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8 QUOカードの謎

今夜もまたガールズバーにいる。何も期待せず、無心でお客さんたちと楽しく談笑しているとママさんに2番テーブルに行くように言われた。


行くとお客さんは桐山さんだった。約2ヶ月ぶりになる。もちろん桐山さんが桐子をリクエストしたわけではなく、リクエストしていた超人気者の真奈ちゃんが他のお客さんにリクエストされたからヘルプでついているというだけのことだが。


桐子は最近はどんなお客さんとも無心で接するようにしているせいか、相手が桐山でも特にうれしいとかいうことはなく、淡々と接していた。


桐山さんは真奈ちゃんのこととか何もなかったかのようにいつもの調子で語りかけてきた。

「ちょっと意外な話をしようか」


「意外?どんな?」


「10年くらい前の実話さ。私のね。ある日曜日、ラジオをつけながら車を運転していたんだ。ラジオではトーク番組をやっていて、その日のテーマは不眠症だったんだ。世の中には不眠で悩んでいる人たちがたくさんいる。


だから今日はどうしたら眠れるようになるか、リスナーの皆さんからのアイデアを待っているというんだ。採用された場合はQUOカード2000円分をくれるっていうんだ。


実は私は子供の頃から不眠で苦労していたので、その頃実践していて割とうまくいっているやり方を紹介しようと思ったのさ」


「えっ、番組で紹介されたの?」

「家に着くとすぐにその放送局に電話したのさ。電話口の人は、かなり厳しい口調でこんな風にいったんだ。


『QUOカードをもらえるのは番組で紹介された人だけです。紹介されなかった場合はもらえませんからね。いいですね!それではお名前、住所、電話番号を言ってください』


 私は電話の後、畳のうえに寝転んでラジオの続きを聞いていたんだ。まあ、私のアイデアが採用されるはずは無いと思っていたけどね。


ラジオを聴いていると、いろんな人たちから寄せられたいろんなやり方が紹介されていたけど、私のやり方に比べたら、大したことないな、と思いながら聴いていたら、何と紹介されちゃったんだよね」


「本当に?すごーい!」

「いや、別に全然すごくはないよ」

「どんなやり方?」


「よく旅行とかに行ってお土産屋さんを覗くとラベンダーの匂い袋が売ってるでしょ。あれを寝る時に枕元に置くと安らかに気持ちになってよく眠れますよ、と言ったんだ。


男性のMCがそれを紹介すると、隣にいると思われる女性アシスタントが

『えっ、ラベンダーの匂い袋を使うんですか?おしゃれだわ!』


って言ったんだ。それで私はQUOカードゲットだと思ってニンマリしたわけさ」

「へえー、よかったわね」


「ところがそのQUOカードが1週間経っても1ヶ月経ってもいっこうに送られてこなかったんだ」

「1年くらいしてやっと送られてきたとか?」


「今年で10年になるんだけど、まだ届かないんだよね。何年かかるんだろうね?」

「えっ、ひどいわね」


「番組で紹介された時だけQUOカードがもらえるってかなり厳しく言われたんだけど、紹介されても送ってこないなんていい加減だな、と思ったよ」

「なるほどね。放送局とかがそういうところちゃんとやってくれないなんて、確かに意外だわ。

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