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おっさん3匹異世界記  作者: 三色アイス
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プロローグ2 「こまけぇこたぁいいんだよ」

いよいよ異世界に行きます。

少し長くなりすぎたかと少し反省してます。

その日、僕はトリプルの初日だった。

ここで云うトリプルとは3連続の公休日のことだ。



タクシーの乗務スケジュールは会社によって色々なパターンがある。

一般的には月に12乗務をこなし、あとは公休となる。

1乗務2日で12回。

月に24日の労働である。

それに週1の公休を付け加えると28日となる。

何が言いたいかというと、12乗務だと30日、31日の月は日数が余るのだ。

そこで調整の為にトリプル(3連続の公休)が乗務スケジュールに入る事になる。



最も、この世知辛い資本主義の社会、当然会社は素直に休めとは言わない。

休日出勤として割増するから1乗務働けといってくる。

とは言っても強制は勿論出来無いので休む人は休む。



今回、石井ちゃんとヨッシーの乗務とずれていた僕はこのトリプルでキャンプする事にした。

ちなみに乗務の後のアケを休みと思っている人(乗務員含めて)はかなり多いが、これは休みでは無い。

一昼夜乗務(拘束21時間以内)の乗務をこなした乗務員は一定時間の休息期間(継続8時間以上)をとる(とらせる)事が法律で義務付けられている。

この為、この時間の労働は禁じられており、行動(労働)が自由な、いわゆる休み(休暇)では無い。

だから最近増えてる業界の噂、アケのアルバイトは違法なのだ。

まあ、余談である。



確かにバイトでもしなきゃ食べていけない乗務員の噂は事実だが、僕等はなんとか稼げている。

おかげで平日に山に入って飲み会キャンプだ。

お客様のおかげです、感謝、感謝、横浜都市交通をどうぞ宜しくお願い致します。



午前9時に営業所で待ち合わせ、アケの石井ちゃんとヨッシーには後席で寝酒のビールでも飲んでもらって少し寝てもらう。

ちなみに僕等は全員、遅番という乗務シフトで昼の12時に営業所を出て8時までに帰って来る。

つまり2人にとっては仕事上がりの1杯となる。

人間はこの為に生きてるんだよね、ミサトさん。



その間に第一の目的地、キャンプ場近くのスーパーを目指す。

まあ、近くと言っても歩いて移動出来る距離では無い。

コンビニなら幾分近くにもあるが、どうせ食うならうまい飯だ。

品揃えはスーパーに軍配が上がる。



ちなみに途中、石井ちゃんの家に寄る。

ワインにこだわる石井ちゃんとしては、スーパーの品揃えに不安があるので事前に調達している。

それをピックアップして向かうのだ。



営業所に持ってくればいいだろうって?

