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Full metal judgement  作者: 直線T
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『僕は不思議で、奇妙で、楽しくて、危険で、わくわくする人生を送りたい』

少年の願いはただそれだけだった。人生に少しの刺激があるだけでいい、それだけでよかった・・・。過剰な刺激などいらない。

 これから皆様にお話しすることは、とても奇妙で数奇な人生をたどるごく普通の少年の物語である。

舞台は第四地区A市A町、人口は三万二千人の町。最近少子化が問題になっている平凡な町。

その町のはずれに住む少年の名は『銀 武-しろがね たける-』普通の名前、先祖がどこぞの有名な武士らしくそれにあやかって武士のように強くあれと親がつけたらしい。自分の息子が強くなることを願ってつけられた名前だ。しかしそんな願いとは裏腹に武は運動も並、頭もとてもじゃないが良いとはいえない、背は165とそこそこ、なんのへんてつもないただの高校生。

武は毎日が退屈だった。しかし平凡な人生に満足していないわけじゃない、でもどこか物足りない・・・そんな気持ちをずっと抱えて生きていた。いつか面白いことがおきて人生が180度変わらないかなと。漫画やゲームの世界に入って自分も冒険をしたいと・・そう思うこともある。

 武の家。必要以上の物はあまり置かないようにしている。昔は父と二人暮らしで狭く感じていたが今は逆に広く感じる。

 「父さん、母さん。今日も何事もなく一日が終わりました。明日も今まで通り問題を起こさず終えるようにがんばります。だから父さんも母さんも安心して天国で見守っていてくださいね」

武は二人の写真の前で一日の報告を済ませるとテレビを付け、番組を見ながら布団を敷き始めた。

 武の父は大工の仕事をしていた。裕福とは言い難いが何不自由なく暮らして来た。結婚して二年目。武を出産。しかし出産とともに母は息を引き取った。もともと病弱で子どもを産むにもリスクが高かった。しかし本人の強い希望で出産が行われた。武を心配させまいと父は悲しいそぶりを見せなかったが仕事に行く途中にふと空を見上げ、ぼーっとしている姿を見る。その背中は寂しかった。

その日は雨で地面も滑りやすかった。入って三日の新人もいたが厳しく指導したつもりでいた。

 「おい新人!ぼけっと突っ立ってんじゃねぇ!ほら、そこの道具もって上手伝いにいってこい」

 「新人に任せておいて大丈夫なのか?今日は雨もつよいし・・・」

 「えー?大丈夫でしょう・・・あ!」

銀と後輩が上を見上げると新人がふらふらとしていた。新人は朝体調不良だったが皆、気が強いために休ませるほどではないと無理に判断していた。

 「銀さんあぶねぇっ!」

気づいた時にはもう遅かった。武の父が上を見た瞬間に道具の中身が顔にすべて降りかかった。あまりにも無残であっという間の死だった。仲間の何人かはそれの光景を見て仕事をやめたという。これが妻の死から少し先の話になる。

 「さて、風呂に入るか・・お湯を沸かさないとな。そうだシャンプーを買ってきたから詰め替えないとな」

 買い物用のカバンから詰め替え用のシャンプーを取り出すと風呂に入った。こういう事についてはまめだ。

 「ふぅ・・・あ、今日は特番だったなぁ。八時からか。あと三十分あるな。日記を書くとするか」

 武は父が死んだ日から日記をつけ出した。自分以外に自分を見てくれる人がいなくなったからか・・・自分以外に自分を記してくれる人がいないからか・・・・。理由は本人しか分からない。

 「そろそろだな。今日はお笑い番組だったか。なんか二時間スペシャルとかCMでやってたけど面白いのかなぁ」

新聞を閉じるとチャンネルを変え、特番を見だした。

 「このコンビいいなぁ・・・チェックしておこう」

お笑いの特番は新しい人たちがとても面白かったが逆に古い人は武にはしっくりこなかったようだ。頭のメモ帳に良かった人たちをまとめた。

 「さてと・・そろそろ寝ないと」

洗面台に向かい歯を磨いた。歯ブラシは変え時で、そろそろ新しいの買わないとなぁ、と明日の買い物リストに追加した。

 「ふぁ~あ」

あくびをしながら戻ると開けているはずのない窓が開いていた。武はそういうミスはしないタイプだ。

 「ん?閉めたはず・・・・・」

開いた窓を閉めようと窓に近づくと窓を外から掴む手が見える。細くて弱弱しく見えるのに窓を強く掴めている。そして片手だけで這い上がってくる。すごい筋力なんてもんじゃない。武は、這い寄る・・・ナイアルラトホテップ!?とか思っていたがそんな場合ではないのはそんな本人でも気づいている。

 「君と会うのは初めてですね・・・初めまして」

声を聞いた途端、頭にキーンと耳を劈くような音が流れ込んで来た。耳の近くで大きな音をならされたような音。

 ちょっと・・・だれなんだ・・この人・・・・頭が痛い・・・あとあの人自体なんかいろいろと痛い・・・。

 すると窓から人間とは思えない奇怪な動き。まるで魚のようにスルリと部屋に入ってきた。格好も奇妙で長身細見の体に黄土色のマントのような物で全身くるまれている。そして体をグルグルと締め付ける鎖で腕や足を固定されている。自由に動かせるのは肘から下くらいだ・・あれで這い上がってこれたと言うのか。そして何より特徴的なのが仮面。顔を覆う仮面で顔が見えない。だれかもわからない。しかし仮面が無かったとしてもこんな知り合いいるはずはないが・・・。

