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おっさん3匹異世界記  作者: 三色アイス
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第1章4話 「体がもたんだろ」

皇帝との会談はまだ続きます。

今回は説明回となってしまってます。

どうかご容赦ください。

「しかしながら、王配にする為に異世界の人間を呼び出すというのは、いささか理解に苦しみます。

異なる思想、文化、信仰を持つ相手ですよ。

危険な事だと考えなかったので?」


僕が言うと、ソフィリア王女が答えて言った。


「それについては私がご説明申し上げます。」


彼女の説明によると、勇者召喚の儀は神の力を借りて行われる神聖魔法なのだそうだ。

この国ではアマスと言う太陽神の力を借りて行われる。

その際、被召喚者の条件をアマス神に指定する事が出来るのだ。

その為、危険思想の犯罪者や精神異常者などの危険人物が召喚される事は無いそうだ。

それに神様の御思召である。

危険を疑うなどあってはならないそうだ。



ちなみに、召喚の儀を取り仕切るのは巫女で、現在は宮殿内の神殿にて休養中だそうだ。

実は僕等が召喚された時、彼女は意識を失って神殿に運ばれてたそうだ。

アマス神の魂を自らの体に受け入れて行われる儀式の為、体力の消耗が激しく、しばらくは眠り続けるだろうとの事だ。

又、神官長も彼女に付き添っている為、この場にはいないとの事。


「とは言っても、皇帝の婚姻となれば政治的にも大きな事ですよ。

もっていき様によっては、この国に大きな利益をもたらす場合もあるのではないですか?」


と石井ちゃんが聞いた。

うん、これは僕も気になった。

それについては宰相とグラハルト王子がそれぞれ説明してくれた。

この国では4つの王家が有り、12人の選帝候が選帝会議で皇帝を決める制度になっている。

現皇帝のソラキス家、グラハルト王子とソフィリア王女のアスラム家、他にキッペンベルク家とハーネス家。

以上の4王家が存在していた。



しかし、この内の2王家が反乱を起こした。

キッペンベルク家とハーネス家だ。

そして、それに選帝候の内5人が加担した。

更に選帝候の残り7家の内3家が中立を宣言した為、当時の皇帝軍は戦力的に不利な状態で内戦に突入した。

しかも隣国のスザンスルト王国がこれに呼応して侵攻して来た。

圧倒的に不利な状況である。



アマスラント帝国があるのは、3つの大きな島と幾つかの小島からなるジンダ列島という場所にある。

キリル大陸から船で3日程のところに有り、大きな島の内2つに領地が存在する。

一番北に位置し、2番目に大きい島ノドスは全てがアマスラント領。

ノドスの南にあり一番大きな島アルガスの北部から中部、約4分の3がアマスラント領



アルガスの南東にある島アバルとアルガスの残りがスザンスルト王国だそうだ。

国力の比は推定で3対1。

アマスラント3に対してスザンスルト1である。

普通なら戦争仕掛けるには不利過ぎて、攻めようなんて考えない国力差だ。

しかし、国を割っての内戦中なら、スザンスルトの戦力は十分に脅威だろう。


「良く勝てましたね」

思わず口から出た。

数字上の不利は明らかだ。

グラハルト王子曰く

「大義が我等の側にあったからだな」

普通に聞くと、何を綺麗事を言っている、というところだがそうでもなかった。



この内乱のきっかけはハーネス王家当主デレク・ラ・ハーネスの娘婿であり、カーライル・ド・ローウェル選帝候の甥、カイル・ナ・ダーバフィールド伯爵一門が逮捕された事に始まる。

ダーバフィールド伯爵は以前より犯罪集団との継がりがあり、権力闘争の道具としていた。



まあ、こんな事は多かれ少なかれ、どこの貴族連中もやっている。

しかし、あるきっかけでグラハルト王子(元帥)率いる帝国第一軍団内の憲兵騎士団が捜査に乗り出す事となった。

その結果、犯罪集団を検挙、そこから入手した証拠によりダーバフィールド伯爵一門の逮捕となった。



これには、ハーネス王、ローウェル選帝候始め多くの貴族が反感を感じ、皇帝(当時はアレクシアの先代、アレクシアの父、ジギスムントが帝位にあった。)に即時釈放を求める貴族が相次いだ。

しかし、捜査結果を公表する内にこの声は少しづつ小さくなった。

彼等の被害にあった者に、少なくない数の貴族も含まれている事が明らかにされたのだ。

こうなると、被害貴族に近しい者や、元々ハーネス家やローウェル家の派閥に属していない貴族達は、逮捕、実刑も当然との意見に流れた。

結果、ダーバフィールド家は取り潰し、成人している者は全て処刑という過酷な刑が断行された。



裁判は正規のものであり、証拠、証人も十分揃っていた。

中立の立場の者から見れば公正な結果で、不満を持つのはハーネス、ローウェル両家派閥の貴族のみだった。

そう、この時までは両家派閥のみだったのだ。

それが半年後、キッペンベルク王家や他の選帝候が加って反乱が引き起こされた。

とはいえ、切っ掛けが貴族犯罪者を見逃せという意見を無視された事と、その処刑の断行だ。

平民やそれに近い下級貴族の多くからは反感を持たれていた。

とはいえ、領主や主家には逆らえないので参加はしている、というのが現状だった。



そんな中、キッペンベルク家当主トレバー・ラ・キッペンベルクの弟にして帝国元帥、帝国第3軍団司令官ゼップ・ラ・キッペンベルクが指揮下の兵を連れ反乱軍を離脱、皇帝軍に合流したのだ。

