九
次は塔か・・先に頂上へと上るレースゲーム。落ちるのが10人はいつも通りといえばいつも通りか。だからといって気を抜く要因にはならないな。
「武様。これがあなたのカードです。前回のカードは次回戦のカードを渡す時にこちらに返却するようにしてください」
係員とカードの受け渡しを終えると塔に向かった。それまでにルールを確認しなければならない。前のようなドジを踏まないようにしなくてはならない。
【塔のレース~ルール説明~】
1,スタートは全員が揃ってからとする。無視して進んだ者は失格。
2,レース中の飲食、休養は自由とする。しかし場所は各階に設けられたフロアのみ。
3,レース中の武器の使用は禁止、能力で生成された物は判定外とする。
4,時間は無制限、15人たどり着いた時点または人数制限上やむおえず三十人になった時点で終了とする。
※なお、死者がでてもこちらは一切責任を負担することはない。
今回は全員スタートらしいな・・そして休憩や飲食、おそらく戦闘に使われるのが各階に設けられたフロア。全階にあるかどうかは分からんがそこを有効的にすべきだな。先に進んで罠を張っておくというのもいい手かもしれない。
「ではそろそろスタートいたします。参加者の皆様はこの白いラインに三列にお並びください。順番はカードの裏に書いてある数字を見てください。これは運ですので苦情の方はしないでください。」
アナウンスに従って40人が四列にきれいに並ぶ。しかし一人一人が人一人分間隔を開けているため、実質一列が20人分になっている。
「武、この塔すごい広いね」
「ああ、たしかに広い・・広すぎる・・」
この塔に来るまでに皆が思ったこと。それは一回戦の建物がすべてきれいに消えていたこと、そしてそのホテル自体も始め来るまでには建てられていなかった。そしてこの塔、20人分が一列に並んでいられるほど巨大な塔。フロアを設けて十回もあるのに会場で少し話していた程度の短時間にすでに建てられていたこと。口には出さないが皆怪しんでいる。しかしこれらの事実は『本当にどんな願いでも叶えさせてくれるのかもしれない』という考えをさらに強める要因ともなるのだ。これほど恐ろしい麻薬はあっただろうか?
「よぉし今回は余裕あるゲームだ。あんちゃん感謝してるぜ」
「おぉ?言ってくれるねぇ、まぁ一着は間違いなく俺かな」
「おめぇなんかに勝たせたりしないねぇー」
「お前ら少し黙ってろぉぉ。集中出来んだろうがあああ」
「てめーが一番うっせぇよハゲ」
レースが始まっていないのにもかかわらず菅田とその他数名がうるさく騒いでいる。菅田は人に馴染みやすい性格のようだ。
「馬鹿な奴らだ。一回戦となんら変わりないのに・・・」
「はしゃぐのは勝手なんだ。やらせておけ」
「ゲーム一つ一つの重みを分かっていない。なめた連中だ。ああいうのが先に落ちるんだろうな」
どうやら後ろの列でゲームの過酷さについて語っている集団がいる。ほとんどが自分の優秀さを自慢したいだけの人間ばかりのようだが、言ってることがあながち間違いではない所もいくつかある。
「なぁ、あんたらも気づいてるんだろ?ならいい作戦があるんだけど・・・」
何か隠された意味に気づいている、という感情は自分を過信させてしまう。自分の観察は確かなものだ、この予想は間違いではないはず・・と。自分もそういう素振りで語れば同じような人間が集まりはじめる。軽いナルシストのような連中だ。
「では、用意・・始めっ!」
アナウンスが響くと40人が一斉にスタートした。全員が長い時間の走りを考えてローペースで行った・・武を含めた10人を除いて。10人は最初から全力で走った。そして二階のフロアに着いた、その間三分。
「いきなりフロアがあったか。奴らが着くまで三分といったところか。急いで罠を仕掛けようぜ」
「ああ、さっさと10人始末しちまおうぜ。ヒヒヒ・・腕がなるぜ」
全員張り切っている。二階で10人減らしておけばそれに越したことはない。しかし彼らは気づいていなかった。
「ああ、そうだな・・ここで九人減らしておけばあとは残りのめんどくさそうな奴を選べばいいだけだからな・・」
武は周りに聞こえない小さな声でつぶやいた。
「武?どういうこと?」
「Growまだ分かってなかったのか。まぁ見ていろ」
二人の会話に疑問を感じた数人が顔を合わせる。どうやら聞こえていたようだ。しかし意味が分からないのか作業に戻った。