 この人どこの国の人なんだろ・・・・コスプレにしても気合いはいりすぎな気するしそんな季節でもないし・・・。

「あなた一体誰なんですか?人の家に勝手に、しかも窓から・・非常識極まりないですよほんと、近所迷惑ですし・・」

男はため息をついた。そしてやれやれと首を振ったと思うといきなりこちらを強い視線で見てきた。

 「やぁやぁ、そこの平凡な少年よ。まったく面白みもない退屈な人生を今日までご苦労様でした。パチパチー」

陽気で、まるで人を小馬鹿にしたような声が武に語りかける。存在そのものが奇怪であるからか、まるでピエロのような・・・つかみどころのない声色をしている。その奇怪さと音が武をそう思わせ、聞かせているのかもしれないが。この人物が喋る度に武の頭は不快な音で痛めつけられる。

 「ハッハー、ぽかーんとしてるねぇ」

正直うっとうしい。なんかもう帰ってほしい・・・・。

 「平凡な人生ってつまらないだろう?実につまらないだろう?そんな君にプレゼントだ。うれしいかい?うれしいだろう?受け取ってくれるかい?」

プレゼントだって?・・・あからさまに怪しい・・・これはやはり受け取るべきではないかな・・うん・・。

 「おやおやそんなに疑わないでくれたまえ」

男の背後から一つの封筒がひらひらと宙を舞い、武の方に向かって来ている。それが武のそばまでくると意思とは関係なく体が勝手に手をだして受け取ってしまった。受け取ったそれを見ると武の頭に電流が走ったような衝撃をうけた。体が麻痺したようにたびたび体が震えて動けない。

 「これは・・・・な、なんですか・・?」

仮面を付けていも分かる。男は微笑んでいる。ため息をついたり、嬉しそうに話したり、まるで親しい友人を見るような微笑を見せたり、この男はなにがしたいのだろうか。考えてることが全く読めない。

 「思いだしたかい?どうやら十年前に渡したプレゼントの効果はちゃんと発動しているみたいだね。一安心一安心。でも他の人に比べて渡すの遅れてすまないね。でも、ヒーローは後から登場が王道じゃない?まぁがんばりなさいな」

十年前?そうだあの日、ポストに入っていた手紙を見た。なにか不気味な感じがしたが幼少期の武は好奇心には抗えなかった。

 『君が見ることは分かっていたよ。君の未来にプレゼントを渡そう。』

奇妙な文章だった。当時、武の父は生きており、手紙の受取人は父であって当然のはず。そのはずなのにその手紙はまるで自分に向けて『君』と言っているような気がした。そんなはずないのに・・・・・。奇妙な手紙は突如少年の頭に突き刺さり吸い込まれるように体内へと入って行った。すると頭に直接オルゴールのメロディが流れてきた。メロディとともにおぞましい声が流れてきた。仮面の男とは別の不気味な声。

 『はっぴば~すで~とぅ~ゆ~。くくく・・・十六歳の君にプレゼントだよ』

 そこで少年は意識を失った。その前後の記憶は無かった。なぜ記憶がなかったのかは分からなかった。医者は頭を打った衝撃で記憶の一部が断裂したのだと言う。たしかに少年は意識を失い、倒れた時に頭を強打した・・・・・。しかし何か腑に落ちない。それから少年はずっと不思議に思っていた。

 「はっ!今のは・・・・」

武は過去の記憶から抜け出した。まったく気持ちの悪い思い出だった。まだ10歳にも満たない子どもになんていたずらだ。

 この手紙はもしかして、あの時のか・・?・・。

 武は無言で仮面の男を見つめた。

 「・・・・・。ご名答。その手紙は十年前の物と同じさ、中身は違うがね。さぁ君の中に眠る力の片鱗を覚醒させてくれ。埋めた力の欠片は皆同じ。どう変化しているかは君次第だ。楽しいねぇ・・・わくわくするねぇ・・・・殺したくなるねぇ・・・ヒヒ・・・フフフ・・・・ヒャヒャヒャヒャヒャ・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・」

武は背筋が凍った。ゾッとして、吐き気、寒気や咳き込み、喉や心臓がしめられているような感覚がした。立っていられなかった。その場にとどまるにはあまりにも重く、本能的にゆっくりと膝をつく。

 なんなんだこの人・・・・オェ・・・・ぐ・・・・はぁ・・・はぁ・うっ・き・・気持ち悪い・・・。

 「いけないいけない。どうせ死ぬんだ。私が殺してはいけない。ごめんね・・つらいよね。今楽にしてあげるから・・・」

そう言うと武の首をとてつもない握力で掴んできた。自分で殺してはいけないと言い聞かせておきながら殺す気で掴んでくる、なんと矛盾した話だ。

 「うぁ・・・・あ・・・・・ぁ・・・」

自分の思いを後悔した。

ただ少しだけ・・・少しだけでいい、人と違う面白い人生を期待してた、憧れてた・・・。でもこんな歳で・・・こんな死に方で終わるのは嫌だ。だれだってそうだ・・こんな所で死ぬのなんて嫌だ。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

武の断末魔のような苦しく、悲しい声が響いた。意識が薄れていく・・・消え行く意識の中で仮面の男の声を聞いた。

 「さぁ、ゲームの始まりだ。駒は駒らしくピエロのように笑って踊って脅かして楽しませてくれたまえ。」

ゲーム・・?・・ったくどっちがピエロだか・・・。


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