横浜都市交通の営業所内は特別に許可を取らない限り酒類の持ち込みは禁止だ。

営業所で飲まなくても禁止だ。

周りの目に触れた場合、風評被害が発生する可能性があるからだ。

昔はアケの乗務員が仮眠室で寝酒する(電車、バス、徒歩通勤に限る)位、何も言われなかったらしい。

寒い時代だと思わんか?ワッケインさん。

うん、寒いからパンッアーリートでもかけて士気を上げるか、バルジ大作戦

みたいに。

なんかこれの元ネタは日本軍らしいね、うち等の爺様達はすごいや。



高速道路を含め2時間もするとスーパーに着く。

ここで少しの休憩と食材等の買い出しと昼飯だ。

知らなかったのだが、木曜市(なぜ木曜かはわからんが)という事で大安売りをしていた。

その為、僕個人の買い置き分にかなり余分に買ってしまった。

こういう時、カーキャンパーで良かったと思う。

バイカーやハイカーじゃ絶対無理。

ただ、「お前はどこぞの主婦か?」とヨッシーに呆れられたのはショックだった。



ヨッシーの普段の口癖は「こまけぇこたぁいいんだよ」で、それを僕や石井ちゃんが突っ込んだり、フォローするのが定番なのだ。

そのヨッシーに呆れられる側になるとは。

値段の安さに我をわすれてたか。



その後、更に30分位かけてキャンプ場についた。

平日だけあり管理小屋の周りは貸切状態だった。

敷地内の小川のそばや炊事場の近くに数人いる位で他には誰も居ない状態だ。

夏休みには場所を満足に選ぶ余裕もない位に混雑している。

まあ、秋の平日ではこんなものだろう。



早速テントを張り、道具等を車からおろす。

ヨッシーのテントは月明かりでも張れます、の謳い文句のまま、一人であっという間に張られた。

まあ、ヨッシーはアウトドアの素人じゃないからなあ、前職の関係で。



石井ちゃんの方も僕がいるので問題なく張れた。

テントが張れたら、近くの温泉に行く。

この辺のキャンプ場は大抵敷地内か近くに温泉がある。

それもあって、多くのキャンパーは夕方暗くなる前に温泉に行く。

僕等もそれに習う。

なぜ暗くなる前かって、山の夜の暗さを舐めちゃいけませんぜ、旦那。

本当に真っ暗なんだから。

灯り無しではろくに動けない位真っ暗闇になるんだから。

そして、一風呂浴びてさっぱりした後、夕暮れ迫る中宴会の始まりとなった。



とりあえずビール、というのはバーなどではマナー違反と聞いた事があるが、僕等では定番だ。

最初の一杯はやはりビールが良い。

ちなみに僕と石井ちゃんの一押しはクラッシクラガー、ヨッシーは黒ラベルだ。

今日は多数決でラガー。



野菜の焼きびたしや炭で焼いた自家製(メイド・バイ・僕)ベーコンなんかをツマミに飲み始める。

焼きびたしというのは、野菜等を焼いた後出汁(今回はめんつゆ)につけたものだ。

焼いて水分が飛んだ野菜に出汁を吸わせて美味しくいただこうという料理だ。

ナスに人参にしし唐、ネギなんかを次々焼いて出汁に放り込む。

出汁に入れて冷ましながら味をなじませるので、ゆっくり飲みながら食べるのに向いた料理だ。

焼き肉とかだと焦げる前に食べないといけないから、どうしても慌ただしくなってしまう傾向にある、僕等の場合。



乾杯の後、あまり酔わない内にシリシリもつくる。

木曜市のおかげで安く色々買えたが、その分多くの量を買うはめになった。

人参は中位の4本でひと袋だったので、焼きびたしだけでは処理出来無い。

そこで沖縄料理のシリシリを作って処理することにした。

名前の由来は専用のおろし金?(スライサー?)で人参をカットする時のシュリ、シュリという音らしい。

短冊にカットした人参に十分火を通して甘味を引き出した後、卵でとじる優しい味の料理だ。

最初に見たレシピではツナ缶を加えていたけど、スパムや、他の野菜と合わせるレシピもある。

今回はいつも使わないネギを入れる羽目になった。

いや、だって石井ちゃんが入れろって強く言うし、ヨッシーも「こまけーこたぁいいんだよ、石井ちゃんはネギ好きなんだから大人しくいれてやれ。」と言い出すし。

「出た、本日最初のこまけーこたぁいいんだよ、いただきました。」なんて石井ちゃんも楽しそうにしてるし、入れないわけにいかないでしょ。

そんな感じでビールの後、僕と石井ちゃんは赤ワインに、ヨッシーは缶チュウハイに切り替え、更に宴会をたのしんだ。



どれ位経ったか、ワインを2本空け、3本目も半ば。

ヨッシーは缶チュウハイから角瓶の水割りに移行していた。