「聞いてくれ。この作戦はおれの新たな能力の実験を兼ねた物だ。付き合わせてしまってすまない。その実験台となるのが・・」
「そりゃあもちろん。下の安心しきった雑魚どもだろ?」
作業を終えた一人が立ち上がってそう答えた。
「そう・・雑魚だ。自分を過信しすぎた・・な」
全員がその言葉に反応した。下の奴らは平和ボケしているだけで過信などしていない。自分も当てはまっていないと思っているが何か武の言葉が皮肉に聞こえたからだ。
「何か怪しい影がこちらを見ているな・・・」
「武、僕も気づいてたが今はそんなこと気にしていると時じゃないだろ?」
「ああ・・・そうだな・・片づけるか」
全員の体の周りに突如無数の小さい球体のような物が現れた。それは全身を囲んで前が見えなくなるほどだ。
「うあああなんだこれえええ」
「一体俺達になにをしたあああ」
叫びが止み、全員がつぶれた。そこにはだれもいなかったかのように無残に潰されて薄くなった肉片と血の池しか残っていなかった。
「やはり様子を見に来てよかった。奴の能力が分かった。まったく恐ろしいよ・・・しかしおれの能力なら勝つことが可能だ。」
そして何事も無かったかのように下の階へと降りて行った。
「ん?お前なんでこんなとこで座ってるんだ?」
途中で座り込んでいるさっきの男に菅田を含めたローペース集団が話しかける。
「いやぁ、急いで行ったわりに体力なくて・・へへ、ここに合流していいですか?」
「ああ、いいぜ」
優しい・・なんでこんなにのん気集団は優しいのだろうか。さすがのん気である。
「うおっ、なんだこりゃ!血だまりが・・一つ・二つ・・うえっ、九個もある・・・。あれ?先行ったのって10人じゃなかった?あれ?」
さすがのん気である。
「あっ!そこに一人ボロボロの奴いるぞ!たぶん仲間割れで勝ったやつも満身創痍だったんだろう・・・」
指さす方向には武が倒れていた。腹部から大量の血が流れている。
「おえっ・・」
「うっ・・・」
「こういうの見る機会ないからなんかうれしいかも・・・なんて」
嘔吐するのん気の中に一人明らかな変態が混ざっている。
「うわ変態・・・」
「ち・・・違うよ!変態なんかじゃないよ!百歩譲って仮に変態だったとしても変態という名の紳士だよ!」
まともに死体を見ていないのん気ッキーズは死体に対して免疫がない。むしろ大丈夫な方が異常なのだが・・。
「おい行こうぜ・・・なんか変な臭いするしよぉ」
そう言って集団は前を走りだした。スタート前に見せた威勢は今は微塵も感じられないほどの情けなさだった。
全員が三階に向けて駆け上がって行ったのを見届けると、武は血の池からゆっくりと起き上がった。
「予想通り奴らはまともに死体を見たことない奴ばっかりだ。こいつらの血を少し借りただけなのにコロッと騙される。しかし一人明らかに疑いの視線を向けていた者がいた。あいつがおそらく俺の能力を見た者だ・・片づけるか」
「適当な作戦に見えたけど案外いけるもんなんだね」
二人は血のついた服をバッグに入れていたビニール袋にしまい、その場に置いた。そしてバッグに入れていたかえの服に着替え、正体がばれないための黄土色のローブを羽織るとゆっくりと三階を目指した。
「急がなくていいの?」
「お前に少し頼みがある。この丸い穴の開いた段ボールと小麦粉を持っていってそれを・・」
集団は三階の目の前に来た。そこで上空を飛んでいくGrowの姿を全員見たがそのまま何も驚かず進んでいった。
そして三階に着いた。
「やっとだぜぇー。ん?」
横を見るとGrowが正体を見られる前に段ボールを叩いて小麦粉砲を発射した。そして部屋が見えなくなるほどGrowは段ボールを叩き続けた。そして役目を終えるとすかさず武の元に帰ってきた。
「ゲホッゲホッ・・おわっ、なんだこれ」
「なんかの実験で見たことあるよな・・ゲホッ・・」
男の目の前に段ボールでできた別の箱。開けると大量の小麦粉。そしてふたの裏にこう書いてあった『息を思いっきり吸ってこの粉に吹きかけろ。そうすればこの罠を切り抜けるいいアイテムが手に入るだろう』。まことに不自然な文である。これはさすがにひっかからないであろうと思われたが・・・。
「フゥゥゥゥ・・・・・ブワアアア」
先頭の男は文にある通り息を吹きかけた。すると粉が自分たちの方向に吹きかかり後ろにまで被害が及んだ。何かのコントのようだ。
