初心者歓迎、頭髪・服装自由、衣食住完備、各種保険有、昇給有、有給休暇有、一緒に世界救いませんか!?
転職活動中(今)に思いついたお話。
書きたいとこだけ書きなぐりシリーズです。
異世界転生課の面接会場は思っていたより普通の部屋だった。
白い壁、長机、パイプ椅子。
真っ白な空間で神と対峙する、とか自分が自分じゃ知覚できない、みたいな不思議現象は無かった。
まあちょっと、窓の外に雲の海が広がっているのは予想外だが。
ここ、役所の5階だよな?
いや、まあいい。予想外だが想定範囲内だ。
「えー、では順番に希望を窺いますね~」
やる気の無さそうな声の担当者が書類をぱらぱらとめくる。
最初に手を挙げたのは、黒髪をキッチリとまとめた女性だった。20歳前半ぐらい。
「神宮寺愛子です。転生を希望します。できれば、人の役に立てる職業に就きたいです」
「はいはい、神宮寺愛子さんね。えーと、あ。回復適正ありですね~、聖女行けますよ」
「え、そんな軽く決まるんですか」
「決まりますよ~」
実にあっさりしたものだった。
次に隣の男が勢いよく身を乗り出した。10代後半、高校生ぐらい。
「横田守です!僕も転生希望です!魔物倒したり人の助けになれるような大人になりたいです!」
「お、いいですね~、討伐系行っちゃいます?俺つえーしちゃいます?適正ありそうよ」
「ほんとですか!」
「うん、ほんとほんと。じゃ、勇者枠で」
「勇者!?」
隣の男の子、守君の目が一気に輝く。
その勢いのまま、彼は隣に座っている男へと顔を向けた。
すなわち、俺のことだ。
「正さん、商人ですか!うまい飯と便利な道具お願いします!!」
「いや、まだ何も決まってないけど……」
元気のいい守君に少しだけ苦笑いを浮かべる。
そして正面に座っている担当者に自分の希望を述べる。
「えっと、俺は、まだ死にたくなくて。異世界って転生か転移でしか行けないんですかね?できれば行き来できるとうれしいなぁなんて」
「あー、往復型ですね。いますよ、たまにそれ希望の人が」
「いけますかね?」
「あー、行けます行けます。……うん、適正も問題なさそうですねぇ」
「そうですか」
ほっとしたように息をつく。
すると今度は紅一点、神宮寺さんが興味深そうにこちらを見る。
「町田さんは商人なんですね?シャンプーとか、化粧品とか、そういうの広めてくださると助かります」
「え、いや、だからまだ決まってない……」
「え、でも行き来するなら持ち込めますよね?」
「まぁ、多分?」
「面接官のお兄さん!どうですかね!?」
「あぁ、まあ、いけますよー(というかこちらからお願いしたいというか)」
「よかったですね!」
神宮寺さんは嬉しそうに笑う。
今更嫌ですとは言い出せない雰囲気になってしまった。
まぁ、いいか、なんとかなる。
そこで、担当者がぱたんと書類のファイルを閉じる。
「はい。じゃ、まとめますね~」
そういって、気の抜けた声が部屋に落ちる。
「神宮寺さん、転生。聖女枠。横田さん、転生。勇者枠。町田さん、往復型。商人。よろしいですか~?」
「「「はい」」」
そして、間を置かずにこう言った。
「あ、あとですね。基本的に皆さん。何もしなくていいですからね~」
「「「……はい?」」」
「存在するだけでいいんですよね。まぁ、やりたいことがあれば自由にやってもらっていいですけど、魔王倒すとか古代遺跡の謎を解くとか、壮大な物語は無いで~す」
あまりにも軽い説明だった。
窓の外ではゆっくりと雲が流れていった。
「じゃ、詳しくはそれぞれ担当者が説明するんで、あっちの扉からどうぞ~」
担当者はそう言って、次の書類をめくり始めた。
まるで、放蕩に多田の手続きのように。
もし万が一続きが読みたいなどあれば頑張って書いてみようと思います。




