六
卒業から一年後。
「なぁ武よぉ、あの茶髪のこと・・・」
その問いに武は少しうつむいた。
「繁は世界と違う方向に向かおうとしていた。真理の矛先を間違えたのかもしれない。おれにもまだよくわかっていないが・・・この世界はまるで自分たちの欲望にひたすら向かわせようと動いているようだ・・・」
Growは武の言っていることが理解できなかった、今はまだ。
二人は今孤島に来ている。Growには元々、瞬間的に大会本部に案内する機能が備わっていたからだ。
「作戦は話したか?」
「いいや、武が何も言わずさきさき進むから何も聞く暇無かったよ。ていうか作戦なんてあったんだね」
やれやれといった表情で地面に座り込んで話し出す。
「いいか?どこの世界にも馬鹿はいるものだ。ここにいれば100ポイント持ってるやつが来る、そいつを叩いて行こうっていう弱いくせに変に頭つかうやつがここらへんに潜伏しているはずだ。そいつらの前をわざと堂々と本部に向かいおびき出す、出てきた獲物を叩く。そんなところだ。」
おそらくあの岩陰の後ろと大きな木のうしろ、木のてっぺんに一人づつ隠れているな。まずはやつらを叩くとするか。
武は用心深く周りを見渡す。島の入り口付近は森になっており、木々や岩陰も多い。隠れながら攻撃など容易なものだ。
「でもさ、僕達はもう85点もある。焦ってわざわざ敵が多く、対処の遅れやすいこんな場所でeaterを狙うの?そこまでする必要ある?」
たしかにGrowの言う通りだ。そこまでしなくともGhostは山ほどいる。というか、おそらくGhostはいなくなることはないだろう。ここで強者に出くわして殺されては元も子もない。地道に集めた方が時間はかかるが一番安全な道だ。
「Grow本当に100ポイント集めただけで全員の願いを叶えてくれるなんて都合のいい事想像しているのか?おれが思うにこのゲームは何回戦かのゲームがある。そして俺達はその参加資格としてポイントを集めさせられてるにすぎないんじゃないか?そう考えると敵をルールなしで殺せる今、できるだけ人数は減らしておきたい」
この大会にはおそらく千人は参加していると見積もる。そのくらいいないと人を減らしていいルールなんてその存在自体が大会をぶち壊しているようなものだ。どちらにしてもまたあの通り魔みたいな人間を残しておく理由はない。
「ほへぇ、よく考えてるね。じゃあさっさとそこらへんの物陰に隠れてる三人を蹴散らしちゃおうか」
岩陰から三人出てきた。三人とも顔がそっくりだ。おそらく兄弟で一緒に戦えば勝てるなんてなんの確証もない作戦をたてたのだろう。
「おれは長男の一郎だ。能力は自分を含めたすべての人間の中から三人選択して基本身体能力を選択した数だけ倍加させるのさ」
「おいらは次男の次郎でやんす。能力は自分を含めたすべての人間の中から三人選択して防御力を選択した数だけ倍加させるでやんす」
「あっしは三男の三郎と申す。能力は自分を含めたすべての人間の中から三人選択して攻撃力を選択した数だけ倍加させることができやす」
流れるような自己紹介と能力説明をすませた後、三人は戦闘も流れるように武に一人あたり三秒づつほどで敗北した。
会場内に着いた。集合場所の会場は野球場のような広さがあり、ドーム状になっている。しかし中は真っ暗で、だれがどのような格好をしているかまったく見えない。しかし目が慣れてくると人数くらいは把握できるようになった。ざっと50人程度、千人からこれだけ選りすぐられた。
会場の真ん中からにょきっと円形の台のようなものが上がってきた。そこには性格の悪そうな年寄とその台の周りを囲む図体のでかいSPのような男が数人いる。ずいぶんと厳重な警備だ。まぁここにいるのは全員能力者、これでも足りないくらいだ。
「私がこの大会運営を仕切る会長であり主催者の『藤堂 重彦-とうどう しげひこ-』である。勘の良い物はすでに気づいてると思うが全員に褒美など与えぬ。この中から一人にだけ褒美を与えるゲームを今から行う。異論はもちろん受け付けぬ」
そんな事とはしらずに来たモブ集団が文句を言いだす。
「おいおい聞いてないぜー」
「俺達に褒美を今すぐよこせー」
「ブーブー」
会長はゆっくりと周りを見渡した。そして何人かの有望な顔ぶれと目を合わすとにやりと不敵に笑う。
「だまれ愚か者ども!戦闘機能はかけらほどしかない幽霊を多少倒した如きで?参加資格すらまともに取れないカス共を蹴散らしたくらいで?そんなことで願い事を叶えろだのとどこまで世の中を甘くみれば気が済むのだ!そんな戯言を言っている暇があるならここで全員を消すくらいの力量を見せぬか!」
この年寄の言う通りだ。こいつらはこんな低レベルな事をこなしたくらいで本当に自分たちの力に酔いしれていやがる。情けない話だ。願い事を叶えるというのは自分の命でも足りないくらいの事なんだよ。
会長の発言で全員が静かになった。その状況を見て会長が表情を戻して満足そうにした。しかしさっきの発言で何人か消えて行った。
「ふむふむ・・では改めてこの大会のルール説明と行こうかのぉ。まずこの大会はいくつかのゲームを経て最後の一人になったところで終わりとする。今からそのゲームを決めようと思うのじゃが」
会長はごそごそとカードを取り出してきた。よく見るとどうやらそれはタロットカードのようだ。綺麗に箱に入れられてある。
「ここに二十一枚のタロットカードがある。このタロットカードにかかれた絵のゲームをしてもらう。わしが終わるごとに一人選ぶ、そやつにこの中から一枚選んでもらう。そうだなぁ・・・・」
目があった。まるで最初から武を選ぶつもりだったようにこちらを見てにやりとする。薄気味悪い笑顔だ。
「そこのお前。選べ」
やはり俺を選んだ。タロットか・・・昔興味本位で調べたことがある。名前で推理することもできるがこの場に合った名前のカードは一つ。それを言えといいたいのだろう・・まったく性格のねじまがった爺さんだ。
「そうだなぁ・・・最初のゲームだったな・・・なら俺が選ぶのはもちろん『fool』・・愚者のカード」
会長を見て武もにやりとする。
「フハハ、フハハ。お前ならそうくるとわかっていたよ・・・では愚者のゲームについての説明をしよう。ルールは簡単、ただの鬼ごっこだ。まず五人一組を作ってもらう。制限時間は二十四時間。一番最後に鬼だった愚か者には願い事など烏滸がましい。細かい規則やルールは係の者から各自に渡されるカードを見て理解せよ」




