25 補聴器は100万円?→思わぬ事態に
今朝起きたら、おばあちゃんが急に耳が聞こえないと言いだした。遂に補聴器が必要な時が来たのだと桐子は思った。
先日ラジオを聞いていたら、ゲストの作家さんが、スタジオに来る途中で補聴器を紛失してしまって困っていると言っていた。
しかも簡単には新しいのは買えない、何しろ100万円したから、と言っていたのを思い出した。何となく数万円かなと思っていたので驚愕した。
近くのメガネ屋さんでカタログをもらってみると、確かに130万円、80万円、60万円という感じなのでこれは大変なことになってきた、と思う。
しかしこればっかりは仕方がない。必要となれば買うしかない。それはともかく一刻も早く耳鼻科へ連れて行かなければ、ということで、例によって予めその話をおばあちゃんにすると質問リピート攻めで大変なことになるので、何も言わないでいきなり耳鼻科へ連れて行った。
ところが医者はおばあちゃんの耳の中をスコープのようなもので丹念に見た後、これは耳垢が外耳道にたまって聴力を低下させる耳垢栓塞だとおっしゃった。
耳にたまった垢が固まってちょうど耳栓をしているような状態になっているから聞こえづらいのであって、耳垢を取り除けば恐らく聞こえるようになるのではないかという診断だった。
桐子は内心やったーと思った。補聴器という出費はとりあえず回避できそうだ。それにここには吸引機などの専用の機材がそろっているから、耳垢を取り除いて終わりだからよかったと思った。
ところが現実はそんなに甘くはなかった。先生がおっしゃるには
「耳垢はかなり厚く、しかも緊密に固まっているので、今日は取り除けません。ある薬を処方しますので、次回来院する前に耳の中に点耳してください。
来院前日の夕方に1回目、当日の朝に2回目、来院する前に3回目です。そうすると耳垢が柔らかくなり、除去しやすくなるのです」
説明書には片耳に10滴垂らしてその姿勢のまま10分保ち、今度は反対側の耳に10滴垂らしてその姿勢のまま10分保つとなっているのだが、途中で溢れてしまってティッシュで拭いたりなかなか大変だ。
けれどもこれで耳垢が柔らかくなって除去されれば一件落着だ、と自分を励まして耳鼻科へ行くと、先生が小さな掃除機のようなもので吸引したり、ピンセットのようなもので穿ったりするのだが、おばあちゃんが
「痛い、痛い」
というので一部しか除去できなかった。
先生は
「想定以上に凝り固まっているので、何回かに分けてやるしかないですね」
とおっしゃった。桐子はこんな事になるとは夢にも思わなかった。事前の準備としての点耳も、何度も病院に連れていくのもやるしかないが、何度これを繰り返せば終わるのか。
憂鬱の種がまた追加された。これを乗り越えるには、ガールズバーのバイトが必要だ。




