十一
武が目をさますと日付はすでに変わっていた。
「武、そろそろ準備しとかないと次のゲームの説明はじまるよ?」
「ああ、そうだな・・」
会場に来るとそこには武を含めた三人しかいなかった。いや、重症で倒れている菅田もいる。塔の時点での残りは30人、今回六グループに分けられ一人ずつ残るのだから六人いて当然のはず、しかしここにはたった四人。
「まったく情けない、我がグループはたったこれだけか・・・まぁいい、お前たちは残ると分かっていた。問題なのは他じゃったんじゃ・・・はぁ・・。今からお前たちに状況を説明するぞ。ここに集まれ」
会長の掛け声とともに三人は集まった。姿は動けそうになかったので武が菅田の元へ歩いて行き、会長の元へ運んだ。姿はふてくされていたが武はいたって無表情だった。
「あの、一つ気になったことが・・・」
一人が喋りだした。真面目そうな男だ。剣道とは似ているが少し違う正義をもったような男だ・・・。武は寝ていたため、残りのメンバーの名前を知らない。
「なんじゃ、言ってみろ」
「我がグループと言っていましたがそれはどういう意味ですか?」
「それも含めてすべて説明する。まずはここじゃない別室に案内する。ここにいるメンバーだけでよい。他は勝った後に死んだ者だけだろう」
じゃあなんでこの会場に案内したのだろうか?皆疑問に思ったが口にはださないようにした。しかし他二名は勝利した後に死ぬほど過酷なゲームを生き残ったのがここにいるメンバー。まだゲームがあると思うとぞっとする。
四人は会場を出ると外に不思議な物体が浮いていた。だれがどう見てもそれは空中に浮いたドアノブ。会長は何も驚く様子なくそのドアノブを握るとドアを開けた。そこにはそこそこな広さの部屋があった。ソファーが円を作るように五つおいてある。会長の分を引くと四つ、まるで残りが四人なのを予知していたかのようだ。会長自身が残り二名は死ぬとしらなかったのに・・・。三人ほど座れるソファーに一人ずつ腰かける。
「では話そうかの・・まずこの大会はここでのみ行われているわけではない。もちろん様々な孤島でも行われている」
孤島ってそんなにあるものか・・・?。
「参加グループは全部で五つ、わしらもその一つにすぎぬ」
「もしかしてそれは五大地で分けてますか?」
先ほどの男がまた質問をした。
「その通りだ。まず一番北に位置する広大な自然の第一地区。そして第一地区の真下の大きな島の右半分、最も繁栄している第二地区。同じく左半分、第二地区に負けず劣らずの繁栄の第三地区。わしらは第三地区の下に位置する四つの町に分かれた第四地区。そして第四地区の左に位置するかつて傭兵地区と言われたほど屈強な戦士が育った第五地区。このように分かれた地区でそれぞれ五人または六人のチームを作り、それぞれのチームを戦わせる。そして勝ったチームで一つの願いを叶えよう。もちろん戦って決めてもよい」
なるほど・・・五大地でそれぞれ争ってどこが一番強い地区か見せつけようっていう大会か。本当にここまでの道楽に何千人が死んだんだ・・。
「あの・・ちなみにその大会はいつ・・ですか?」
死神のカードを選んだ子だ。ここまで残ったのだからそれほどの実力者なのであろうがそうは見えない。
「一週間後だ。それまで好きなように時間を使ってくれ。しかしそれはあくまでわしらが作った施設でだ。なに、心配する必要はない、お主らの家とまったく同じにつくってある」
武たちの後ろの壁にドアノブが突然あらわれた。それぞれ立ち上がりそのドアノブを開けるとみなれた部屋があった。おいてあるもの何もかもはそのままだ。
「武・・これは・・」
Growも驚いている。自分が少し前までいた家と全く同じなのだ。驚くのも無理はない。しかしここまで忠実に再現されていると恐ろしいものだ。
「話は以上だ。また何か質問があればその都度聞こう。しかし会うのは朝、昼、夜それぞれ一度ずつだ。それ以外に会うすべはない。ではあとは好きにせい」
その言葉とともに会長はどこかへ消えた。
「Grow、とりあえず休むとしよう」
「ん?そうだね」
冷蔵庫には一週間分には十分なほどの食糧はない、しかし次の日に変わる度に中身は補充されていった。だれかが入った痕跡はないのに。
「今日は何にするの?」
「そうだなぁ・・・ハンバーグでいいか?」
「おっ!やった」
こういう所は武もGrowも全く変わっていない。ありきたりなものしか作っていないように思われているかもしれないが武は意外と器用で一度作ってみればだいたいの料理はコツをつかんで二度と失敗しない、むしろ店を出せるほどおいしい。初日はハンバーグ、二日目は生姜焼き、三日目は豆腐ステーキ、四日目は唐揚げ、五日目はチャーハンと酢豚、六日目は海鮮丼、七日目はカルボナーラだった。どの日も栄養バランスが取れており、見栄えも味もよかった。一家に一人ほしいものだ。