「うあああ。出口はどこだぁ?」
「まったく見えねぇ」
それぞれが四方八方に散らばり、走り回るせいで何度もぶつかり転げまわる。
「痛っ!なにするんでぇい」
「あぁ?そっちこそ!」
入口に並んでいたのだから真っ直ぐ進めば出口なのに驚いたせいなのかわけのわからない方向に走りだす。それを後ろで見ていた者も前の者について行くので連鎖していく。もはやその光景は滑稽としかいいようがなかった。
「ようやく着いたか・・・」
「おっ!なんか楽しそうだなぁ・・混ぜてもらおうかな・・」
いつも通りマイペースに歩いて来た武がようやく着いた。しかし先頭集団はまだぶつかりあいを続けていた。
「これじゃあ何時までたっても着きやしないな」
「どうするの?これじゃあ終わらないよ?武の能力で粉がなかなか落ちないようにしてるから長い時間晴れないんでしょ?今一気に晴らすと不自然だよ?まだ能力を変えたてだからゆっくり晴らすなんてこと出来ないだろうし・・」
この罠の仕掛け人である武自身この結果には呆れ果てていた。
「おーい。みんなー、一度この声の聞こえてくる方向にゆっくり、ぶつからないように集まって来てくれ。俺は今着いた所なんだ。つまりここが入口、ここに一度集まって真っ直ぐ進めば出口に着く」
「おお、救世主だ」
「やっとこの巧妙な罠から抜け出せる・・・まぁまぁ良かったが少し詰めが甘かったな。こちらには救世主がいる!」
その救世主が仕掛け人なんだが・・・。
そして九階。のん気ッキーズは誰一人欠けることなくたどり着いた。
「うおおおおお、あと一つだぞー」
「Fooooo。俺達の勇姿に乾杯だー」
自分たちは戦わずして協力と言っていいのかわからない足の引っ張り合いを繰り返しながら頂上目前まで来た。自分たちがここまで無傷でこれたのは武のおかげなのに。なんとも最後まで間の抜けたゲームだった。
「遅いよ武くん。なんかあの人たちみんなで一斉にゴールして恨みっこなしの運で決めたいんだとさ」
後からゆっくり歩いてくる武に声をかける少年。
「ああ、すまない。ゆっくり歩くのが好きでな。少し聞きたいことがあるんだがこの大会に同年齢が多いのはなんでだ?ああ、すまない。いつも周りをよく見てるようだし知ってるかと思って・・」
「気にしないでいいよ。そうだね、僕の調べによるとここにいる全員同い年だよ?何かの陰謀を感じるね」
「そうなのか、ずいぶん老けたのから下に見える奴までいろいろと・・ここにいる全員同い年か・・」
Growがぐるぐると部屋の周りを飛んでいる頃、武は怪しいと思っていた。自分の誘いに乗らずにこの大会の難関さに気づいている者が何人もいることを。そしてそいつらの一人が武の能力を見ていながら何もしかけてこないことに対して。
「Grow少し耳をかせ」
「ん?なんだいなんだい?」
飛び回っているGrowに声をかけ、自分の近くに呼んだ。
「怪しいと思わないか?あのPCを常に持っている奴・・・」
武の指す方向にはノートパソコンを持った気が弱そうな少年がいた。さっき武に声をかけてきた少年だ。カタカタとキーボードの音をたてながら何やら熱心に記録をしていた。そして時折こちらを見てにやりと笑みを浮かべ、またPCをいじり始める。
「確かに怪しいと言われれば怪しいけど考えたら簡単な話じゃない?だって武のような恰好の人間はさっきまでいなかったじゃない?だから不審がったところでおかしい話じゃないと思うよ?」
「奴はあの時俺達を見ていた・・・二階の罠の時だ。おそらく能力もはっきりと見られていた・・・」
「たしかに僕も不審な影を見たけど・・・。でもどこに彼を犯人と断定する要因があるんだい?」
たしかにGrowの言う通り。不審な影を見た。PCをしながら時折武を監視する。では証拠として不十分すぎる。決定打に欠ける。
「あいつはさっき俺に『武くん』と言った。お前もさっき言ったがおれはさっきまでいなかった者だ。名前なんて知るはずないし鼻から個人の情報など公表してすらない。おれはローブで顔を隠しているのになぜ俺が武だと判断できる?菅田でさえ気づいていない。一階での掛け声でもおれは名乗ってないのに・・・」
