22 真夏日に暖房
今は梅雨の時期だが、毎日異常に暑い。まだ梅雨明けはしていないそうだが、どう考えても8月の暑さだ。
桐子がテレビのニュースを見ていると、室内で熱中症になる人が増えていると報じていた。その理由で一番多いのはエアコン不使用だった。
さもあらんと思って円グラフの左の方を見ると、エアコンを使用していても熱中症になっている人が6%くらいいると書いてある。
アナウンサーが、それはエアコンを使っているとは言っても設定が冷房ではなく暖房になっているからだと言っている。そこで桐子はふとおばあちゃんが暖房の設定で使っていたことがあったことを思い出した。
昨年の夏だったような。そこで階段を降りて一応確認しに行った。部屋のドアを開けるとものすごい熱風が吹き荒れていた。
おばあちゃんは苦しそうに
「桐子、暑くて暑くて。あんたがエアコンつけろつけろってうるさいからつけたら暑くってたまったものじゃない。ああー苦しい!」
案の定暖房設定でエアコンをガンガンかけていた。油断も隙もありゃしない。
早くガールズバーに行きたいが、今日は出勤日ではないから我慢して、小説の世界に浸って現実を忘れることにした。今夜はアントン・チェーホフの世界で遊ぶとしよう。
今夜はやっとガールズバーの日だ。アントン・チェーホフもいいのだが、やっぱり現実を忘れて夢の世界で楽しむにはここが最高だと思う。というのも、桐子はもともと人と話すのが好きなのだ。
中学や高校の時は悪意のある人たちの嫌がらせやいじめ的なものがいろいろとあって、自分の周りには常にバリアーを張りめぐらせ、自分の思ったことや意見は言わないように心がけていて、引きこもりにこそならずに、学校には通っていたが、いつも話し相手はいなくて孤独だった。
それに比べたら、ここはいろんなお客さんがいて、また女の子たちともお客さんが少ない時にだべったりしてとっても楽しい。
もちろんたまにはソリが合わない人もいるにはいるが、そういう人に対する時は自分にこれは仕事だと割り切れ、と自分に言い聞かせて適当に相手に相槌を打って紛らすのだ。
今夜も桐山さんにリクエストされた。もちろん真奈ちゃんがいないからだろうが、彼が桐子にちょっとした親しみを感じていて話しやすいと思っているのは確かなようだ。
「また真奈ちゃんがいないから私を呼んだのね」
「さあね。ただこの前桐子ちゃんが私の苦い失恋の話を聞いてくれてうれしかったのさ。実はもう一つ、私にとって謎の女性の話があるんだけど。この話は女性にとっては好ましくない話かもしれないんだけど、聞いてくれる?嫌ならやめとくけど」
「いいわよ。どんな話でもつきあうから。さあ、どうぞ」