「そういえば今日最終日だね。ていうか一週間後に始まるゲームに一週間まるまる待機でいいのかなぁ?」
「俺達を孤島へ連れてきた方法と同じなんじゃないのか?」
武とGrowはここに来るのに一秒もかからなかった。それはGrowとともにいたらいきなり会場に飛ばされたからだ。おそらく今回も同じような方法で飛ばされるに違いない。それにしても一週間は長かった。しかし怪我の感知には十分だった。
「そろそろあの部屋に言ってみるか・・」
「そうだね」
扉を開けると武とGrow以外全員そろっていた。また武が最後だ。
「あ、どうも・・」
「君はいつも最後な気がします」
「遅せぇよ」
誰が誰か説明しなくても分かるような返しだ。
「うむ、菅田 虎彦、佐野 正義、吉崎 燈子、銀 武、全員そろっておるようじゃの。では今からお主たちを会場に送り届ける・・・覚悟はよいな?」
「おう!いつもでいいぜ・・・・え!?銀か。服変えたの気づかなかった・・」
気づかれないために服変えたんだがな。
「覚悟は出来ています」
「あ・・はい」
「ああ」
全員が返事をした。
「最初に話した通りこちらは人数が他にくらべて少ない・・少なすぎるほどだ。勝てる確率はこれでガクンと下がっておるが勝てないわけではない」
他はほとんどが6人で構成されたメンバーだろう。しかしこちらはたったの四人。
「ええ、そんなことは最初から分かっています。しかし能力面でこちらが負ける未来は私には見えていません」
「お?言うねぇ、まぁその通りだけどー」
佐野と菅田が弱気な会長の発言に食いつく。佐野と吉崎の能力は分かっていないが武と菅田の能力は十分強い。
「あの・・・なんでそんなに自信が・・・」
「吉崎さん。私がいるので負けることはないからです」
「同じ意見だが、俺がいるからだ」
「なに?」
「なんだよ」
佐野と菅田はおそらく性格からして合わないのだろう。剣道と中岡のように対極の位置にあるような二人だ。
「ではそろそろ飛ばす時間だ。お主ら準備は出来ているんだろうな、ここに戻る方法はないからな。わしからもお主らに買ってほしい理由がある。頼んだぞ」
話から三十分後。それぞれが転送用の機械の上に立ち、準備を始めた。
「なぁ、これほんとに大丈夫なのか?」
「なぜ今からあせってるんですか?」
菅田は以前の転送の時には寝ていたという。そしていつのまにか会場に来ていたため、いまだに転送されたのだと知らないでいる。
「大丈夫・・私機械には強いから。ちゃんと調整作業手伝ったし・・・」
ここに来てようやく吉崎の個性が表れた。吉崎は専門学校の出身で、機械を専門に扱っているらしい。ここに来る前は機械の整備会社で働いていたのだが家で読書している時に飛ばされた。
ここまで武の台詞があまりないのも個性だ。
大きな音とともに武たちは大きな都市に飛ばされた。そこは自分たちがよく知る第四地区とそっくりだった。
「どこです・・ここ」
「お、俺の住んでた場所だ・・・B市だ・・」
ここは第四地区のB市とまったく同じといっていいほど似ている。人がいないことをのぞけば。
「私はC市でした。どうりでしらないはずですね」
「わ、私はD市でした・・銀くんは?」
「俺はA市だった・・・」
それぞれが別々の市に住んでいる。偶然なのか疑問に思う所がたびたびこの大会にはある。
「もしかしたらなんだけどいいか・・?」
菅田が周りを見渡しながら言った。
「なんです?」
「このゲームってさ、それぞれの地域に飛ばされて戦うんじゃ・・・」
ヒュンッ!菅田が喋っている途中、菅田を残して三人は消えてしまった。気づくと武はA市にいた、しかもそこは武の家の前。
キーンと耳を劈くような音がした、そしてどこかで聞いた事のある声。
「よこそこ我が世界へ。ここは我々の国を基にして作られた空間・・・」
この声は封筒の時の・・・しかしあの時とは雰囲気がまったく違う・・。
「君たちはそれぞれの地域へ飛ばされたはずだ、誤作動によって一時的に集合したグループもあるようだが・・。今から君たちは戦ってもらう。まずそれぞれの出身地を範囲を狭めた空間に君たちはいる、そしてその地域にはワープシステムが一つ設置してある・・それは他の参加者がいた場所にランダムに飛ばされる。そうやってワープしていき、敵と出くわしたら戦闘、味方と出くわしたら合流もよし。自分以外のチームを殲滅したチームを勝者とする」