元々が軍人として規律を重んじる性格だったゼップ王弟である。

正直、内乱参加は、兄であるキッペンベルク家当主の命令に逆らえなかっただけである。

しかし、他国であるスザンスルトを自国に招く様な行為は、彼の愛国心を多いに責めた。

結果、彼は反乱軍を離脱した。

また、ほぼ全ての部下は彼に続いた。

更に彼の離脱を知り、他の部隊でも彼に続く者、不利を悟り脱走を図る者が続出する。



これにより、戦力のバランスは大きく変動した。

そして勝ち馬に乗ろうと、中立を宣言した3家の選帝候も皇帝軍に加わる。

結果として、内乱軍は全て鎮圧、スザンスルト軍は逆撃され敗走、領土を逆に減ずる事となった。



とはいえ、帝国の傷も大きかった。

まず、皇帝含め多く人員が死んだ。

次期皇帝となったアレクシアの結婚相手という点では、密かに候補と上がってた人物の多くが戦死したり、内乱の加担者として犯罪者として裁かれる立場となっていた。

国外と見ても、一番の候補となり得た隣国が、内乱に呼応して侵攻してきたのだ。

講和条約を結んで賠償金と新領土を得ても、国民感情は結婚に反対だろう。

更に遠くの国からとの案も検討されたが、適当な相手が見つからなかった。



本来なら、皇帝の年齢も若いので時期を待つ、という選択もあった。

しかし、今度は皇帝軍として戦った側の貴族から声があがった。

功績に対する褒美として身内の者を皇帝の婿にと。

正直、宰相達は困った。

もとよりふさわしければ、婿候補にしている。

ふさわしいと考えなかったので候補にしてないのだ。

そんな人物を褒美として婿にしろ、と言われても頷けるものではない。

しかし、現在、反乱により1つ王家が無くなり(ハーネス家は取り潰し、キッペンベルク家はゼップに代替わり。)、2つの選帝候家が最後まで粘って戦い滅亡。

3つの選帝候家が存続を認められたが大きく領地を減じられた。

この混乱で、大きく力を伸ばそうと考える中堅の貴族達には、身内を王配にするのは最短かつ最良の地位向上手段に見えるのだろう。

その声は静まりそうになかった。



そうして、最後に出た案が神頼み、勇者召喚の儀である。

被召喚者の条件を皇帝の王配にふさわしい勇者を、と条件付けして神様に頼もうというのである。

アマス神の御思召とあらば、誰もおいそれと批難は出来無い。



しかし、いいのか、結婚相手を神様に斡旋して貰うって。

そして神様、なんでこんなおっさんを召喚した。

しかも3人も。

わけ判らん。

しかし、現状、交戦状態に無いとはいえ、かなりやばい状態じゃ無いのか、この国。

反乱の経緯やスザンスルトの参戦には、色々疑問が浮かぶ。

これは色々調べて貰いたいなあ。




「しかしさあ、何で3人も召喚したんだ。

体がもたんだろ、皇帝陛下の」


ここで突然、ヨッシーが空気も読まず爆弾を投下した。

まあ、僕もそう思ったけどさあ。

皇帝の顔が赤いぞ。


「いえ、こちらは一人のつもりでした。

過去2回の召喚では、召喚された勇者はお一人です」


そうソフィリア王女が平然と笑みを浮かべ答えた。

ですよねぇ。

性別が逆なら、3人と言わず4人でも5人でも召喚する事も考えられるが。

ハーレムは男のロマンだが、ちゃんと歴史的に見て必然なのだから。



君主制の政治において、後継の存在は重要である。

その為、子作りは君主の仕事の一つであり、義務でもあった。

ここで問題になるのが医療技術である。

医療技術の未熟な社会では、子供が成人出来る可能性が非常に低かった。

その為、世継ぎの男子の予備が必須であった.



しかし、ここでも医療技術の低さが問題となる。

母体の出産時の生存率である。

現代日本ですら100%には出来無いのだ。

それより格段に技術の低い社会では、出産は危険な行為なのだ。

よって、一人の人間に何度も出産させるのは、殺すと同義と言っても過言ではなかったのだ。

その為の多くの側室である。

古代エジプトなんかはこのパターンだし、他もこれに近い。

最も、男性のエロい欲望を、これで言い訳してる例も多いとは思うが。



例外はイスラムの嫁さん4人までOKだろう。

これの起源は十字軍だ。

十字軍で多くの男性が死んだ。

イスラムの原理主義的社会では、女性の権利、行動が制限されている。

その為、男性(父親や家長としての兄弟、旦那)がいないと生活するのもままならない。

そんな状況下で発生した大量の未亡人対策で出来たのがこれである。

未亡人か、熟女趣味のヨッシーなら大歓迎なんだろうけどなあ。



と、いうわけで男性君主のハーレムには、一応の理由が発生する。

しかし、いわゆる逆ハーレムは理由が存在しない。

実際、歴史的に見て、余り逆ハーレムで有名なエピソードはないからなあ。

まあ、恋多き女性というのはあるけど。

しかし、これで召喚イレギュラー説(召喚失敗説)の可能性が高くなって来た。

大丈夫なのか僕達。

思わぬ理由で召喚されていたおっさん達。

そもそも勇者がこれでいいのか。

そんな勇者の歴史が明かされる。

次回 第一章5話「なんか引けてくるよ。」

読者様とおっさん達に幸多からん事を。

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