そう、武は誘いだす時に自分の情報を周りに教えてなどいない。知っている可能性のある者は誘い出した九人と菅田くらいだ。つまりあの時二階で話を聞いていた影しか名前を知る者はいない。それがあの少年を犯人だと推測する決定打。さらに疑いの目をしていたのも少年だけだというところも重要だ。たとえ能力で知ったのだとしても名前を呼んで挑発してくるということは少年を口止めさせればいいだけだ。
目線で気が付いたのか少年はこちらに駆け寄ってきた。
「やぁ、僕の名前は『戸口 正明-とぐち まさあき-』さっき名乗り忘れていたからね。・・・もう気づいてるんでしょ?僕が能力を見て対策を練っていたことを・・・」
「ああ、俺は昔から視力はいい方でな。画面を見ていたら俺の姿が見えてな。まぁローブなんて着てるのはおれくらいしかいないしな・・それにお前を犯人と特定する証拠は揃ってる。で、一体何の用だ?」
本題を聞きださねば・・・奴が俺に近づいてきた理由。能力が知られている俺が不利なこといいことに交渉をするか、戦闘をしていくるか・・・おそらく後者だろう。
「戦おう。君はあの時9人減らしていたね。ならばあと一人は君ということさ。僕は能力しっている。それを使わない手はないからね。」
さて・・俺は奴の能力を知らない、どう戦うべきか・・・。
「いいだろう。しかし一つ提案がある」
「聞こう」
「勝負をするにあたってお互いどうしても避けておきたいことがあるだろう?能力がばれてしまうことだ。このまま戦闘に入ればおそらく皆に自分の能力がばれてしまう。つまり全員がこの場を離れるのを待ってからにしよう」
能力がばれてしまっては次のゲームからかなり苦戦することになる。そのゲームの内容にもよるが能力がばれてしまうことは致命的だ。レベルアップで能力を変更しようにも経験値がまだ足りなさすぎる。経験値を獲得するためには能力を知らない状態からの駆け引きが重要だ。
「なるほど。まぁ先にいかしても君か僕、どちらかが戦闘不能になればその時点でゲームは終了なわけで急がなくてもいいし」
「理解が早くて助かる」
「僕たちは体調がすぐれないから先に行っててくれるかい?後で追いつくからさ」
座り込んで顔を隠した武とPCを持ったいかにも運動できなさそうな戸口を見て全員が重い腰を上げて歩き出した。
「絶対追いついてこいよ?絶対だぞ?」
「俺たち一斉にゴールするって決めたんだからな!お前たちがいないと話にならないんだぜ!早く戻ってこいよな!」
優しすぎるぞのん気ッキーズ。どこかで聞いたようなかっこいい台詞をそれぞれ言ってまた歩き出した。
「Grow準備はいいか?」
「あったりまえよぉ」
二人は戦闘態勢に入った。
「なに・・・・」
何が起こったんだ・・。たしかに俺は戸口を見ていた。しかしGrowと向き合った一瞬だ・・戸口は菅田を消した。出口は武の後ろにある。見逃すはずがない・・でもこの部屋のどこにも見えない。
「武!奴は一体どこ!?」
「さぁな、ったく、どうしたものか・・・もう少し周りを見・・ウグッ」
気が付くと武は戸口に脇腹を殴られていた。
「ぐ・・どこから・・・」
どこから来ている?瞬間移動や透明の類じゃない・・・奴が俺を殴る直前、俺は風を感じた。並大抵のスピードではない。肉眼では追うことが出来ないスピードで移動し、武の前で静止してから俺を殴った。おそらくそのままのスピードでパンチを繰り出すと自分の腕も持たないからだろう。
「お前は自分を加速させることができる能力か?いやただ加速していただけでは急に俺の前で止まることは出来ない・・」
そしてからかうように武の数歩後ろに少し姿を現し、武が振り返る途中でまた一瞬で姿を消した。
「そうだね。僕は普通に歩いて普通に止まって普通にパンチをしているだけ。ただ時間を圧縮させてるだけさ。僕の時間では数歩歩いただけで君の周りを一周することだってできる。走ったら視界から一つの残像も確認できないほど高速になる。ただそれだけの能力さ。しかし君にはそれだけで不利だろう?だって相手を目視してないと発動すら出来ないのにさ」
やはりばれていた。そう奴はあの時壁の後ろに隠れていた。壁をはさんだだけのところに他の敵もいた。しかしそいつは殺せて戸口は殺せなかったのは範囲などではない。目視。武はその目で相手を確認してからしか発動できない。もちろん一度見た事実だけでは能力発動の条件にならない。
チッ・・また壁に隠れながら話しているな・・・しかし奴をあぶりだす算段はすでについている。
「Grow・・作戦がある」
武は静かにGrowに話しかけた。
「おれのバッグを取りに行ってくれ。」
