しようかと思ったが、俺の場合は二度寝すると確実に寝過ごすのだ。


「とりあえず、着替えよう。」


  俺は二度寝することを諦め、着替えることにした。あんまりファッションとかはよく分からないので、適当な服を選んだ。


「コンビニで朝ごはん買って来るか・・・。」


  何故コンビニかというと、親は俺のこと避けてるから何も俺には用意してくれないのだ。

  いつもは部屋に買い込んであるのだが、今日に限って丁度切らしていたのだ。


「コンビニに行ってそのまま、愛美のお見舞いにいってバイト先に行けば丁度いい時間だな。」


  そうと決まれば今日の分のお金を持って俺は行ってきます、と小声で呟いて家を出た。

  ルートは、まず病院にバス20分で向かい、そのあと病院から駅へ歩いて向かい、電車に30分揺れてバイト先まで行く、という感じだ。

  なんて考えていたら、いつの間にかバス停に着いていた。


「この時間帯のバスは・・・5時42分か、あと少しで来るな。」


丁度いい時間のバスがあってホッとした。ここは田舎だから、一時間に一本とかあるのだ。

と、近くのベンチに腰を掛けていると、一人のおばあさんがやってきた。知人だが、名前は知らん。すかさず、目を閉じた。このおばあさんも、「怯える人」なのだ。


「おはようございます。おばあさん。」


「あぁ、和也くんかえ。今日はえらい早いのぉ」


「はい、今日はたまたま早く起きてしまったので、愛美のお見舞いに行こうと。」


「そうかえ、そうかえ、早く具合が良くなるといいんだがのぉ。」


「ええ、全くです。」


こんなに会話が弾んだのは目を閉じているからである。開けていると、目を逸らされてしまう。そして、微妙な空気になってしまうのだ。


「おっ、バスが来たな。」


俺は整備券を取り、バスに乗る。分かっていたことだが、バスの中はガラガラである。

俺は一人用の席に座る。あまり人には関わりたくないからな。


そこから約20分バスに揺れ、漸く病院前に着いた。もう病院は空いているようで、すんなり通れた。


「すみません、203号室の患者さんにお会いしたいのですが。」


受付けをしていたナースの人にそう聞いた。もちろん目を閉じて。


「あぁ、愛美ちゃんのお兄さんね。はいはい、じゃあこれ、無くさないでね?」


俺は面会用のカードを貰い、そそくさと病室へ向かった。203号室は2階なので、エレベーターを使った。

慣れた足取りで、病室へ向かう。ほぼ毎日来ているのだ、慣れるのは当たり前だ。


「よし、愛美のやつ、起きてるかな?」


俺は扉を叩いた。すると・・・


「どうぞ。」


と、声がしたのでガラッと開けて中に入る。返事かあったのだから、当然愛美は起きていた。愛美はこちらを向いていた。


「お兄ちゃん、いつも午後から来てくれるのに、午前中に来てくれるなんてどうしたの?」


「今日は珍しく早く起きたから、早めに来たんだ。」


俺は苦笑しながら、そう答えた。


「ふぅん、珍しいこともあるんだねー。」


妹が酷い、確かに珍しいけど!


「そんな日もあるのさ。」


「私はいつも6時には起きてるけどねー。」


小馬鹿にするように言ってきた。思わずぐぬぬ、と変な唸り声が出てしまった。

妹が笑っていると、くうぅ〜と可愛らしい空腹感を訴える音が聞こえてきた。とうの本人は「あっ」と言って俯いて顔を赤くした。


「なんだお腹空いているのk...」


言いかけたところで、ぐうぅ〜と俺のお腹もなった。思わず「あっ」と俺も声に出てしまった。そういえばコンビニに行くのをすっかり忘れていた。

俺と愛美はそこで苦笑し、


「ここの売店で何か食べよっか。」


愛美がそう言ったので、


「じゃあお世話になるか。」


苦笑しながらそう答えた。


「俺が買って来てやるよ、何が食べたい?」


「お兄ちゃんにお任せするよー。私は好き嫌いが、ないからね!」


「分かった。買ってきた物で不満があったら言ってくれな。」


「あはは!お兄ちゃんが買ってきてくれた物でハズレはないから大丈夫だよ!」


「そりゃどうも。」


軽口を叩いて、俺は病室から出る。


「ふぅ、見た感じだと、今日は調子が良さそうだったな。」


何故か具合はどう?と聞くと見た目通りだよ、と若干怒気を含んだ感じで言ってくるので見た目で判断をしているのだ。


「売店は一階だったな、俺もお腹空いてるから早く行こうか。」


203号室から、エレベーターは近いのですぐに一階へ着いた。早足で売店まで向かう。すると、売店も既にやっているみたいだったので目を閉じ、商品を手探りで探す。別に、人がいないから開けていてもいいのだが、少しでも目を閉じた状態で分かれば、という意味でやっている。


