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23 謎の女性(1)

「くどいと思うだろうけど、この話は一種の女性不信のような感じの話だから、聞いてあまりいい気持ちがしないと思うけど、本当にそれでもいいのかな?」


「いいわよ。桐山さんの辛さを共有できるかも」 


「しばらく前の話だ。同じ職場の同僚の女性を映画に誘ったら気持ちよく応じてくれた。映画の後に食事をしながら付き合ってくださいと言うと断られた。


もちろんそれで諦めたりはしない。しばらくしてから劇団四季のミュージカルキャッツが大ヒットしていることを知ってこれだ、と思った。


1枚12000円もする高いチケットを2枚買った。もちろん彼女を誘うためだ。かなりの出費ではあったがこれなら彼女も興味を示すと思ったんだ。


ある日

『ミュージカルキャッツのチケットがあるんだけどよかったら一緒に行かない?』

と誘うと

『キャッツ?今とっても流行ってるわよね。私ずっと見たいと思ってたの。行く、行く!』

と大乗り気だ。


当日はある駅で待ち合わせて電車で片道一時間ほどかけて行った。車内ではつり革につかまって立ったままだったけど、楽しく会話しながら会場へ向かった。前半は大いに盛り上がり、彼女もご機嫌であり、また途中のインターミッションでステージ上を歩いていいというアナウンスがあったので、二人で歩いていると、本当は触ってはいけないのだろうが、彼女は空き地のごみ箱や魚の骨などのセットに触れたりして大興奮だった。


後半も興奮の渦となり、帰りの電車もミュージカルの話で盛り上がり、楽しく帰ってきた。作戦は大成功だった。これなら今度こそきっと上手くいくと確信したのさ。


彼女がある駅で下車するので、そこで私も下車した。彼女にサヨナラを言うためにね。以前一緒に映画を見に行ったことがあるとはいってもお付き合いは断り、断られた仲なので、なんとなくもう一度再スタートという感じだから、焦って次の食事や映画などの誘いをすることはなく、さらりと爽やかにお別れするべきだと考えていたのだ。


駅で二人になると彼女は笑顔で

『今日は本当に楽しかったわ。ありがとう』

と言い、それに対して私は

『それは良かったです。それではまた』と言って回れ右をするとさっさと歩き始めた。


すると彼女が急に

『ちょっと待って』

と私を呼び止めた。


どうしたのかと思って振り返ると、さっきまでの優しい感じの彼女とは別人という感じで、目は氷のように冷たく光っている。そしてこれも氷のように冷たい声で

『今後は一切私を誘ってはいけません』

と言い放ったのさ。


急に私の頭上から雷が落ちたかのようなショックを感じ、その途端目の前がくらくらとし、次に回転し始めたのだ。そして

『どうして?』

と言いながら倒れてしまった。

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