お腹も膨れスモークチーズやスモークかまぼこ(やはりメイド・バイ・僕)なんかをツマミにちびちびやっていた時だった。

何か判らないが息苦しさと圧力みたいなもの感じ、僕は思わず立ち上がった。



そう湿式のサウナの蒸気の中のような息苦しさ。

無論暑さはないけど。

それとまるで気圧が少し上がった様な体全体にかかる圧力のような感じ。

「ん?どうしたのニッシー」

「お、オメーションベンか?さっさといって来いwww。」

石井ちゃんとヨッシーは何も変化無いようだ、突然立った僕をただみてる。

だが、その直後だ、事態は一変した。



それは不可思議な現象だった。

地面が少しずつ光だした。

少しずつ明るくなりだし、更には光の粒?の様なものが浮き上がって来た。

大きさも様々、小さいのはそれこそ1ミリ以下、大きいのはソフトボール位。

そして、それらは地面の明るさが強まるにつれ辺りを埋め尽くしていく。

僕等は突然の事に混乱して動けないでいる内に光に飲み込まれた。



光は唐突に消えた。

光に包まれていたのはどの位だったろうか。

数秒にも思えるし、もっと長かった様にも思える。



気がつくと薄暗い空間にいた。

石造りの天井と床。

かなり広い空間の中央に僕等はいる。

テントも折りたたみ式のミニテーブルや椅子、クッカーやストーブ(料理用バーナー)我が愛車も先ほどのキャンプ場にあった配置のままそこにあった。



空間の高さは4、5mはあるだろうか。

正方形に近い四角形で一辺は目測では40m前後だと思う。

その中央付近に僕等がいる。

壁には松明らしき灯りが等間隔で配置され独特の焼ける匂いがわずかながら感じられる。

そして、僕の前15、6m位のところに20人位の集団がいた。



背中に嫌な汗をかく。

何人かが明らかに武装している。

あの手に持っているのは槍だろう。

円形のいわゆるラウンドシールドも左手につけてるし、イメージ的にはスパルタのファランクスだ。

勘弁してくれ、護衛艦の近接防衛システムのファランクスよりは断然組みし易しだが、荷が重い相手という点は何も変わらない。



たかがタクドラのおっさん3人で対抗出来る相手では無い。

槍で武装しているの半数、10人だが僕等を制圧するには十分な人数だ。

ランチェスターの公式を思い出すまでも無い、勝目ゼロだ。

それが入口らしき大きな両開きの扉を背にこちらを向いている。

穂先をこちらに向けてはいないが、そんなの何の救いにもならない。

彼らがその気になれば瞬殺されるのは間違い無い。

僕らが動けずに固まったままどれ位経っただろうか。

相手集団の中央にいた一番小さな人影がこちらに歩いてきた。



「私の言葉がわかりますか?異世界のお方」


薄暗い石造りの部屋で目の前の少女が話かけてくる。

窓の無い閉ざされた空間。

松明の灯りだけが光を灯している。

湿度を考えると地下室かなと酔った頭でかんがえる。

金髪、碧眼、白い肌、それに推定年齢十代前半とくれば、大きいお友達にはどストライクだろう。

その上、西洋人形の様な感じで容姿も整っていれば文句無しだと思う。

ホント、こんな状況じゃなければ。

更に言えば僕が35歳のおっさんじゃなければ。

せめて20年前にあいたかった。

本気でそう思った。



さて、どう答えるか考えなくてはならない。

そう考え後ろを振り返る。

そこには、さっきまで飲み会キャンプをしていたまんまの状態の同僚2人がいる。

二人共、動揺と混乱が表情にこれでもかというほど現れている。



トラブル発生時に頼れるのはヨッシーより石井ちゃんだ、と考えると頭を丸坊主にした30後半から40前半に見える男性の方にアイコンタクトを試みる。

丸顔で温和な雰囲気の顔を困惑に曇らせた彼は小さく首を振る。

迂闊な言質は避けろ、と言う事か、それともどう対応するべきかわからないという事か。



とはいえ、何も答えないというのもまずいだろう。

状況が進まない。

意を決し彼女に向き合う。

こういう時は日本の大人の必殺手段だ。


「すいませんが、今、だいぶ酒に酔ってます。

詳しい説明やお話は後日に出来ますか。」


人はこれを問題の先送りと言う。

しょうがないじゃん、本当に酔ってんだから。

一体、どうしてこうなった。

いきなり異世界に来てしまった3人のおっさん。

つい色々詰め込みたくなる作者。

この4人を待つの運命は天国はたまた地獄。

第1章1話 「やっぱダイの○冒険でしょ」

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