26 ロマンチックなクイズ
既に3回も耳鼻科に行ったが、おばあちゃんの耳垢はかなりしぶとく、まだ陥落しない。今日はおばあちゃんが診察中に
「痛い、痛い、もうやめてください!」
と叫んでしまう始末だ。
そして今夜もまた現実を忘れて楽しむためにガールズバーに来ている。とにかくお客さんと話がしたい。アルコールが飲みたい。そう思っていると、最初からリクエストがかかった。何とそのお客さんは桐山さんだ。
「あれっ、今夜は真奈ちゃんがいるのにどうして?」
「うん。何となく。そんな時もあるってことさ。まあ、この間、あの暗い話を聞いてもらったでしょ。あれを話して少し楽になったからかな。あの話をしたのは桐子ちゃんが初めてだからね。そうだ、久しぶりにクイズを出そうかな」
「またちょっとエッチなやつ?」
「いや、今夜はちょっとおしゃれというかロマンチックなクイズにしよう。ある恋人たちがあるおしゃれなレストランに入ったんだ。男性が
『私たち恋人にふさわしい料理を出して』
と言ったら、レタスだけのサラダが出てきたんだ。どうしてでしょう?」
「えっ、トマトとかきゅうりとかアボガドとかは入ってないの?まさか本当にレタスだけなの?」
「そうさ」
「全然わかんない。ヒントは?」
「英語の音声が関係してるのさ」
「全く見当がつかないわ。降参するわ」
「恋人たちのための料理でしょ。Let us alone.(私たちだけにして)とLettuce alone.(レタスだけ)
をひっかけてるってわけさ」
「へーっ、確かにロマンチックね」
桐子は24歳なのに未だに恋に疎いというか、鈍感なところがある。自分の心の中に芽生えてきている桐山への淡い恋心に気づいていないようである。いわゆる恋愛というものには発展しないかもしれないが、今を楽しみながら、頑張って生きているのだ。認知症のおばあちゃんとのストレスの溜まる日々を精一杯生きているのだ。