「よし、これでいいかな。」


俺用に選んだのが、コッペパン(ジャム&マーガリン)を3つと牛乳で、愛美用にお粥に牛乳を買った。愛美は病院食がでるから、少なめだ。気休め程度である。

俺は急いで病室へ向かった。


「愛美ー、待たせたなー。」


「ううん。そうでもないよ。」


笑顔で答えてくれた。


「何買ってきてくれたの?」


「病院食がでるからな、とりあえずお粥買ってきた。」


「ありがとー。やっぱりお兄ちゃんはハズレを引かないね!」


「なんだ?お粥食べたかったのか?」


「お粥じゃないけど、米類が食べたかったからね。」


「そりゃよかった。」


俺は苦笑しながら、自分の、買ったパンの包装を破いた。バイトは力仕事なので、沢山食べておかないとダメなのだ。

食べながら、雑談している中で気になったことを聞いた。


「なぁ、愛美。」


「んー?」


「なんで具合はどう?って聞くとそんなに怒るんだ?」


そう聞くと、愛美は驚いた顔をしていた。そんなに変なこと聞いたかね?


「なんだー。お兄ちゃん気付いてたんだー、だからあの日から聞かなくなってたんだね。」


「おう、なんか若干怒気を含んでいた感じだったからな。」


「あはは...お兄ちゃんにはやっぱりかなわないや。」


隠していたつもりだったのだろうか、俺は割とはっきりそう見えたんだが。


「んーとね、具合はどうって聞くと大体は安心させるために、大丈夫だよ、って答えるよね?それってもしも大丈夫じゃない時、すぐに対応できないじゃん。」


つまり、愛美は具合はどう?って聞くんだったら、自分で見て具合を確認して欲しい、とそういうことだろう。確かにその通りだ。


「だから、私はもっと私を見て欲しいって思っているの、お母さんもお父さんも表面しかみてないの。でもお兄ちゃんは沢山みてくれてる。私の嫌いな物好きな物、私の様子、具合、みんな見てくれてる。だから私はお兄ちゃんが大好きなんだよー!」


気付けば、愛美は泣いていた。愛美も孤独だったのだ。小学4年生からずっと横になったままだ。今だってそうだ。今日は調子がよくて、身体を若干起こせるようになっていたが、普段は寝たきりだ。

愛美も入院した時から3ヶ月くらいは、友達がお見舞いに来てくれていたが、そこから機とだれもお見舞いに来なくなっていたのだ。

それからは俺が毎日来ていた。きっと今まで我慢してきたのだろう、それが俺の質問を答えた時にきっと糸が切れたみたいだ。


「寂しくても、お兄ちゃんが来てくれるから私は頑張れたの。お兄ちゃんが私のために一生懸命働いてくれているからまだ頑張れるの、だからお兄ちゃん・・・。」


愛美は絞りだすような声で・・・


「私を・・・見捨てないで・・・。」


俺は思わずその姿を見て抱きしめた。


「見捨てるものか、お前は俺の大切な家族であり、唯一の理解者だ。そんなお前を見捨てるわけないじゃないか。だから・・・そんな事を言うな。」


「ぐす・・・うん・・・ごめんなさい。」


暫くの間落ち着くまで抱きしめていた。華奢で細い身体だった。力を入れたら折れてしまうような・・・。


「うん・・・ありがとうお兄ちゃん、もういいよ。」


そう言われたので身体を離す。


「自分で抱え込まないで、俺に出来ることがあれば、言ってくれできる範囲でなんとかするから。」


「うん、ありがとうお兄ちゃん。」


そう言った愛美の顔は笑顔で満ち溢れていた。俺はもっと頑張ろうと決意した。愛美のためにできることをやろうと。


「そういえば、時間大丈夫?」


「え。」


言われてバッと腕時計を見ると・・・


「ゲッ!?電車があと5分で出ちまう!やべー!」


「えぇ!?そうなの!?急がないと!」


「あぁ!ごめん!じゃあまた後でな!」


「うん!行ってらっしゃい!」


俺は急いで病院を出て、駅まで全力ダッシュをした。









これが最後の妹との面会だとは知らずに・・・

次で漸く本編に入れそうです。


あと、和也と愛美のキャラの特徴を忘れていたのでここで。


和也


目:ギロッとしたつり目あんまり怖くない

髪:ショート

身長:178cmがっしりとした身体

体重:64cm




愛美


目:ぱっちりしていて活発な感じ

髪:背中に少しで届くぐらいの長さで、ストレート

身長:142cmでかなり痩せている

体重:??



あんまりキャラの特徴を上手く書けないのでこれで・・・

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