三
武は夕食を食べ、風呂に入って歯磨きを済ませるとベッドに横になった。今日は特にいい番組はなく、そのまままぶたをゆっくり閉じた。
武は眠りにつくとすぐに夢を見た。とても深い夢・・・。武は錠前のついた扉の前に立っていた。握っているその手には鍵がある。その鍵は錠前にしっかりとはまり扉を開ける。開けたそこには武と仮面の男が立っていた。自分は声をあげることも動くこともできずそこにいるもう一人の自分の首がしめられ意識がなくなって行く様をただ見ているだけ。見ているだけというより動けない。
「はっ!今のは・・・」
武は跳ねるように起き上がった。
「何もかも思いだした!昨日の夜のこと・・・仮面の男・・封筒・・・。そうだ!封筒は、あの封筒は一体どこに・・・」
部屋をゴソゴソと探し出す武。昨日の封筒は一体どこにいったのだろう。あのあと意識を失ってから見ていない。記憶が無くなっていたのでまず視界に入っても気づくことはないのだが。それでもそんなものを見た覚えがなかった。
「封筒はもう無いよ。だって封筒は僕だから。」
一人しかいないはずのこの家に二人目の声が後ろから聞こえてくる。何かの心霊現象なのだろうか。そういう類のは苦手だ。
一体なんなんだ?喋って動く封筒!?なんていうか・・・すごく楽しみだ!一体どんな外見をしているんだ・・足が生えて口が付いているのか・・?
振り返るとそこには火の玉のような姿の生物らしき物体が浮いている。仮面をつけている・・・まるでデジャブだ。そして武の期待は大きくはずれた。そもそもなぜそんなことに期待しているのだろうか
「封筒はね。受取人が潜在意識で最も望む能力へと変化するんだ。それは僕のようになったり、目に見えなかったりする。主に才能の一つと考えてくれていいよ。例えば鉛筆回すのが上手いとかやたらとバランス感覚がいいとかさ、そういう物の延長なんだよね。君は過去に近しい人を失っているようだね。一人・・いや二人か、辛いね・・・だから僕のように絶対に消えてしまわない友達を求めてしまったんだね」
武の過去をすべて知っているかのように語りだす。潜在意識から生まれた存在なんだ、知っていて当然なわけだ。しかし他人の過去を知ったように語られるのは迷惑だがここは抑えて話を聞かなければならない。
「君は誰だ・・僕の意識が作り上げた?ちょっと待って・・・・なんのために?訳が分からない。まず名前を聞かせてもらえる?」
頭がこんがらがってきちゃった・・・・この生き物は一体・・・僕の絶対消えない友達?僕には大切な友達がいる。消えない・・たぶん・・。
武は恐れていた。母、父といなくなったことで自分はまるで死神なんじゃないか?次は友達が消えてしまうんではないか?と。
「僕の名前?ああ・・・個体名はないけど強いて言うなら『Grow』君とともに成長していく生物だ。」
Growは坦々と話を進めて行く。
「なるほど、Growか。よろしくね。それでGrowは何のために僕のもとへ来たの?いや、何のために生まれたの?っていうのが正しいかな・・・」
「君たちにはゲームをしてもらうよ。ルールは簡単、君たちには・・まぁ、ある種の霊みたいなものが見えるようになった。っていうか本物の霊なんだけどね。そいつらを倒してポイントを稼ぐんだ。倒し方はいろいろあるよ?直接的な攻撃でもいいし、本物の霊だから過去も自我も少しはある。それを利用してもいい。」
なるほど霊か・・なんか壮大だな・・・。
「でもそれだけじゃあなんか作業みたいでつまらないじゃない?さっき僕が『君たち』といったでしょ?このゲームにはいっぱい参加者がいるんだよね、そいつらを倒して競ってもらうんだ。霊、まぁ名前を『Ghost』と言うんだけどそいつらを一点。参加者『Eater』を逆に喰らってやるんだ、そしたら五点。だれよりも早く100点とればこのゲームの企画者の大金持ちさんからなんでも願いを叶えてもらえるチャンスを与えられるらしいよ。あんまり知らないんだけどね。ちなみに集計日は三年後のこの日だそうだよ」
そういえばあの仮面の人が言ってたゲームってこれのことかぁ・・・金持ちの道楽に一般人が望みを叶える商品目当てにあっちへこっちへ・・・、これってまるで滑稽なピエロそのものじゃないか・・。
しかしこの腹立たしい気持ちとは裏腹に武は心の底の方からわくわくする気持ちがこみ上げていた。
「Growには何か能力があるの?そこにいるだけでは敵を倒せるはずないと思うし・・元は僕の潜在意識だとしてもそれはイコールではないはず、成長っていうのもあまりにも抽象的だし・・・。」
「ふふ、君鋭いね。僕の能力はGrow。戦えば経験値をためていき、それを清算して能力を生みだしていく・・まぁ他の能力に比べてかなり特異だね。状況に応じて能力を変化させるなんてめずらしいだろうね・・・」
正確な能力内容は、ある一定量の経験値をためていくことで能力を複数の段階レベルアップさせることが出来る。能力の限界は無く、タイプも様々だが本人の精神状態にも多少左右される。現段階で武は自分の第一段階の能力の内容を認知している。
「だいたい分かったよ。これからよろしくね」
「ああ、こちらこそよろしくたのむよ」