「いいけどそれ今必要なことかい?部屋の隅だし結構距離あるよ?」
「聞くな。急げ!」
Growは無言でうなずくとバッグの元へ飛んで行った。
「お前は所詮隠れて戦うだけの能無しか・・見た目通りだな。おれはそういう奴に偏見はないがお前のような戦い方をする奴に容赦はしないぜ?」
すると目の前に戸口が現れた。
「安い挑発をされるとは僕もなめられたものだな。なぜ出てきたのか?それは能力の根源であるあの生物がバッグを取りに行ったからだ。この距離でも数十秒は戻ってこないだろう。ならば・・・」
瞬間、戸口は武の背後に移動し武を殴り続けた。
「ってぇ・・・勝利を確信するとすぐ調子に乗りやがる・・・こういうタイプはどこかで経験した気がするな・・・」
消えては殴り、また消えては殴りをひたすら繰り返してくる戸口。地味な戦略だが武はかなり傷ついてきた。
「武!待たせてごめん。取って来たよ!」
バッグをフワフワと持ってきたGrow。Growは自分以上の重さの物を持っているのだ。それなりに時間はかかる。
「可能性は微塵も作らない」
戸口はGrowからバッグを取り上げ、高くふっ飛ばしてまた消えた。バッグの中の物が散漫した。
「戻れGrow!」
Growが戻ると武は空中に漂うシーツに能力をかけた。シーツはフワフワとその場を漂う。
「くくく・・なんとも優雅な空間ですねぇ」
戸口は余裕ぶって武を嘲笑いながら話していると戸口はシーツにぶつかった。そして数秒間静止していた。それが命取りだ。
「ん!?なんだこれ・・シーツ?驚かせないでくれよ」
戸口の能力は時間を圧縮すること。つまりその空間内で数秒でも静止することは武の時間軸では戸口な長い間その場を突っ立ていることになる。その戸口を発見し、目視するなど造作もないだろう。
「単純だろ?でも即効性はある。たった一瞬でいいんだ・・・その一瞬でお前を目視さえできればな・・」
武が戸口を睨むと戸口の足がつぶれて血がだらだらと流れだした。
「助けてくれ・・頼む・・」
「おれがお前の足を潰したのは戦闘不能のみにして勝負を終わらせるためだと思ったか?残念、俺はお前をなぶり殺しにしてやりたかっただけだ。もう知っていると思うが俺の能力は突発的にお前の周りに重力の塊を生み出す。それは無限に、そして重力の効く範囲と強さまで自由だ。自分の周りを重力で囲まれていると四方八方から地球とは比べ物にならない重力に引っ張られているとお前の体はそれに耐えられなくなり中心で潰れる。よく見ろよ、お前の足・・糸みたいに細くなってまだ残ってるだろ?」
なんて馬鹿げた能力だ。見るだけで相手を殺せる能力だなんて・・しかも苦しみを味あわせながら殺させれる。自分がつぶれていく痛みを感じながら・・・。
「ぐ・・・早く殺せ・・・」
「ああ、だが少し待て」
武は戸口から戸口からPCを奪った。
「こいつは使えそうだな・・・どうせだしこのPCはいただいていくとする。最近PC欲しいと思ってたんでな。お前にはこの戦いは荷が重すぎたのかもしれないな。Don't make light of the war。あばよ・・・」
戸口は断末魔を発する暇もなくその場の血の池となった。
「Grow、出来れば次は弱点がないくらいの能力が欲しいものだ・・まぁそれは無理な話なんだろうが」
「えー、武の能力は今の段階ですでに強いと思うけどなぁ。強欲だなー」
「まぁいいさ、とりあえずここでゆっくり休むとするか・・」
え?なんで?といった表情で武を見るGrow。その視線を武も気づいた。
「ルールカードに書いてなかったか?失格する人数がもう達してるんだ。行く必要なんてあるのか?」
アナウンスが始まった。
「今回は一斉に行ったゲームですので脱落者のみ発表させていただきます。全員死亡されましたので死亡させた順番に発表させていただきます
『天井 正輝-てんじょう まさき-』
『沼野 政木-ぬまの まさき-』
『木村 昌樹-きむら まさき-』
『出口 真樹-でぐち まさき-』
『杉林 真咲-すぎばやし まさき-』
『後藤 正木-ごとう まさき-』
『樽野 正毅-たるの まさき-』
『林田 正喜-はやしだ まさき-』
『近藤 雅喜-こんどう まさき-』
戸口 正明
以上の十名となっております。次のゲームの発表は24時間後です。前回と同様遅れることのないようお願いいたします。」




